男がいた。
フードを被り目元が隠れているが彼は青年に該当する年頃だ。
家の中でまでフードを被っているところから怪しいを通り越してなんだか変なヤツである。
家の中は家具の他にこの世界において魔導具と呼ばれる物品が多数飾られている。
この男は魔導具マニアだった。
働いて得た金を生活費以外はほぼ全て魔導具の購入費、移動費用、資料取寄に充ててしまう程の。
そんなことをしていたらいつか魔物のお姉さん方の誰かから(性的に)襲われるものだが奇跡的に伴侶のいる魔物たちにしか出会わなかったため魔導具マニアとして今も生きている。
「3年だ。3年かけてついに手に入れた!使用用の転移装置を!ヒャハハハハッ!!」
近くのデスクには男が手に持っている物と同じ物がもう一つ置かれていたところからデスクのこちらは保存用と思われる。
「行けるぞ、今まで見たことがない世界を。行き帰り完全保証の保証書付きで!ローリスクで未知を探索!未知の魔導具!」
男は準備に取り掛かった。
20分程度の準備でいつでも出発できる状態にできたが……軽装、食料なし、自衛の魔導具も貧弱、靴もただ新品なだけの革製、舐めているとしか言いようがない。
行き帰り保証だけを頼りに探索するみたいだ。
「……あとはこれだな。【魔王の魔力】、フッ。」
5センチ程度の透明なカプセル状の容器に煙のように充満する魔力。
魔王の魔力が圧縮されているだけのお守りのような何か。
貴重なものではない。
なぜなら野外にも微量だが魔王の魔力は漂っている。
目に見えない程度で。
実際、容器内のこんなものを人間の女性に当てたところで特に魔物化するようなこともない。
ほぼこの世界においては名前だけのお守りネタアイテム。
「さて、では行こう。」
転移の魔導具に触れ操作した。
転移の魔導具は起動し男の足下には魔法陣が展開され、光る。
「ふふふ、最初の探索だ……怖いから30分くらいでいいかな?」
男は臆病だった。
設定を反映した魔導具は男の願いを叶え、家の中から男は姿を消す。
草原。
土地が痩せて構造が比較的単純な植生の草原で_稲光が走る。
蒸気と共にフード被りの男は現れた。
膝をつき片手をつき、某サングラスをかけた洋画のアンドロイドや水陸両用型ガンダムのように。
「す、すっげー!本当にできた。やってきたぞ。」
探せば自分の世界ににもあるだろうがそれでも知らない風景だ。
おどろおどろしい何かは無く田舎の外れくらいの景色。
民家は遠い所にある程度。
「うおっ!?何だこれ?」
男の腕には小さな砂時計が入った腕輪があった。
「……まぁこの砂が全部落ちたら強制帰還ってやつだな。」
仕様書にも多分そう書いてあった、と続けて呟く。
腕輪は転移装置が変形したものだ。
「さて、探索……ど田舎みたいだが山でも登ってからいるかもしれない魔物でも調査するか。魔物の方が田舎の人間より魔導具について知ってそうだし。」
男は民家と逆の方向にある山へと歩いていった。
山の麓まで歩き足を止める。
そこは気持ち程度に開けた道。
先に男は詳しくもないが植物の観察を始めるためだ。
始めたはいいもののよくわからない。
一目で異世界産とわかるものもありそれを注意深く観察する、観察するだけ。
「なるほどわからん。見たことがないことはわかるが……」
それでも山の探索は楽しいのか気づけば既に25分経過していた。
わずかに足音がした。
「ッ!?」
男は警戒する。
すぐ徒労に終わったが。
(なんだ、ここの子どもか…)
足音は少年からだったことがわかった。
少年は泣きながら歩いている。
かわいそうに思ったのか…
「_どうした?話しくらいなら聞くが。」
「うっ…スン…うっ、わぁっ!?」
少年は驚き固まった。
「落ち着け。別に取って食うようなことはしない。何があったかくらい聞いてやると言ってるのさ。」
「ぅぅ…ヒック…うん……」
「時間はあまりないが言ってみなよ。」
少年は落ち着き細々話しを始める。
「…………このまえの……す、すごい雨で……うっ…はたけが……あ、だめになった。」
「……」
「……ぼくがいたいえは…きょーだいがたくさんいるから……グスッ…ごはんがたりなくなるんだ。」
「……そうか。」
「……なにもできないし、すえっ子だから……うっ…やくにたたない。」
口減らしか、男は理解した。
昔は自分のいた世界でもあった話。
なんなら今でも辺境ならあるけどだいたい外で魔物化するか魔物の伴侶にされるから死ぬ人間はそうそう見つからない。
なら結論は早い。
一日死ななきゃ大抵なんとかなる。
魔物お姉さんから拾われて伴侶になることと引き換えに長い命を全うするま
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