俺はガルシア・ロッソ。ある主神教を信仰する都市で勇者の一人だ。
とはいえ俺は美食にも肉欲にも愛情にも快楽をあまり得られない。
俺が一番に感じる快楽は、全力の戦い。悪意も何かの手の平の上でということもなく全力でぶつかり合うことが一番の楽しみにして幸福だ。まあそれで変わり者扱いだが実力で周りを黙らせればいいとトレーニングを続けた結果、俺は有名になっていたらしくさまざまな他の地方の勇者たちからも手合わせを頼まれたりするようになり最近は充実した日々を送っていた。
しかし、その日々が終わりを告げた。魔物達が少しづつ近づいてきているとのことらしい。魔物は危険な存在と聞く。話によれば殺しはしなくなったが人間を間接的に滅ぼしなおかつ我欲、特に性欲を否応なしに押し付けてくるとのことらしい。戦場にそんな感情を持ってくるとは奴らは阿保なのか?と思う…とはいえ俺も出来るだけ人々を逃がすために奔走せねばならないな…と思っているとどうやらかなり近くまで来ているらしい…
俺は覚悟を決め、ある術をかけてもらった。俺がなんとしてでも戦えない人々を守るのだ…
魔物達が来たので、俺は最前線に一人で出る。俺のかけてもらった術は、俺が死なない限り誰もあの都市に入ることは敵わないと言うものだ。魔物達が諦めるか俺が力尽きるまでの間に出来るだけ遠くに逃げてくれと願う。
魔物達が都市の門の前に来た。俺は仁王立ちで待つ、魔物達は『なにをしたのか知らないけど、通れないし門も開かないわね…』と少しの苛立ちを見せる。
俺は「俺を殺さねば通ることは敵わん」と構えて言うと魔物達は『解除にも手間取りそうだし、面倒なことしてくれたわね…』と苛立ちを強めていく。
俺は「戦場に性欲なんて不純物を持ってくる奴らは戦場に来るな、邪魔でしかない。」と言うと魔物達は『なんなの…こいつ…』と異質なものを見る眼で俺を見る。俺からしたらお前達こそ異質だと思う…だが一人だけ俺の持論に頷いている魔物がいる。確か図鑑ではリザードマンという魔物の項目に亜種としていたサラマンダー、だったと思う。その魔物が俺を見ていた。
そいつは『確かに、我欲を混ぜてしかもこっちは殺さずにやらないといけない。無心でやらないと足元を掬われるのも確かかもしれない』と頷いている…そしてその魔物は『なら、アタシとサシでヤらない?』と提案をしてくる。俺は「我々の受ける意味は?」と聞く。するとあいつは上司らしき魔物になにかを直談判している…
上司らしき魔物が来て『私たちが勝ったら、ここを通して。貴方が負けなければ、二度と私たちはここには来ない。この条件でどうかしら?』と案を出してきた。俺は信じて良いものか?と思うが連絡用の水晶を見るともう半分近くが脱出しているらしい。これなら何とかなるかもしれないと思い受けなければ奴ら全員の相手をしなければならないとはんだんしその提案を受けることにした。
隊を下がらせ、向き直る。少しは話のわかる相手だ。全力で戦うことが最低限の礼儀だろう…
ローブを脱ぎ捨て、改めて彼女を見据える…少なくとも他の魔物たちとは違い押し付けがましいものもなにもなく全力でやりあえる喜びに満ちている。これは期待できそうだと思い気合いが入る。彼女は『アタシはスカーレット!魔界緋炎騎士団所属!始めよう!』と自己紹介をしてくる。ならば俺もと「俺はガルシア・ロッソ!この国の勇者の一人だ、かかってこい!!」と返すと彼女は持っている剣を構えて間合いを詰めてくる、対する俺も両手剣を構え最初に剣が激突する…流石に言うだけありなかなかの重さだ。これなら相当楽しめそうだと心がゆっくりと踊り始める…
何度か激突と格闘の応酬が繰り返され、彼女の実力がわかり始めた。リスクを負わずに勝てる相手ではない…
さらにしばらくぶつかり合いを続け、出し惜しみは出来ないと判断し奥の手を使うことにし彼女を一度肩からの体当たりで弾き飛ばし距離を取る。「ここから全力でいかせてもらう…」と俺はエネルギーを開放する。そして「さあ、第2ラウンドだ…」と地面を蹴り間合いを詰め剣で凪ぎ払うも彼女も上に跳び回転を加えて剣を振り下ろす…!!手に衝撃が伝わってくるがそれさえも全力で激突出来る相手が居ることの喜びに変わる…!!
だが、互いの剣は激突の衝撃で離れたところの地面に突き刺さっている…どうやら飛んでいってしまったらしい。だが最期に頼りになる武器は、まだ残っている…どうやら彼女もそれはおなじらしく徒手空拳で構えている。そうでなくては…
どれくらいぶつかり合っただろうか、もうふらふらで開放したエネルギーも底をついている…。恐らく次が最後の一撃になる。そう俺の身体が警告を鳴らしている…だが辞められない。こんなに満たされる戦いは初めてだから…
[3]
次へ
[7]
TOP [9]
目次[0]
投票 [*]
感想[#]
メール登録