これもあり得た可能性の話です。
俺は結局、旅館から出るのを今は止めておく事に決めた。
「そういやあいつ、大丈夫かな…」
俺は家に置いてきた怪我をした白地に黒縁で中がキャラメル色のラインの入った蒼い目な野良猫の事を思い出した。
「ケガはそれほどじゃ無かったが何故か俺以外から飯を食わないんだよな…」
何故か俺が居ないと飯を食わなかったのでその事がやや心配になった。
「さて、どうするかね…」
俺は自分の割り当てられた部屋の窓から外の様子を伺い、そろそろ温泉街に行く事にした。
「何とか無事に帰って来れたな。」
俺は温泉街で何度か危ない目に遭いながらも何とか無事に帰って来れた。
「さて、部屋で夕食の時間までテレビでも見るか。」
俺が割り当てられた部屋に入ると、誰かの気配があった。
「誰か居るのか…?」
俺は部屋につながるほんの少し開いている戸から部屋を覗くと、そこには小麦色の肌で黒縁のキャラメル色のラインの毛皮を持ちやや大柄の獣人らしき魔物が居た。
『誰?』
彼女は俺に気づいたようで、俺の方向を見た。
「…。(どうする?確かにここは俺の使っている部屋だが魔物相手にどう対処したらいい…?)」
『戸の向こうに居るのは分かってるよ。』
俺の存在は既に相手にバレているようだ、全く魔物の察知能力は恐ろしい。
「…。」
俺は部屋のドアから廊下を覗いて、諦めた。
「…(男を捕まえられなかった魔物達が彷徨いてる、このまま出て行っても間違いなく捕まるな、完全に詰んだ。)」
俺は詰んでいるならまだ可能性のある部屋の中に行く事にした。
「…。」
『やっと、見つけました…!』
と言うが早いか彼女は抱き付いて来た。
「君は、誰だ?」
『私に、名前はありません。』
「どういう事だ…?」
『これで、分かりますか?』
彼女は猫の姿になり、すぐに戻った。
「お前は、俺の家に居る筈だろう?なぜここに?」
『そうですね、話します。』
俺は彼女から謎の銀髪で翼と尻尾のある女性から「貴方のしたい事は何?」と聞かれ「「ケガを治してくれた事、ずっと孤独だった自分に安らぎを与えてくれた事」に対して自分には何ができるのか?」という事を猫の状態で訴え、それが伝わったのか彼女は「貴方の願いを叶えてあげる。」と言い全身が光に包まれその光が収まったらこの姿になっていたと語った。
「高位の魔物のやりそうなことだ。」
『やっと望んでも手に入らなかったものが手に入りました。』
「俺に通じる言葉か?」
『それに、貴方を抱きしめられる魔物としての身体です。』
「…(何の気なしに抱き付いている彼女の頭を撫でる)」
『んにゃぁ…』
「…嫌だったか?」
『その反対ですにゃぁ…』
「キャラ変わってないか…」
『こっちが素ですにゃぁ…』
ともかく彼女が嫌そうではないので俺はしばらく彼女を撫で続けた。
「とりあえず部屋に一人増えたって連絡しないとな。」
『やってありますにゃぁ。』
「手回しのいいことだ。」
俺はやや呆れながらも撫でるのを続けた。
「しかし初見で小柄な人虎かと思った」
『確かに猫の魔物としては身体は大きいです、だけど私はワーキャットですにゃぁ。』
「自分より背の高い女が甘えているのに違和感を少し感じた。」
『過去形?』
「すぐにあまり体格は気にらなくなった」
『にゃぁ♪』
彼女は俺に向かい合って両手足で抱き付いた。
『何か甘い匂いがしますにゃぁ〜』
「多分これだな」
俺はカバンに入っていたチョコレートを出して渡した。
『チョコレート?』
「猫に刺激物はダメらしいが、大丈夫かな…」
『私はただの猫じゃないにゃ、私をこの姿に変えた女性もほぼ食べてはいけないものは人間と同じって言ってましたにゃ。』
「なら大丈夫だな多分。」
俺もチョコレートの包み紙を剥がして口に入れた。
『〜♪』
彼女はチョコレートを気に入ったようだ。
「まだある、食うか?」
『はいにゃ。』
それからしばらくは彼女のことを聞いたりした。
「つまり捨て猫になったから助かったと」
『はい、結果的にはそういうことになるにゃ。』
「自分を飼っていた人間の家族は事故死ねぇ…」
『もっとも、エサ以外にろくな世話をしてもらえなかったから対して悲しくもないにゃ。』
「それがいいのか悪いのか…」
『分かりませんにゃぁ。』
それから数分経って、彼女がぼんやりとしだしたので心配になって体調を聞いた。
「大丈夫か?」
『にゃぁ…』
彼女は相変わらずぼんやりしている、病気ではないがどこか落ち着かず憔悴した感じだと感じた。
「体調が悪いなら薬、もらって来るが」
『大丈夫ですにゃぁ、これは病気ではない
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