同時刻、晋は…。
「どうしようか、なんかどこに行っても生け贄になりそうなんだよな…。」
晋は察しているようだ。
「とりあえず大浴場に行こう、混浴は危ないから男湯で。」
晋は多少考えて温泉に向かうようだ。
「何も起こらなくて良かった…。」
『失礼します…。』
「!?」
『ツアーのお客様ですよね?』
「え、あ、はい。」
『ツアーのサービスでお酒の酌をするようになっています、ただし強制はしません。』
「なるほど、知らなかった。」
晋は少し考えて無下に断るのもどうかと思ったようだ。
『日本酒と洋酒、どっちが好みですか?』
「洋酒にはなにがあるん?」
『赤ワインとウィスキーとブランデーがあります。』
「なら赤ワインで。」
『では、はい、どうぞ。』
「ありがとう。」
特別な赤ワインらしく、少し色が濃いと晋は思ったが、あまり気にせずにワインを楽しむことにしたようだ。
「これ結構高いものじゃないのか?今までに味わったことのない味だけど。」
『珍しいものみたいだけどそんなに高くはないですよ?』
「そうなのか…。」
『お気に召しませんでしたか?』
「いや、美味しいんだけど今までに飲んだことのない味だったから。」
『そうでしたか。』
「後味に少し果物とは違う甘味がある、なんだろう…?」
『鋭いですね、話によれば「あるもの」を入れて熟成させています。』
「あるもの、ねぇ…。」
晋は何か特別なものを使っているのは分かったらしいがあまり気にしていないようだ。
「そろそろ、上がるよ。」
『そうですか、では。』
晋は温泉から上がって部屋に戻ったようだ。
「酒もあって熱いな、まぁいいや。」
晋はそのまま寝たようだ。
「夕飯の時間だな、行こう。」
晋は夕食を食べに向かうようだ。
『隣、いいですか?』
「あなたはさっきの。」
『またお酌、いいですか?』
「ならやってくれる?」
『はい。』
彼女は微笑みながら晋に酌をし始めた。
「君も飲んだら?」
『なら…。』
何だかんだで割といい感じになっているようだ。
『ならまた明日も、よろしければ…。』
「泊まりの間ずっと君がいい。」
『えっ…!?』
「君が嫌じゃないならだけど。」
『はい…!』
「ならまた明日食事の時か温泉の時に。」
『はい…!』
翌日、また晋は温泉に入ることにしたようだ。
「ふぅ…。」
『今日は何に致しますか?』
「なら昨日のワインと同じやつ、ある?」
『はい、ありますよ。』
「どこかで感じたことがあるんだよなぁ…。」
『謎は謎のままの方がいい時もありますよ?』
「かもな…。」
『お背中流しますね。』
「それはサービスとして含まれてないんじゃ?」
『私の気持ちです。』
「そうか、なら…。」
『痛くないですか?』
「大丈夫、ちょうど良いから。」
『それなら良かった。』
「ありがとう、なら流したら上がるよ。」
『ならまた夕食に。』
「だな。」
彼は知らなかった、既に身体を冒すものの存在に。
「なんか、このままツアーだけで終わるのは寂しいな…。」
翌日の朝、晋は呟いた。
「とりあえず温泉に入って来よう、くさくさしてても仕方ない。」
「ああ、いい湯加減だ…。」
『本当ですね…。』
「!?」
『大丈夫ですよ、今の時間帯は私達だけです。』
「いや、その…。」
『とりあえず飲みませんか?』
「え、あ、はい。」
『いつもので、いいですか?』
「それがいい。」
晋は前と同じように彼女のワインを楽しみ、背中を流されて上がった。
「なんか、最近身体が熱いな…」
『大丈夫ですか?』
「のぼせたかもしれない。」
『もう正直に言いますね。』
「?」
『あのワインに入っていたのは私の毒液です。』
「…?」
『私、魔物ですよ?』
「あ、なるほど…。」
『私は大百足という魔物です。』
「ああ、そういえば…。」
『知っているんですか?』
「俺の仕事場にもいる、彼女は鍼治療のアシスタントやってる」
『確かに鍼治療は向いているかもしれませんね。』
「で?俺を狙って毒液を?」
『はい、私が怖くないんですか?』
「魔物が来てからもう30年弱、君を恐れる必要はない。」
『これでもですか?』
彼女は魔物の姿を晒したようだ。
「いや全然。」
『もう我慢出来ません!』
「がっ…!」
晋の身体に牙が何度も突き刺さり毒液を流し込んだようだ。
『こんなチャンス、逃したらもうありません!絶対にモノにします!』
「落ち…着けよ…。」
『んっ…!』
晋は彼女の上半身をを抱き抱えた。
「名前は?」
『え?』
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