俺は、西条 准。いろいろあってこの林に来た、流れ着いたという方が正しいか。
准「…」
この林は訳ありらしいな、なんと言うか魔物が居ないのに近くに魔物が居るような感覚がする…
准「?」
少し進むと白い家が見えた
准「??」
さらに少し進むと白い服と白い燕尾服に身を包み白いシルクハット(?)らしきものを被った誰かがいた
准「魔物、のようだな。」
顔立ちや雰囲気、そして感覚が強まったことで俺はそう判断した
???『ご名答』
准「茶の時間か、邪魔をしてしまったな」
???『いやいや、大丈夫だ』
准「なるほど、だから訳ありってことか…」
近くで見ると彼女の服にはキノコの意匠が施されているようだ
???『自己紹介がまだだったね、私は、と言いたいところだけど名前がないんだ、なにぶん最近魔物になったばかりだしね。一応種族はマッドハッターだけど』
准「俺は西条准、いろいろあってここに流れ着いた」
???『流れ着いたって…』
准「まあ、いろいろあったから」
彼女はなんと言うか不思議な感覚だ、他の魔物とは何か違う…
???『本当に、なにがあったの?なんと言うか…』
准「脱け殻のよう、か?」
???『まさしくね…冬虫夏草に寄生された虫みたい』
准「キノコの魔物だけにキノコで例えたか」
???『で、なにがあったの?』
准「俺の父と母を車の事故で植物状態にした奴が轢き逃げで死んだ、俺がこの手で殺してやりたかったのに…」
???『思ったより重たい…』
准「だから萎んで脱け殻みたいになっているのかも」
???『家族もろともって…』
准「それだけ憎しみが強かったんだろう…」
???『かもね…』
准「…」
???『まあ、良かったらこれ』
彼女は新しいカップに紅茶を注いだ
准「これは?」
???『私のつくった紅茶キノコだよ』
准「紅茶キノコ、初めて飲むな…」
早速飲んでいく、確かに甘いがくどすぎずなんと言うか時期が時期ならアイスでのみたいなと思う…
???『どう?』
准「美味しい、でもこれはアイスに向いてそうな味だと思った」
???『なるほど』
准「はぁ…」
???『報復は、何も生まないんだよ?』
准「報復のこと、わかってないな」
???『??』
准「そもそも報復は被害者がマイナスになったことをゼロに戻すための作業だ」
???『…』
准「だから何かを産み出そうとする事が間違ってる、尤も魔物である君には理解できないかもしれないが」
???『肯定はできないけど考え方としては興味深いよ』
准「だからマイナスの相殺で何かを産み出すのは消える」
???『…』
准「無関係な人間を傷つけたところで意味もないし」
???『根本的なモノは壊れてないようで良かった…』
准「まあ、奴はいろんなところから恨みを買っていた。口裏を合わせれば犯人にたどり着くのは難しいだろうさ」
???『私達のことを、甘いと思っているね』
准「ああ、どんな極悪人でも殺すな。ならそいつに自分の家族が殺されても同じ口が叩けるのか?と言う」
???『痛いところを躊躇い無く突いてくるね…』
准「そう言うことだ、止める権利のある存在なんて報復が可能であった、あるいは今も可能でもそれをしないことをした極々一握り、最早一つまみの存在だけだと思う、次に言いたいことで法を説くだろうがなら法律が何を守ってくれた?という話になる。」
???『全く、そこまで負の衝動がたまってるなら色事に向けた方がよっぽど健全だよ…』
准「え」
ぶっ飛んだ発想に思わず変な声が漏れた
???『私達魔物にその負の衝動を色欲と愛欲に変えてぶつけた方がまだ健全じゃないかな?』
准「それを望むならな、だが心が衝動一色に染まってしまうと手遅れになることも多い」
???『顔が赤いけど』
准「ほんとだな…!?」
彼女の手鏡から俺の顔は赤くなっていたのを見た、そして…
准「なんだ…これ…」
下腹部、特に股間が痛い程に疼いている
???『私達魔物は、人間以外の生物から魔物になった場合にその生物の特性を引き継げるんだ』
准「?」
???『私はドクツルタケからマッドハッターに変わったんだよ、先程の紅茶キノコも私のからだの一部を浸けたものだよ』
准「それって毒キノコだよな…」
???『毒性も上位で死亡例もナンバーワンさ』
准「俺は死ぬのか」
???『いやいやいやいや、死なないって。魔物になったからその毒性も全部性的なものに突き抜けたから』
准「どちらにせよ人間としては死ぬのか」
???『まあ、ね。もっと慌てたりすると思ったけど』
准「魔物と関わった地点で遅かれ早かれこうなるのはなんとなく理解していた」
???『おや、思ったよ
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