変わり者達のその後

俺がリシアと出会ってから1週間が過ぎた。

『おはよう、良く眠れた?』

とリシアは呑気に話かけて来る。

「リシアと出会ってから寝覚めが悪いことは今まではない。」

『それは何よりね。』

彼女は微笑んで返して来た。

「朝飯、食うか。」

『そうね。』

とりあえず腹ごしらえをしないことには始まらないので食事にすることにした。

「いただきます。」

『いただきます。』

両親はもう仕事に行ったようだったので二人で朝食を食べた。

「ん、置き手紙か?これ。」

『置き手紙?』

「俺宛みたいだ。」

『何て書いてあるの?』

「今開ける。」

俺達は置き手紙を開けて読み、俺は絶句した。

『まさかこんなことになるなんて思わなかったわ。』

「全くだよ。」

置き手紙には「父さんが会社で社員に各一枚づつ配られた福引券を貰って回した結果、五泊六日の温泉旅行が当たったのでジュン達二人は仲良くしてて欲しい」と書いてあった。

「どういうことなの…。」

『明らかに狙ってるわね…。』

「どうする?」

『お金は心配ないし、仕事に行く意味はないわね。』

「だな。」

リシアの家は魔物娘向けの服やアクセサリー、夜の生活のサポートグッズを販売している会社の会長夫妻らしくお金の心配はなかった。

「俺は納得してないけど。」

『意地が役に立たないとは言わないけど、それより大切なことがあるんじゃないかしら?』

「まあ言いたいことはわかる、だけどこれは引き下がったら俺はヒモじゃないか。」

『ヒモでもいいじゃない、貴方は対人関係を作るのが壊滅的とまでは行かないけど苦手でしょう?』

「少なくとも上手ではないな。」

『それなら私とずっと一緒にいることだけを考えてればそれでいいと思うわ。』

「でもなぁ…。」

リシアの両親に、自分の仕事はリシアの側に居て幸せになることだと言われたが、個人的にはやっぱり心のどこかにしこりが残っているのも確かなのが今の心境だった。

『どうしたの?』

「?」

『顔は無表情だけど心と眼では泣いてるわよ?』

「…。」

『話して、くれる?』

「…こんな堕落した生活でいいのか?」

『心配ないわよ。』

「働かないならせめて家事とかをしようと思ってもお手伝いさんがみんなやってしまう、周りの友人達は一生懸命働いてるのに俺は何もせずにリシアと一緒にいるだけで三食と寝るところと着るものの心配がない、これっておかしくないか…?」

『ジュン、貴方働いた経験あるのね?』

「去年の終わりまで派遣会社に居た。」

『働く苦労を少しでも知っていたからそう思ったのね。』

「そうだよ。」

『なら、こう考えて。「ジュンに合った仕事が私専用の男で私だけの将来の旦那様」だったって考えてみて。』

「俺は、役目を果たせているのか?」

『もちろんよ、貴方と居るだけで幸せなんだから。』
「そうか、ならこれでいいのかもしれないな。」

『貴方の役目、後少しで全部の過程が終わって完全に全ての役目を果たせるわ。』

「跡継ぎ?」

『少し違うけど、方向性は合ってるわ。』

「いよいよか…。」

『そんなに固くならなくても大丈夫よ?』

「俺、一応女性恐怖症だからな。」

『え!?』

「小さい頃から避けられてたって行ったよな。」

『えぇ。』

「避けられてたのはまだマシな方だった。」

『?』

「罵声を浴びせられるのはしょっちゅうで時には取り巻きの奴らに殴られたりしてた。」

『その大元が女だったの?』

「そういう事、まぁやり返してたけど」

『まあやられたままじゃ腹も立つわね。』

「今は落ち着いた、リシアは全く怖くない。」

『どっちの理由?』

「信頼しているから、恥ずかしいけど言わせてもらうなら…。」

『!』

言い終わる前にリシアに俺は抱き付かれながら押し倒された。

「いきなりどうした!?」

『感極まっちゃったわ、ごめんなさい。』

「いや、大丈夫。」

『急過ぎなかった?』

「背中打ったけど大丈夫。」

『ならいいけど…。』

「で、どうする?」

『そうねぇ…。』

「…。(来るかな…?)」

『貴方の意思を尊重するけど、今からしたいんだけど大丈夫?』

「そう来るだろうと思ったよ。」

『今その気じゃないならもう少し先延ばしにするけど。』

「どうする…。」

『かなり迷ってるわね。』

「迷ってるのにも一応理由があって、リシアが暴走してまた女性恐怖症が悪化したら目も当てられないから。俺としても、リシアとしてもね。」

『確かに、止まらない可能性はあるわね…。』

「何とかしないといけないのは分かってる。」

『ジュンならきっと大丈夫よ。』

「腹ぁ、括るか…。」

『ならいつする?』

「今晩にでも。」

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