俺は吉野 薫、年末だが実家に帰る気もなく自分の借りた部屋で大晦日を過ごしている。
実家に帰ってもやれ孫見せろだのやれ早く相手見つけろだの言われるようなところに帰りたいと思う方が稀だろうと思っていると宅急便が届いた。
宛先を見てみると大伯母さんからだった、あの人は小さい頃から割と俺を気にかけてくれた人だ…しかし年末に何を送ってくれたのか…おせちか?とそんなことを考えて箱を開封すると中には淡い黄色に植物の蔦のような模様が入った箱が入っていた…「なんだこれは…」と言葉が漏れる。
しかも見ていると箱がカタカタ揺れている…本当になんだこれは…
箱を一度取り出してみると、手紙が入っていた。要約すると「この箱の中身は貴方への贈り物」とのことだった…
「いやなんか動いてんだけど…!!」と突っ込みが漏れ、とりあえず開けてみることにした。生き物が入ってるなら窮屈だろうから…
箱を開けようとすると鍵というかパズルのような仕掛けがあるらしく、箱にある小さなポケットだけが開いた。その中には小さな駒のようなものがありその駒のした部分が填まる窪みに嵌め込むと今度は横のポケットが開いた。
横のポケットには先程の駒を嵌められそうな窪みと開きそうなカバーがあり、早速駒を嵌め込むとカバーが開いた。
開いたカバーの中には鍵が入っていた。その鍵を箱の鍵穴に入れて回すと、箱は開いた、が…その瞬間に覗き込むようにしていた俺の顔面に衝撃が来て俺は意識を手放す…
俺が目を覚ますと、亜麻色の髪と目をした女が俺を心配そうにみていた。俺が起き上がり「誰だあんた…?」と聞くと彼女は『わたしは訳あってあの箱に封じ込められていました』と返してきた。「つまり、あの箱の中身があんたか?」と聞くと彼女は頷く。しかしなぜ俺は伸びていたのか…?そんなことを考えていると彼女は『ようやく出られると思って出たら貴方の顔面とわたしの頭がぶつかったみたいですね…』と言う。次の疑問としてはなぜ彼女が閉じ込められていたのか?と言うことだが彼女は『…単純に主神の走狗に袋叩きにされて閉じ込められてました、あんの石頭ども…』と言い思い出してイラついたような顔をしている…
俺は「そもそも袋叩きにされた理由はなんなんだ…?」と聞くとどうやら彼女は豊穣神の配下のヴァルキリーだったらしく人々を堕落させかねないと封印されたらしい…
「なんだそりゃ…」と言葉が漏れて同時にどこかの人が言っていた言葉が頭に浮かぶ。「心身ともに満たされれば争いは自然と消える」と…最近来た魔物娘はその方向性で動いているらしいが。
そうしていると今日は晦日なので年越し蕎麦でも食べようとカップ麺の蕎麦を用意すると配達物の横部分にも箱が入っているのが見えた。緩衝材か何かかなと思っていたがどうやら違うらしく開けてみると蕎麦と出汁のセットが入っていた。これはありがたい…
今晩はこれにしよう、そう決めたところで昼にすることにした。
昼ご飯は冷凍の炒飯だ、一人で食べるには多かったので他のものも一緒に食べることにした。
昼を終えると何故か彼女は俺を抱き抱えている…彼女は身長が180センチ後半ぐらいはあるので俺を抱き抱えても頭ひとつぶんは彼女の方が大きい。
彼女は『茜さん、つまり貴方の大伯母さんにはお姉さんがいてそのお孫さん、つまり貴方が独り身と聞いてるよ』と言う、俺は「ああ、実家に帰りたくなかったのもやれ早く相手見つけろだのやれ孫見せろだの喧しいからな」と返す。
彼女は『なるほど…』と苦笑いの表情を浮かべた
俺は「そう言えば、そもそもどうやって大伯母さんと出会ったんだ?」と聞くとどうやら彼女の入っていた箱を大伯母さんが骨董品店で見つけて買ったらしい、そして精神に直接語りかけて大伯母さんとコンタクトをとったとのことらしい…
昼食を食べ終えて、天ぷらの準備に素材はあるかと確認したが海老がない…近くの大型スーパーに買いに行くことにしよう。
スーパーに着くと運良く大きな海老が最後の一パックだけ残っていたのでそれとイカ、後は青じそとさつまいも、天ぷら粉を買って帰宅する、彼女が不安そうにしていたのが気になるが帰宅できたときにはおさまっていた…
何があったのかはとりあえず収まったので下手に聞くよりは向こうから言えるようになるのを待つべきだろうと判断し夕食の準備に取りかかる。
作りかたを調べつつ実行していく、コンロが温度調整できるタイプだったのは救いだった。
彼女はといえば上がった天ぷらを箸でとりつつ油切りをしてくれている、というのも豊穣神は相手の心身を満たすための大抵の技を教え込むらしい。なおさら魔物娘と相性良いだろ…と思い彼女に『あんたの主は今どうしてるのかわかるか?』と聞くとどうやら魔物娘に友好的らしく彼女の仲
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