蜘蛛の巣

男の話をしよう、男は無能だった。
あぁ、勿論私よりは有能さ、だが社会人としては無能だろうな。
そんな男にも女が居た、男を愛し、男を支える女が。
だが二人の関係には致命的な物が欠けていた、そしてそれが永遠の別れの引き金となったと言えよう。
事の始まりは女の勘違いで喧嘩してしまった事である。
何かに嫉妬して怒鳴り散らす女に対し、無能を自覚する男は淡々と冷静に彼女に返す。
落ち着かせようとした男の行動は火に油、いやここはニトロと言うべきか?
怒りを通り越し、正に千年の恋も冷めると言わんばかりに女は逃げ出し、そして死んだ。
何故かって? 当たり前だろう、車道に飛び出せば死ぬ、これは常識だ。
女が何に嫉妬していたのかだって?
なに、簡単な事さ、ゲームに熱中してると『やったぜ■■愛してる!』と言いたくなるような活躍をするキャラが居るだろう?
戦場■ヴ■ルキ■リアの三作目で死神に救われた時は本当に叫んでしまった私が言うんだ
きっとある、間違いなくある、無いとは言わせない。
それで、どこまで話したんだったか、あぁ、死んだところと彼女の誤解についてだったな。
そう、男がスマホと呼ばれる端末のゲームでうっかり女の名前を呼んだこと
そのゲームがボイス付きだった事が、喧嘩の原因だったのさ。
それだけなら、ありふれた、よくある話だが、まぁ聞けよ。
男は女の死を悲しまなかった、男は裏切られることや信用されないことに慣れていたからだ。
親も死に、一人という自由を犯していた、そういう認識すらあったくらいだ。
でも女は普通じゃ無かった。
別に接着剤でくっつくマネキンとかじゃ無いぞ?
海外のB級映画にそんな設定のホラー映画があったのは確かだが。
いやいや、アンブレラだって無いさ、これの元は実話なんだからな。
そう、実話なんだよ。
病院に運ばれ、死亡認定された数分後、彼女は生き返ったのさ。
私も話を聞いた時は驚いたが、疑問には思わなかったよ、何故かって?
船坂軍曹を知れば、日本人なら生き返っても不思議じゃ無いと思えた、それだけだよ。
ノンフィクションだと、そこで終わり、二人は仲違いと勘違いしたまま、そして誰もいなくなって終わる。
でも彼女が魔物娘になっていたとしたら?
魔物娘の愛は、通常の愛から逸脱している。
肉欲? それは生物としての本能だ、逸脱した愛とは言い難い。
なら何か? 独占欲とも、執着とも言えるその一途な愛だよ、分からんか?
彼女達について少しでも知っているのなら、解釈をほんの少し変えるだけで彼女達は
人だろうと魔物娘だろうと殺せる、魔物から大して変化していない存在だと気付くハズだ。
それも、たとえ世界の果てまで逃げても必ず追い付いてくる、まるで天国へまでルパンを追いかけた某氏のようにな。
フフフ、そう顔を青くしなくても良い、彼女は魔物娘と成り果てて、もう短気は起こせなくなったからな。
理由? それくらい自分で考えると良い、簡単な事だからな。
こっちじゃ彼女は魔物となる事で生き返った、つまり本来ならば死んだんだ。
死んだ生物がいきなりアクロバティックに動けるわけが無い、そうだろう?
男が見たのは、玄関先に立つ女の変わり果てた姿だった。
男はこう思ったらしい(あぁ、怨みを晴らしに来たのか)とね、とんだ勘違いだ。
男は黙って玄関を開けて、彼女を招き入れた。
しばしの揉み合いの後、女は泣きながら謝ったそうだ。
昔から、女は人の話を聞かず、男は女のフォローに、駆けずり回っていたからね。
男が無能と言ったけど訂正しよう、人を諭すという点では彼は一流だったよ。
魔物娘となり、男の言いなりと言っても良い程に大人しくなった女は、真実を聞かされる度に赤くなり続け。
最終的にはあのまま死んでいれば良かったとまで言うまで追い詰められたそうだ。
ただ、それでも未だに二人が共にあるのは。
『これからは私の話を最後まで聞く事だ、二度は無いのだからな』
翻訳すると「もう二度と危ない事はしないで、私の側から離れないでくれ」って言ってるんだ。
そりゃそうだよな? 人は死んでも魔物娘として生き返る可能性が残っているけど、魔物娘は死ねばそれまでだ。
現実世界の男は死んだ、男が生き返ったという報せを聞く前に後を追って自殺したからだ。
現実の私は、それをネットのモニター越しに見ている事しか出来なかった。
なぁ、何処にでもある普通のつまらない話だっただろう?
違うのは、二人が生きて共に幸せになったのか、死んであの世で幸せになったのかの違いでしか無い。
だが、ここまで語らなかった事で、重要な事がひとつ。
男は実は居候だった、女は年収ウン百万余裕のキャリアだった事。
男は実は主夫で、女はそんな男に依存していた事。
そして、最も重要なのは幼少期にお互いが、お互いを助けていたという事だ。
女は男勝りのち
[3]次へ
[7]TOP [9]目次
[0]投票 [*]感想[#]メール登録
まろやか投稿小説ぐれーと Ver2.33