カミツレから出ると、遮那と真由は新京極の街に繰り出した。
相変わらず街のあちこちにはたくさんの警官がいたが、普通に街を散策するぶんには難儀しなさそうだ。
「それにしても物騒な世の中になりましたね」
真由の言葉に遮那は黙って頷いた。
殺人事件やら先ほどの怪しい男やら、確かに人心も荒廃しているのかもしれない。
「人心が荒めば色々な考えが生まれてくる」
遮那は通りでなにやら宣伝活動をしている青い衣の人間に視線を向けた。
「ああいう風に、な?」
「主神さまを信仰し、救世主の到来とともに、千年王国を築きましょう」
青い衣の法衣をまとったたくさんの人間が街頭におり、その内の一人が演説をしている。
「遮那さま、あれは?」
眉を潜めながらも、気になるのか真由は遮那のほうを見た。
「『救世主神教団』、よくわからないが、新興宗教のようだな」
それなりに支持は集めているようで、街頭にはたくさんの人が集まっている。
「教義は基督教ベースのようだが、違った面もあるようだな」
ともあれ、自分に関係ないところで勝手にやれば良い、遮那は肩をすくめると、歩き始めた。
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「・・・ん?」
新京極から出て、帰路につこうとした時に、いつの間にやら、すでに道の大半が警察に塞がれていた。
「困りましたね、これでは帰れません・・・」
二人とも家は封鎖の外にあるため、このようなことになっては帰ることが出来ないのだ。
「おそらく地下鉄も同じだろう、参ったな、なんとかならないか・・・」
よく見れば遮那たちと同じように封鎖の外に家がある人はたくさんいたのか、警察と揉めるものまでいる。
「遮那さま、何か様子が変です・・・」
警察の様子を見ながら、剣呑な表情で真由は呟いた。
「ああ、あまりに重武装が過ぎている・・・」
封鎖している警察は、たしかによく見かける警察の姿をしている。
しかし後ろでこちらを見ているのは、防弾ベストにヘルメット、さらにはアサルトライフルと、明らかに特務部隊の装備だ。
「殺人事件のために、ここまでするでしょうか?」
「・・・わからん、とにかく抜け道を探すほか無いな」
困り果てた様子で警察と揉める市民を一瞥すると、二人はまた人でごった返す新京極に戻った。
「あうっ!」
足を返した時に、誰かにぶつかってしまった。
「いったあ〜い」
ぶつかったのは金髪碧眼の幼女だ、尻餅をついてこちらを見ている。
「ああ、悪かったな、立てるかい?」
遮那が幼女の手を引き、立たせようとしたその刹那。
いきなり身体に電流のようなものが走り、一瞬だけ右手に紺色の筋のようなものが見えた。
「何っ!?」
しかし、それも一瞬のこと、次の瞬間にはもうもとの人間らしい腕に戻っていた。
「ありがとお兄ちゃん」
立ち上がると、幼女はぱんぱんとスカートを払った。
「あ、ああ、怪我はない?」
「うん、ぶつかっちゃってごめんね?、遮那お兄ちゃん」
元気よく手を振ると、幼女はそのまま路地裏へと消えていった。
「あの女の子と、お知り合いなのですか?」
真由の言葉に、遮那は今しがた感じていた不思議な違和感に気づいた。
「・・・いや、会ったことはない」
あの幼女、何故己の名前を知っていたのだろうか?
今初めて会ったはずなのだが。
「・・・ん?」
幼女が消えた路地裏、ふと遮那は気になっていた。
「何だ?、血の匂いがする・・・」
「遮那さま?」
ゆっくりと薄暗い路地裏に入る遮那と、その後ろに続く真由。
人気のない路地裏、壁と壁に挟まれた陰に、一人の少女が項垂れていた。
「っ!、真由っ!」
だがその少女は、激しい暴行を加えられたかのようにボロボロで、身体中至る場所から血が出ていた。
「ひどい怪我、一体なにが・・・」
慌てて駆け寄ると少女の脈をとる真由、かなり弱ってはいるがまだ生きている様子だ。
「とにかく応急処置を・・・」
遮那は持っていたミネラルウォーターでハンカチを濡らすと、少女の傷口を洗った。
「っ!、遮那さまっ!?」
「ほぼほぼ血は止まっているが、衰弱しているのは心配だな」
何かに気づいた真由には関わらず、応急処置を進める遮那。
「遮那さま、普通こんな怪我がつくでしょうか?、まるで拳銃か何かで撃たれたような・・・」
「・・・余計なことは考えないほうが良い」
簡単
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