無数のクローンが入れられた巨大なカプセルが立ち並ぶ怪しげな廊下。
漆黒の強化鎧装を身につけた人物がクローンを眺めていた。
カプセル内部には怪しい緑の液体が満たされ、その中にクローンがいるのだが、みな例外なく金属マスクとヘッドギアを装着させられていた。
「ネクロ様、ネクロ・カオス様」
ネクロ・カオスと呼ばれた黒い人物は、助手を見て頷いた。
『タイプD、タイプN、ともに順調なようだな』
ネクロの声はくぐもり、その声で正体を判別することは出来なかった。
「はい、いずれも高数値の能力です、タイプK同様に主力を担えると考えています」
『そうでなくば余が技術提供した意味がない、一刻も早く魔物を駆逐せよ』
ネクロは廊下を歩き出し、助手もまた慌ててその後ろを追う。
『それで、『エンジェル』は?』
廊下を歩きながらひらひらとネクロは手を後ろにかざす。
レポートを求めている、そう判断した助手はネクロに研究レポートを渡した。
「努力はしていますが、やはりエンジェルのクローンともなると」
『貴様のそれは努力とは言わぬようだ』
レポートを読み終えると、ネクロは手を助手にかざす。
「うがっ!」
ふわりと助手は首を掴まれたかのように宙に浮き上がる。
『貴様らは努力をしているつもりだろうが、結果が伴わぬ努力は、努力ではなく徒労に過ぎぬ』
「ががっ・・・、た、助け・・・」
『もしそうでないと余に知らしめるならば方法は一つ』
ネクロが手を降ろすと、助手もまた下に落ちた。
「さ、作業を倍にします、い、一刻も早く『エンジェル』のクローンを・・・」
『それが賢明と言うものだ、急げ、余は気が長い訳ではない、エンジェルが現れた以上貴様らにまだ勝機はある』
ネクロは咳き込む助手を残して、廊下の果てに消えた。
『・・・(次元破断爆弾を使えば二つの世界の融合も出来たはずだが、何者かが邪魔をしたか?)』
しかしいずれにせよ自分の前に立てる者は存在しない。
ネクロはゆっくりと廊下を歩いていった。
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魔物娘所有の飛行輸送機は元々クローン兵士の輸送機を鹵獲して使用していたようだが、今は魔物用に建造されている。
クレメンス・ビスマルクが軟禁された輸送機も、そんな数ある魔物用の輸送機の一つだった。
輸送機の中にある営倉のベンチに腰掛け、クレメンスは考える。
やはりこちらの魔物も本質的には輝夜となんら変わらないようだ。
とするならば、和平交渉次第で共存出来るのではないだろうか。
「こんな目にあわせてしまって、本当にすまないな」
営倉の扉網戸越しに、ヴィルヘルミナの顔が見える。
「別に構いません、怪しい者は疑って仕方ないかと」
クレメンスの言葉に、ヴィルヘルミナは微かに首をかしげた。
「ふむ?、そうか・・・」
しばらくクレメンスの言葉を反芻した後、ヴィルヘルミナは真剣な眼差しで赤髪のクローンを見つめた。
「やはり、変わってるな」
ヴィルヘルミナは手元にあるクレメンスの血液検査の結果が記録された端末に目を通した。
細胞や血液、その身体構成全てがクレメンスとタイプKクローンは同一、だが彼は凡そクローンらしくない個性。
身体は間違いなくオリジナルKのクローン、しかしクローンらしくない個性ある性格、やや違った見た目、イミテーション・ヒューマンらしさがない。
「とにかく君の安全は我々魔界軍が保証する、危害を加えるつもりはないから、心配しないでほしい」
「この輸送船は今どこに向かっているのですか?」
クレメンスの言葉に、ヴィルヘルミナは軽く頷きつつ、応えた。
「とりあえず前線基地に向かっている、そこで君についてはより詳しく検査をすることになるはずだ」
なるほど、やはりクレメンスのクローンらしくない特性は魔物たちも気になるところなのかもしれない。
ぴぴっ、と呼び出し音が鳴り、ヴィルヘルミナはヘルメットに内蔵された無線機を作動させた。
「・・・なるほど、わかったすぐにいく」
クレメンスに敬礼をすると、ヴィルヘルミナはコクピットに向かった。
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コクピットでは、パイロットの魔物たちが慌ただしく計器類のチェックをしている。
「敵影か?」
ヴィルヘルミナの質問に魔女は素早く目を走らせる。
「わかり
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