未だレスカティエは陥落しておらず、また魔界の第四皇女が産まれて間も無い、そんな時期の物語である。
カメルレンゴ(教皇補佐)、マヴロス・ヘルモティクスは教皇から密命を受け、密かに教皇区から反魔物領カフェナウムに向かった。
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カフェナウムに向かう船の中、マヴロスは船室から星を眺めていた。
「・・・(凶星が力を増している、カフェナウムに何か良からぬことが起きているのか?)」
教皇からは密命以外のことは何も聞いてはいない、カフェナウムで力を増している『ファリサイグループ』の調査だ。
元々単なるカフェナウムの教会に過ぎなかったファリサイグループだが、近年急速に力を増しており、何やら不穏な動きがある。
そこでカメルレンゴたるマヴロスが派遣されたのだが、何故教皇補佐たるマヴロスにこの密命が与えられたか、知るのは教皇本人だけである。
窓を閉めて、椅子に腰掛けようとした時、突然船が大きく揺れた。
「カメルレンゴ様っ!」
「・・・何事だ?」
船室にかけこむ騎士に、マヴロスは冷静に目を向けた。
「襲撃ですっ!、旗印は十字架っ!」
「何だと?」
十字架の旗印、何故教団の船が教団に攻撃を受けているのだ。
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マヴロスが乗る船の向かい側には、巨大な軍船があった。
間違いない、舳先にある十字架の紋章はたしかに教団のものだ。
「カメルレンゴっ!」
「わかっている」
静かに呟くマヴロスだが、突然相手の船からぞろぞろと兵士が現れ、教団騎士に襲いかかった。
周りから複数人に襲われ、教団騎士は思うように戦えない。
「慌てるな」
素早く回し蹴りで後ろから斬りつけてきた兵士を蹴散らしつつ、マヴロスは相手の船に向かう。
「速やかに終わらせてやろう」
とんっと甲板を蹴り、マヴロスは軍船の甲板に着地した。
「教団が教団の船を攻撃するなど、冗談ではすまんぞ?」
静かに語りかけるマヴロスだが、誰一人として返事をしない。
「教団だと?、こんな魔物が行く海を無傷で渡る船がか?」
兵士の後ろにいる中年の男、彼こそがファリサイグループのリーダー、アンティパス・サンへドリン司教だ。
「私はカメルレンゴのマヴロス・ヘルモティクス、カフェナウムの調査に来たのだ」
「カメルレンゴを名乗るとは不届きな魔物、主神さまのために奴を殺せっ!」
瞬間襲いかかる兵士たち、しかしマヴロスは目にも止まらぬ高速拳を放ち、すぐさま全員昏倒させた。
「貴様・・・」
「さて、アンティパス・サンヘドリン司教、話しは教皇庁で伺おう、異端審問会にて白黒つけられるだろう」
直後、軍船が大きく傾いた。
「むっ?!」
「ふははははは、魔物よ、貴様らの負けだっ」
突如空が割れ、光の力がマヴロス目掛けて降り注いだのだ。
「・・・(狙いは私の船か)」
踵を返してマヴロスは自分の船に帰ると、後退させた。
「ちっ!、間に合わぬかっ!」
瞬間光が煌き、教団の船は海上から失せた。
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「サンヘドリンめ、やってくれるな」
海からカフェナウムに上がりながら、マヴロスは毒づいた。
後ろで彼の部下たちはシービショップやマーメイドに助けられ、礼を述べている。
「だが、これではっきりした、ファリサイグループは教団の船でも怪しければ攻撃してくる」
よほど追い詰められているのか、それとも魔物を憎んでいるのかどちらかだろう。
とにかくまずはカフェナウムの調査をしなければならないだろう。
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カフェナウムの人気のない教会、マヴロスは礼拝堂の床に腰を落ちつけると、神に祈りを捧げた。
「魔物ごときが主神さまに祈るのか?」
礼拝堂の入り口に、いつの間にやら純白の鎧の騎士がいた。
「カフェナウムの騎士か?」
「俺はブルース、ファリサイグループの筆頭騎士だ」
きらりと剣を引き抜くと、ブルースは間髪入れずにマヴロスに斬りかかった。
攻撃を避けながらマヴロスはブルースに問いかける。
「ファリサイグループは何を企んでいる?」
「はっ!、魔物ごときに話す口はないわっ!」
マ
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