最高に貧弱(?)なモスマン
とある山の中に、小さな村がありました。
その村には若い少年がいました、若く、理想に溢れ、また年相応に未熟な、そんなよくいる少年です。
少年は、いつも主神のために、世界のために戦いたかった。
そんなある日、少年はついに一大決心をしました。
それは反魔物の最前線、教国領の都市ミレニウムに行き、正式にギルド所属の戦士になるというものでした。
ただでさえギルドの戦士は人がいません、故にいつでも募集がされています。
両親の反対もおしきり、少年は野を越え山を越え、単身ミレニウムに向かいました。
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初めて目にするミレニウムに、少年は驚きを隠せませんでした。
正確に建造された規則正しい住居群や、たくさんの人でごった返す市場、多数の神官が祭礼に赴く巨大な神殿など、まさに大都市でした。
さて、少年ははやる気持ちを押さえてギルドに向かうと、すぐさま登録、ギルド付きの戦士になりました。
支給品の武器で身を固め、少年は最初の任務に赴きました。
最初の任務は、ミレニウム近くの古代の闘技場跡にいる、『最高に貧弱なモスマン』を討伐するものでした。
最高に貧弱なモスマンと呼ばれるだけあって本当に弱いのだろう、でなければ新米である自分に回ってくるわけがない。
少年はそう思い、古代の闘技場に向かっていきました。
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古代の闘技場につくと、少年は恐る恐る中を調べてみました、すると・・・。
いました、恐らくあれがそうでしょう、闘技場の真ん中で何の変哲もない最高に貧弱なモスマンが一人ぼんやりしています。
こっそり近づいてみて少年は、その最高に貧弱なモスマンがうたた寝をしているのに気づきました。
今がチャンス、少年は鋼の剣を抜くと、後ろから最高に貧弱なモスマンに切りかかりました。
瞬間、まるで鋼と鋼がぶつかるような嫌な音がして少年の剣が弾かれました。
少年が驚く間もなく、最高に貧弱なモスマンは紫と蒼の神秘的な瞳を開きました。
その目の奥には不思議な紋様が刻まれており、明らかにただ事ではない気がしました。
「・・・誰?、人間?」
静かに最高に貧弱なモスマンは呟くと、いきなり全身に禍々しいオーラを纏いました。
「殺しはしないけど私の寝込みを襲った償いはしてね?、丁度ムラムラしてたから」
続いて禍々しいオーラの外側に凄まじいレベルの仙気を放ち始めましたが、明らかに二十ある属性全ての仙気です。
さらに柔らかそうだったその翅に、あたかも液体金属か何かのように素早く金属が広がり、一瞬で鋼の翅に姿を変えました。
最高に貧弱(?)なモスマンは宙にふわりと浮き上がると、翅を動かし、あたり一面に鱗粉を撒き散らしました。
慌てて吸わないようにする少年でしたが、皮膚からも浸透しているようで、頭がいたくなり、身体が痺れて動かなくなり、とても眠たくなり、すごく身体がだるくなりました。
「さて、それじゃあ君はもう私のものね?」
そのまま最高に貧弱(?)なモスマンは少年を拐い、どこかへ去っていきました。
世の中本当に強い人はどこにいるかわからないもの、みなさんも充分にお気をつけを。
終わり
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