崇高なる君主


砂塵が吹き荒れる砂漠、マントを身につけた青年が歩いていた。



衿谷林士郎、彼は極東の地日本にてこの世に生まれてからはその名前で呼ばれていた。


「暮れるな・・・」


空を眺めるとすでに太陽は傾き、星が瞬き始めていた。

砂漠は日中は恐ろしい灼熱の地獄であるが、夜になると途端に空気の凍てついた死の大地に変わる。


林士郎は手にしていた杖を握り締めながら道を急ぐ。


少なくとも一夜を過ごせる場所までたどり着けなければアウトだ、夜が明ける頃には死体が一つ砂漠に転がる羽目になる。


そうなる前になんとかしなければならないだろう。






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どこまで行っても変わらぬ景色に、林士郎は体力がじわじわと奪われていた。

時間も刻一刻と進んでおり、すなわちそれは林士郎の生存確率が低下していることも示していた。


額の冷たい汗を拭い、前を見据えたその時、砂塵の合間にちらっと柱のようなものが見えた。


「あれは・・・」


ゆっくりとその場所へと向かうにつれて、見えたものがなんなのかわかるようになってきた。



「・・・神殿だな」



それは古代の巨大な神殿だった。


いつの時代に作られたものか、石で作られた柱に崩れかけた巨大な神像、広大な御堂と、どうやら死なずに済みそうな場所である。


一息つくと、林士郎は神殿に立ち入り、名前も知らぬ古代の神に助けてもらえたことを感謝した。



神殿の床に座り込み、休んでいると林士郎はうつらうつらと眠くなってきた。








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「何?、断るだと!?」


「貴様は大いなる世界の真理が見たくないのかっ!」


「我々に協力し、君の持つ力を使えればヴァチカンを出し抜き、神の真理を見ることが出来るのだっ!」


「あの大賢者パラケルススすら到達しえなかった真理、見たくないのか?」



「お言葉ですがお歴々、私はそのようなことに興味はありません、鍛えた力も、備わった異能も人を守るためのもの、一部の人間を満たすためのものではありません」



「ならば仕方ないな・・・」


「我々の秘密を知った以上、消えてもらう」







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「・・・夢か」


気づくともう夜明けを迎え、太陽の微かな光が神殿の外から床を照らし、林士郎の顔に光を浴びせていた。


いつの間にか眠ってしまっていたらしい、ゆっくり立ち上がると、何かが足に触った。



「・・・護符か?」


稲妻のような意匠を持っているものの、長柄の矛のような形の金属で出来た小さな護符だ。




この神殿に祀られている神に関わる護符だろうか?、この先も守ってもらいたい、林士郎はそう思い護符をポケットにしまい込んだ。



「さて・・・」


神殿の外を見ると砂塵が吹き荒れ、相変わらず人の姿は見当たらない。


とにかく、今林士郎を追いかけている勢力と敵対する組織の本拠地にまで逃げることが出来ればおいそれと手出しは出来まい。


「・・・ヴァチカン、遠いな」



軽くため息をつき、林士郎は再び歩き始めた。









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小さな街、林士郎は砂漠を抜けて太陽に照らされた砂漠の中の街に入った。


周りを見ると、林士郎同様マントを身につけた巡礼者が複数人、道を歩いているのが見えた。


場所がらか、それはよくわからないがこれなら巡礼者に紛れてヴァチカンまでたどり着くことが出来るかもしれない。



「誰かっ!」


「そいつを逃すなっ!」


どこからか大声が聞こえ、林士郎は何かの影が足元に見えた。


「え?」



「そこの者っ、退けっ!」



声に振り向くと襤褸を纏った小さな少女が林士郎めがけて飛び込んできた。


「っと・・・」



「退けと言ったであろうがっ!、妾は今追われておるっ!、さっさと・・・」


「待てっ!」



道の向こうから神聖な白装束を身につけた集団が走ってきた。

「何だ?、あの紋章はヴァチカンのものに見えるが・・・」


数人の白装束が林士郎を取り囲み、少女は素早く彼の後ろに隠れた。


「そこの貴様っ!、その悪魔を寄越せっ!」


「はあ、寄越してどうするつもりで?」


ちらっと林士郎は白装束の腰を見て、拳銃とサーベルがあるのを見て警戒を強めた。


「知れたこと、逃げ出し
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