私の作ったあまり味のよろしくないカレーを二人して平らげると、デルエラは部屋の隅にあったテレビを見た。
「あれは何?、私の部屋にもあったけど」
「テレビですね、いろいろな情報を仕入れるのに役立ちます」
しかし何故魔王さまはテレビやらマンションやら、現代のことにそれほど詳しいのだろうか。
ひょっとしてたまに様子を見ているのだろうか?
「では、つけてみますか」
リモコンのスイッチを入れると、ちょうど何かのアニメのようだ。
内容としては異能に目覚めた主人公が幼馴染とともに大魔王を打倒しに行くが、支配を目論む神とも戦うストーリーのようだ。
「・・・ふうん、中々じゃない」
アニメを見ながらデルエラはぽつりと呟いた。
なんとなく私もデルエラと並んで最後まで見てしまったが、それなりにまとまった話しとなっていた。
「幼馴染は大魔王の娘、ね・・・」
私は紅茶を飲みながらぼんやりしていたためあまりストーリーは頭に入らなかった気がするが、デルエラのほうは何気にしっかり見ていたようだ。
「そろそろ眠る時間ですね」
卓上の時計を見てみると、もう夜の九時だ。
「明日は早いのですから、この辺りにされては?」
私の提案に対してデルエラは目を細めて見せた。
「・・・早い?、何時くらいなのかしら?」
「朝の八時には学園に行かねばなりません、明日は朝の六時には起きなければならないでしょうね」
デルエラは面倒そうに目を閉じた。
「六時、魔物の起きる時間じゃないわね」
「まあ、そう言わずに、なんなら明日は起こしに行きますよ」
私がそう呟くと、デルエラはいきなり目を見開いた。
「ほ、本当に?」
「え、ええ、貴女が望むならば・・・」
しばらくにこにこと笑うと、デルエラは卓上に銀色の鍵を置いた。
「私の部屋の合鍵よ、慎重に使って頂戴」
おやすみなさい、とデルエラは告げると、私の部屋から立ち去っていった。
しばらくして隣の部屋の鍵が開く音がした、どうやらデルエラは部屋に戻ったようだ。
ふう、と一息つくと、私は左腕に装着されている精霊の腕輪を見た。
「・・・やはり」
ポローヴェにいた時には腕輪の宝石が虹色に輝いていたのに、今は光を失い、燻んだ灰色をしている。
精霊たちの存在も弱々としか感知出来ず、精霊術を使用することは出来なさそうだ。
原因はよくわからないが、もしかしたら別の世界へと来たことに何か原因があるのかもしれない。
懸案事項ではあるが、まずは原因を探らなければならない、そのためにもまずは明日万全の状態で学園に臨まねば。
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さて朝の六時半、私は隣の部屋のインターホンを鳴らしてみた。
何度か鳴らしてみたが、デルエラが出てくる気配はない。
ひょっとして、まだ眠っているのかな?
私は鍵を開けると、中へ入ってみることにした。
寝室に入ろうとして、私は昨日あったことを思い出し、まずノックしてみることにした。
「デルエラ?、入りますよ?」
返事がない、ゆっくり私は寝室に押し入った。
「うーん、zzz・・・」
「・・・うわ」
入ったは良いものの、デルエラはあまりに寝相が悪かった。
丸まった布団に抱きつくかのように眠っているのだが、どういうわけだか半裸でいるためかなり目のやり場に困ってしまう。
「なるほど、レスカティエの真の主も朝には弱いようですね」
どうしたものやら、これでは起こすに起こせない。
ふと枕元を見ると、目覚ましい時計がひとつ置かれているのが目に入った。
私は時計に手を伸ばすと、ゆっくりとアラームを合わせた。
耳をつくような激しい音とともに、デルエラが飛び起きた。
「え?、え?、ええ?・・・」
「おはようございます、時間ですよ?」
未だ状況を呑み込めずいるデルエラを置いて、私は居間に戻った。
自室から持ち込んだ食パンをトーストにセットし、しばらく座っていると寝室から制服姿のデルエラが現れた。
黒と青のスカートにカッターシャツ、学園のアイドルと言うべき姿だろう。
「・・・おはよう、早かったのね」
デルエラの言葉に私はにっ、と笑ってみせた。
「ええ、今日から学園、こういうのは初めが肝心ですからね」
私は皿にトーストを載せると、バターを塗ってデルエラに差し出した。
「しっかり腹ごしらえをせねばなりませんからね、今日は大変ですよ?」
「・・・あなたって、意外と家庭的よね?」
感心したようにデルエラはそう呟いたが、私はまったく料理は出来ない
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