「また、増えてますね」
翌日オリガが迎えに来ると、開口一番そう呟いた。
「こんな短期間で三精霊使い、どんな裏技を?」
断罪の森に入ったことは言うわけにはいかない、涼風は適当に話をはぐらかすことにした。
「ところでオリガ、今度の休みに出かけてみないか?」
別の世界にいたときにはそんな風に女性に声をかけたりはしなかったが、オリガは自分の秘書のようなことをしてくれている、この辺で親睦も兼ねたい。
真相は単に話しを逸らそうと適当に言っただけなのだが。
『あっ、マスターずるいっ、遊ぶなら私と遊んでよっ』
風鳴を皮切りに、他の精霊たちも口を開く。
『わたくしとです、マスター、お疲れでしょうからわたくしが癒して・・・』
『違う、わたしと、わたしはまだマスターと契約したばかり、親睦というなら、わたしとすべき』
騒ぎ出す精霊たちに対して、肝心のオリガは神妙な面持ちでじっと涼風を眺めている。
「・・・もし、もしですが、卿にお許しいただけるならば、レスカティエで卿にお仕えしても、よろしいでしょうか?」
いきなりの提案に涼風は目を見開き、精霊たちもなにやらヒソヒソと内緒話をしている。
「卿はこれから確実に大軍団を任される将軍となられるはずです、そんな時には秘書の一人は必要になります」
そんな予定は毛頭ないのだが。
「卿にお仕えしたいのですっ、私の力が活かせられるか、試してみたいのですっ」
頭を下げるオリガに、涼風は目を閉じた。
「頭を上げてくれ、オリガ」
彼女が頭を起こすと、涼風は軽く頷いてみせた。
「もし大図書館が許してくれるなら、ついてくるといい」
一日の予定を全て消化すると、涼風は近くの空き地で久しぶりに武器を握ってみた。
「・・・よし、風鳴、もう一度だ」
『オッケー』
風皇剣に風の力を込めて何度か素振りしてみると、一人頷いた。
「よし、次、水鏡」
『はいっ』
今度は操霊斧鉾に水の力を集めてみる。
かすかに武器の刀身の周りに、波打つ不可視の気が見える。
「・・・よし、次は地走だ」
「よろしく・・・」
バトルアックスに、今度は地霊を宿らせてみると、大地から立ち上る霧のような力が溢れてきた。
『マスター、何かわかった?』
風鳴の言葉に涼風は軽く頷いた。
「風皇剣にはシルフの力を纏わせた場合のみ相乗効果で強くなる、操霊斧鉾にはどの精霊の力も内包させられ、強化される」
とんとん、と涼風は操霊斧鉾で何度か地面を叩いた。
「しかし風に関して言うならば、風皇剣のほうが威力が高い上に遥かに柔軟性がある」
翡翠色の剣を腰の鞘に戻すと、涼風は何度か頷いた。
「風霊使いにしか操れない、というのはそういうことなのだろうな・・・」
『じゃあ、マスター、私たちの力を、使う際には、そのバトルアックスを?』
じっと地走は操霊斧鉾を見つめている。
「その方が良さそうだ、しかしまずは二つの武器を使いこなすところからだな」
くるくるとバトルアックスを振るうとともに、地走が作った土の人形を素早く破壊していく。
「はあっ」
土人形は自律行動も取り、手に握った土の剣でこちらに攻撃をしてくることがある。
さながら合戦のように、周りに気を使いながら戦わねばならない。
近衛騎士として訓練を受けた涼風だが、それでも複数体の敵と連続で戦うとなると、かなり精神をすり減らして戦うことになる。
「・・・よし、良いぞ、地走、あと十人追加だ」
空高く星が輝くような時間になっても、涼風は休憩一つとらず、訓練を続けていた。
『マスタ〜、もういい加減に帰ろうよ〜』
風鳴は軽く欠伸をして見せたが、涼風は断固として首を縦には振らない。
「まだまだだ、もう少しでバトルアックスのコツがわかりそうだ」
息を荒げながら涼風はそう告げたが、誰の目から見ても限界が近いのは明らかだ。
『マスター、今日はこれまでにして明日またされてはいかがでしょうか』
水鏡も心配そうにそう言った。
「・・・しかし」
『マスター、さっきからふらついてる、これ以上は、ダメ』
地走の言葉が決定打だった、涼風は渋々とでも言うように頷くと、まっすぐアパートまで帰っていった。
次の日涼風は、全身の痛みで目が覚めた。
「うっ・・・」
あまりに無理をし過ぎたツケが次の日に回ってきたというわけだ。
外はまだ暗く、契約精霊たちも向かいのベッドで仲良く眠っている。
「ともかく、起きねばな」
ゆっくり身体を起こすと、枕元に置いていた治癒の丸薬を飲み、立ち上がった。
身体を引きづるように近くの椅子に腰掛け、卓上の魔法具で紅茶を沸かして、やっと一息ついた。
同時に心地いい温もりが身体に広
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