道諦の章



「ほんと、カルナはインドラ様が好きだよね」

もとの時間軸の宿屋のベッド、アルジュナはカルナと向かい合いながら話しをしていた。

「姉さん」

カルナはふうっとため息をついた。

「インドラ様がいなければ私たちは互いに死んでいた可能性もあるのよ?」

「わかってるって、インドラ様は私たちの命の恩人だって言いたいんだよね?」

むふふ、と楽しそうにアルジュナは笑いながら、楽しそうにカルナにささやく。


「でも私なら自分のご主人様に懸想なんてしないよ?、それにインドラ様よりも私的にはシテンのほうが・・・」


「尸天さんは確かに良い人だけれど、まだまだ強くなれそうね」

カルナは手元の本に目を落としながら、少しだけ瞑目していた。

「もし彼が今よりずっと強くなれたなら、立場的に絶対に結ばれないインドラ様よりも、魅力的かもしれないわね」








戦を逃れるかのように尸天はカーチャポルと呼ばれる街に入った。


「・・・何とも妙な気配の街だな」

あちこちに金ぴかの建物が立ち並び、街ゆく人も裕福そうだが、その反面小さな子供や老人まで、腕に奴隷を表す烙印があった。


裕福な街ではあるが、貧富の差が激しいのかもしれない。


さて、尸天がここまで来たのはある目的があったからである。


使用者に莫大な力を与える古代の兵器、シャクティと呼ばれる超兵器があるというのだ。

恐ろしいまでの熱量と光を放ち、一つの都市すら丸ごと粉塵に帰すという兵器らしいが、尸天にはその表現、聞いたことのあるような文言だった。


尸天の目的、カルナとアルジュナを殺すことなく和解させることを果たすためには、必要なことがあり、それを成すためには必要なものだ。


さて、バラモンのインドラの名前はすでに伝わっていたようであり、尸天は特に困ることなくシャクティについての情報を集められた。


「・・・やはり超兵器、そう簡単には手に入らぬか」

様々な人にシャクティの話しをきいてみたものの、何処にあるのかを特定することは出来なかった。

全ての話しで共通するのはカーチャポルの領主が秘密を知っているということのみだ。


仕方がない、あまり気は進まないが領主のところにまで話しを聞きに行くとしよう。

何事もなく会見出来れば良いのだが。



「あなたが最近話題のインドラ殿ですか」

意外なことに尸天はそう労せずにカーチャポルの領主であるハトホルと会見することが出来た。

「ハトホル殿、会見感謝いたします」

尸天の言葉にハトホルは一つ頷いてみせると、シャクティを探していることをハトホルに告げた。

「超兵器シャクティ、これは本来ならば秘密事項ですが、すでに百体が製造完了しています」

ハトホルによると、オリジナルのシャクティの解析は大半終わっているが、残り一割のところで迷走し、結果一人一発しか撃てないらしい。


「二発目はどうなるのですか?」

尸天の言葉にハトホルは考え込みながら答えた。


「撃った人間の身体の情報がシャクティに記録されますので、持つことすら出来なくなります」

ふと、尸天は何かを思い出しそうになったが、考えずにハトホルにまた質問した。

「持つことすら出来ない?」

「はい、二発同じ人間が撃つのは非常に危険です、撃ち出した力が使用者に与える影響は甚大で、実験で二発撃った者は原因不明の脱毛と吐血の末に死亡しましたからね」

結果一発しか撃てず、安全装置として使用したことがある者が持つときには持てないくらいに重くなる、そうハトホルは告げた。


「是非どのようなものか見てみたいですね」

尸天の言葉にハトホルは頷いた。

「他ならぬインドラ様のお望みならば喜んで」

ハトホルに続いて立ち上がると、尸天は領主の案内で、館の地下にある工場へ向かった。



地下工場には見覚えのある棍棒が大量に並んでいた。

そう、尸天がいつも使っているあの棍棒である。


「これは、凄い」

「きっとそう仰っていただけると思いましたよ」

尸天の驚いた声に、ハトホルは満足そうに頷いた。


「魔力の込めらた耐熱素材により、内部の核分解、核融合で生じる高熱に耐え、純粋なエネルギーを撃ち出すわけです」

ハトホルはそう言いながら工場の中央に足を運んだ。


「こちらがオリジナルのシャクティです」

工場の中央にあったのは、大きさは尸天の棍棒とさほど変わらないが、表面に様々な文言が刻まれたものだった。

「・・・これは、ハトホル殿は読めるのですか?」

尸天は文字を調べながらハトホルに尋ねた。

「いえ、いかなる古代文字にも例を見ないようなもので解読は不能です」

困ったようにハトホルは告げたが、実は尸天にはよく見覚えのある文字だった。

「(アルファベット、しかも
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