嫁が浮気しました
scene1
私は産まれてから洗礼を受け、この村で日々神の導きと福音を信じ暮らしてきた。
昨今は多くの信仰が産まれているが、私は日々主に祈りを捧げることを忘れることはない。
最早日課となっている朝の礼拝、見慣れた教会で私はロザリオを握り、祈りを捧げる。
だが、教会には私以外は誰もいない、否、この村にはもう神に祈りを捧げる者は誰一人としていないだろう。
「何故貴方は自身に応えぬ神に祈るのですか?」
教会を出ようとして、黒い服の魔物娘に出会った。
「神は応えぬものだからだ」
短く告げると、私は教会を後にして家に戻った。
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scene2
こんな私ではあるが、実は妻がいる。
妻は私にはもったいないくらいの、清楚可憐な娘で、この堕落した村で唯一私が安らげる場所を作ってくれる。
「おかえりなさい、あなた」
家に戻ると、いつも妻は優しい笑顔で私を出迎えてくれる。
「ただいま、いつもありがとう」
私は台所に向かうと、妻が作ってくれた朝食を皿によそう。
数ヶ月前までは妻も私と一緒に教会で毎日祈りを捧げていた。
だが今はそんなことはさせられない、正直今こうして彼女に家事をさせているのも良心が蝕まれる。
「あまり無茶はするなよ?、もう一人の身体ではないのだから」
彼女の腹は今や大きく膨らみ、少しの移動すら問題になりそうなほど体型が変わっていた。
「ふふっ、ありがとうございます、けれど私はまだ大丈夫ですよ?」
妻が食卓に着くと、私たちは主に祈りを捧げ、日々の糧に感謝をすると、食事に手をつけた。
豪華な食卓ではない、パンにスープ、わずかな野菜からなる質素な食事である。
私はこれ以上の生活など望むわけもない、妻とともに主への敬神深き清貧の日々が送れるのならばそれで構わない。
ここに一人私の子供が増えるのすら、私には主からの過度な贈り物に思えるくらいだ。
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scene3
この村も昔は良かった、清貧と敬神を旨とし、日々に幸せを感じる素朴な村だったはずだ。
「あんっ、あっ、もっと、もっとついてよおおおおおおおお」
だが今やそれは大きく狂い、買い物に私が出ても、通りで男女性行するような景色が、一般的だと感じられるくらいにまで変わってしまった。
最初私は注意した、次に私は諦めた、最近ではもう無視を決めこんでいる。
「あっはあああ、し、白いの、いっぱい・・・」
おそらく達したのであろう、今私の視界の端でビクビクと体を震わせ、裸身を仰け反らせる淫魔も、もとは敬虔な主の信徒であったはずだ。
それが、あのような卑猥なことを良しとするような淫魔と化してしまうなんて、私にはもう耐えられない。
急ぎ足で妻から頼まれた食材を買うと、すぐに私は自宅へと走った。
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scene4
どこでこの村はおかしくなってしまったのだろうか?
数年前、この村に黒い服の女が運び込まれてきてから、全ては変わってしまった。
私が最初に郊外で見つけた時、あの女はひどい怪我をしていた、そればかりか雑菌が傷口から入り、破傷風すらも起こし、虫の息だった。
外に行くことが多かった妻は何人かの村人とともに郊外まで支援を求めに行き、残った村人が総出で代わる代わる女の看病をした。
裕福な村ではなかった、だが主の教えのもと、誰一人として女を追い出そうとするものはいなかった。
私たちは来る日も来る日も看病し、やがて女は意識を取り戻し、元気になった後一言だけ呟いた。
『このご恩は、忘れません』
そして、全てが狂い出した。
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scene6
最初に狂い出したのは私のはす向かいに住んでいる引退した兵士とその妻の老夫婦だ。
教会の礼拝にある日突然来なくなったかと思うと、家から二人とも出て来なくなってしまった。
あまりにそんなことが続いたので、病にでもかかっているのではないかと心配した隣の若夫婦が野菜を持って二人の家へ向かった。
だが、家から出てきたのは青年だけで、妻はとうとう出て来なかった。
がたがた震える青年は、みなが何を言っても話さず、やがて
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