第三話「教員募集」




「シトリー、朝ですわよっ」


「・・・む?、んむむ」


昨日遅くまで墓場でアンデット少女たちと戯れていたためか、いつもより眠い状態で倭文は目を覚ました。



「やっと起きましたわね?、あなたにお客さんが来てますわよ?」




「・・・客?」


目をこすりながら倭文は素早く着替え、すぐさま教会の礼拝堂に向かった。







「やっときた、おっそーい」

礼拝堂には、何というか、凄く小柄な少女、いやより正確に述べるならば、幼女がいた。


教団の人間が纏うような白装束に、愛らしい金髪、美しい碧眼だが、何度見ても幼女だ。



「エノクを待たせるなんて、どーいうつもりなのっ?!」



「エノク?」


倭文の言葉に白装束の幼女は何度か首を縦に振ってみせる。



「『エノク』はエノクの名前、エノク・ケテルセフィラ、今日から学園長だからね」


いきなりの言葉に、倭文は何も言えず、呆然と幼女、エノクを見つめていた。



「学園長?、ええっと、エノク、ちゃんが?」


何とかそれだけ呟いたが、どうやらエノクはそれが不満だったようで、唇を尖らせる。


「むー、そーだよ、黒曜くんもエノクを斡旋したんだから」


黒曜?、誰のことだ?



「あ、そっか、もう名前が変わって、今はマヴロス・ヘルモティクス、だっけ」


「・・・なに?」



マヴロス・ヘルモティクス、それは現教皇リノス二世の名前ではないか。



「うん、ほらこれ」


エノクが差し出す書状、それは間違いなく教皇の御璽が押された正式な勅書だった。



「・・・どういうことだ?」



今目の前にいる幼女が何者かは依然として不明だが、何故リノス二世はこのような詔を?



「わかりました、貴女を学園長と認めます、しかしまだ開校準備は整っていません」



「うん、まずは学生と教員を集めてね?、エノクとシトリーだけじゃ手が回らないから」




そうか、学生だけではなく、教員も集めねばならないのか、完全に忘れていた。








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「はあ、どうしてあんな幼い子が学園長に・・・」


桜都を歩きながらそんなことをリリーは呟く、どうやらあの学園長、エノク・ケテルセフィラには不信感しかないようだ。


「わからん、しかし教皇聖下のこと、何か考えがあるのだろう」



相変わらず人通りがないが、とりあえず倭文とリリーは突貫で作ったチラシを壁に貼っていく。


「なんだかあの学園長、好きになれそうにありませんわ」


普段ならば人を苦手にすることなどないリリーにしては珍しい、何故かエノクとは馬が合わなさそうらしい。



「どうしてだ?」


持ってきたチラシは粗方貼り付けた、倭文は手をパンパンと叩いてからリリーの方に視線を移したが、何やら彼女もよくわからないようで、考えこんでいる。



「うーん、わたくしにもわかりませんが、なんだか生まれついての敵対者か何かみたいに感じるのですわ」



「敵対者・・・」



魔物娘の敵対者、普通に考えればそれは主神だろう、厳密に言えば倭文もまた教団に所属しているため、魔物の敵対者と言えるが。



「別にシトリーは嫌いではありませんわ、魔物娘たちのためにわざわざ来てくださったのですもの」


どうやらリリーの中では倭文は敵対者のくくりではないようで、少しだけ彼はホッとした。



「少々、宜しいだろうか?」


凛々しい声に二人が振り向くと、そこにはアンデットの少々がいた。


死人らしい顔色に見慣れぬジパングの装束、右手には骨のような籠手をつけているが、その奥にはうっすらと骨が見える。


「君は、誰かな?」


「はっ、それがしは惟任日向守桔梗(これとうひゅうがのかみききょう)、ジパング出身の侍です」



ジパングの侍、しかしすでに肉体は朽ちたようで、侍のアンデット、すなわち落武者となっているらしい。


「私は八十嶋倭文、こちらはリリアン、どうかしたのかな?」



「はい、シトリー殿、貴方が一流の勇者であると見込んでお願いがあります」



勇者?、いつから倭文は勇者になったのかさっぱりわからないが、どういうことだ?


「日向守殿、私は勇者ではなく単なる教師だが?」


「謙遜は結構です、昨日墓場でウィルオウィスプとゾンビを軽くいなしていたではありませんか」


じっ、とリリーは倭文は見つめていたが、彼は素早く首を振った。


「軽くいなしてはいない、なんとか撃退出来ただけだ」


「・・・わたくし的には勇者云々よりも、アンデット少女たちと夜中にこっそり密会していたことのほうが問題ですけ
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