「ここが、暗黒魔界・・・」
魔界に突入して早々、スピリカは人の世界とは異なる魔界の光景を目の当たりにして、呆気にとられていた。
大気に満ちる濃い魔物の魔力に、大地を照らす不可思議な光、魔界以外では見ることが出来ない不思議な植物。
自分が今、魔物の領域に立っていることをスピリカは否が応でも実感させられた。
「さて、それではまずは・・・」
足を進めようとして、スピリカは足下から何かがせり出してきているのに気づいた。
「・・・これ、は?」
足下からにゅるにゅるとせり出してきているのは、漆黒の太陽としか形容出来ないような、そんな物体だった。
「これは、まさか・・・」
スピリカは、かつてウェルスプルにいる時に、様々な魔物の特徴についてを聞いたことがあった。
そのうちの一つに、『闇の太陽』と称される希少な魔物の話しがあった。
暗黒魔界でも魔物娘の魔力とインキュバスの力が集中する場所に現れると言われている稀有な魔物娘がいると。
その名はダークマター、強力な個体はたった一人で魔界を産み出すことが出来るとすら言われている、そんな存在だ。
「・・・なに?、この子、私をどうするつもりなの?」
にゅるにゅるとダークマターは本体である黒い球体から触手を伸ばしてスピリカに絡みついている。
「・・・この子、もしかして・・・」
触手はスピリカの足に絡みついて身動きをとれなくすると、執拗に彼女の身体を這い回る。
だが、その行為そのものには悪意はまったくなく、むしろ無邪気な、初めて出会う人間に対する好奇心が感じられた。
「産まれた、ばかりなの?」
にゅるにゅると触手はスピリカの身体を這い回り、ゆっくりと彼女を持ち上げると、本体である球体の上に乗せた。
「・・・っ!」
続いて彼女の耳に糸のような細さに変わった触手が侵入し、ゆっくりと頭の中へと登っていく。
「う、うんんんんん、あ、あはああああ・・・」
異物が身体の中へて侵入しているにも関わらず、彼女はまったく苦痛を感じてはいなかった。
そればかりか、触手を通じて頭の中にダイレクトに全身を震わせるような快感を与えられていた。
本来ならば素肌から始まり、肉を通じて神経に至り、そこから頭へと向かう快感が、直接目的地に与えられているのだ。
「ふっ、ふうううううううううう、あああああああああ・・・」
何も考えられず、嬌声をあげることしか出来なくなるのもまた、スピリカ個人の性質が原因ではなく、ある種致し方ないことである。
魔性の快楽に浮かされている内に、スピリカの素肌には黒い触手が入り込み、彼女の太腿にも、本体たる球体が同化し始めている。
最早蕩けきった瞳でスピリカは空を見上げたが、先ほどまでは禍々しいと感じた魔界の景色が、なんとも愛おしく見えた。
「・・・はあ、はあ、ああ・・・、私、そう、変わって、いく・・・魔物、に・・・」
それを自覚した瞬間、心臓が引き締められるように感じ、頭に電流のような快感が走った。
「ふあっ!、・・・・・いい、これが・・・魔物の、ダークマターの身体・・・」
服装はさっきと変わっておらず、書記のようなぴっちりとしたものである。
だが、その内側には人間とは違う、魔物らしい魔性の肉体が秘められていた。
逆に隙がないように見える服装が、より肉体とのギャップに拍車をかけているかもしれない。
ゆっくりとスピリカは自分が腰かけている黒い球体に触れてみた。
「っ!!!!!?!?!?!!」
一瞬、あまりの感覚に時間が停止したかのように感じた。
続いて球体から触手を伸ばして、周りの空気をかき分けてみる。
「なるほど、この触手、私の思う通りに・・・」
新しい身体に興味は尽きぬが、今はイドを探してポローヴェへ帰還することが先決、スピリカはふわふわと浮遊しながらその場を後にした。
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「スピリカ女史っ!」
魔界を走りながら、イドはスピリカを探し回る。
あちらこちらを走り回るもののスピリカを見つけることは出来ず、イドは内心焦っていた。
表情に焦りが色濃く見えるイドに対して、妹喜の方はスピリカがどうなったのかを感知したのか、にやにやと笑っている。
『緯度、上手くいったようじゃ、物語が進んだようじゃぞ?』
妹喜の言葉に、イドは一旦足を止めたが、すぐに何者かの気配を感じて、顔を上げた。
「・・・スピリカ、女史?」
「ご機嫌よう良い天気、ですね、イドさん」
現れたのは確かにサプリ
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