教皇リノス二世が泊まっている教会はイドとスピリカがいる場所からそれなりに離れた場所にある。
朝日とともにイドはスピリカとともにポローヴェを出発したものの、教団都市についたころには、もう昼過ぎになっていた。
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「ここが、教皇のいる教団都市か・・・」
たくさんの人でごった返す大通りに、所狭しと並んだ商店、なるほど、ここはポローヴェよりもはるかに豊かな街らしい。
「活気に満ちているな」
イドはポローヴェのスラムを思い出し、微かに顔をしかめた。
「はい、ですがポローヴェもいずれはこうなります、いえ・・・」
スピリカは目の前にある教会を眺めながら頷いた。
「・・・して見せます、私がこの手で・・・」
スピリカのポローヴェにかける願いはどうやら本物のようだ、イドは眩しいものを見るように目を細めた。
「ああ、そうだな、我々の力で、ポローヴェを進歩させるのだ」
そのための第一歩として、まずは教皇に会見し、ポローヴェへの支援を願うのだ。
作戦決行までは時間がある、イドはスピリカと別れ、教団都市の探索に出かけた。
「ふむ、いろいろな服の人がいるな・・・」
道を歩いているのは大半がヨーロピアンな服装の行商人だが、中には日本の着物を着ている者もいる。
本当にたくさんの国から、商売のためにこの街をおとずれているようだ。
人気のない公園のベンチに座り、ぼんやりイドはこれからのことを考えてみる。
スピリカとともに教皇リノス二世に会見したとしても事態が好転するとは思えない。
だが、物語の流れとしてはそれで正しいのかもしれない。
「・・・世知辛いな」
出来ればスピリカの願いは叶えたい、だが今回は失敗するとわかっていながら、先へ進ませなければならないのだ。
しばらく瞳を閉じていると、公園に誰かが入ってくる気配がした。
ゆっくりとこちらに近づいてくるその気配に、イドは瞳を開く。
「っ!」
「久しぶりですね、夜麻里緯度、いえ、ここではイド・ディケンズ、でしたか?」
赤黒い禍々しい鎧に、両手に装着された漆黒の鉤爪、全身のいたるところには毒の植物を思わせる紫の葉脈が走る。
顔は隠され、見ることは出来ず、雰囲気もずいぶん違うが、イドはその人物が誰かわかってしまった。
「お前は、流星のブレードっ!」
そう、確かに姿は随分変わっているが、高慢な瞳に全身にまとう特徴的な異邦人の気配、間違いなくブレードだ。
「今の私は破壊師団の流星のブレードではありません」
ブレードは右手の鉤爪の先から紫の液体を滴らせたが、地面に落ちるとそれはすさまじい煙を噴いた。
「っ!」
「私は武霊怒蘭(ぶれいどらん)、毒殺部隊のアコニシンの武霊怒蘭、です」
流星のブレード、否、アコニシンの武霊怒蘭はゆっくりと一礼する。
「それがお前の正体なのか?」
慎重に立ち上がり、姿勢を整えるイドの前で武霊怒蘭はわざとらしく首をすくめてみせる。
「さあ?、どうでしょうか?」
瞬間武霊怒蘭は鉤爪から毒液を放ったが、イドはそれを見切り、飛び上がった。
「ほう、また腕を上げましたか?」
「なっ!、ベンチが・・・」
イドが見ている前で毒液をかぶったベンチは、一瞬にしてドロドロになり、すさまじい煙を噴きながら跡形もなく消滅した。
恐ろしい威力の毒である、もし喰らえばひとたまりもないだろう。
「くっくっ、不死身の改造魔人ですら恐れる我が主鶏頭博士の毒、とくと味わえ」
距離をとり、またしても武霊怒蘭は毒液を噴出する。
「ちっ!、まずいな・・・」
あの毒は微かにでも喰らうわけにはいかない、だが武霊怒蘭の速度は前の流星のブレードに匹敵する速度、かなり手強い。
「・・・(アコニシンの武霊怒蘭、流星のブレードが猛毒という武力を得た存在と考えるべきか)」
ならば速度はそのまま、新たな力を得たと考えるべきだろう。
「・・・(どうする?、今徒手であることを悟らせるわけにはいかないが、なんとか切り抜けなければ・・・)」
素早くイドは身を翻すと、毒液をかわしながら様子を伺う。
「おや?、どうしました?、仕掛けては来ないのですか?」
意外そうに武霊怒蘭は首をかしげるが、どうやら徒手であることにまだ気づいてはいないようだ。
「まあ良い、ちょこまかと逃げ回っているようですが、これならどうかな?」
毒液の噴出を止めると、武霊怒蘭は口から毒ガスを吐き出した。
「な、そんなことま
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