第七話「最初のサキュバス」





なんとか夢宮邸に帰還すると、緯度は明日奈をベッドに寝かせた。



「・・・ふう」


思い出すのは破壊師団とやらの流星のブレード、今回は戦わずに済んだが、もし戦っていれば勝ち目はないだろう。



「しかし緯度、あのブレードとやらどうにも気にかかる、何者じゃろうか?」


妹喜になんとなく頷く緯度、破壊師団、そしてブレード、その正体と目的は依然として謎のままだ。


「まだまだ私も修行が足りないな・・・」


ポツリと呟く緯度に対して、こくりと妹喜は頷いてみせた。


「当たり前じゃ、妾から見ればお主なぞまだまだひよっこ、よく学び、よく戦い、強くなれ」


微かに首を振るうと、緯度は明日奈を起こさないように夢宮家を後にした。




「・・・(お休み、明日奈)」



実はこれが人間としての明日奈とは最後の対面だったのだが、緯度はそれには気付かずに自宅へと帰った。







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自宅に戻ると、すでに理梨は帰ってきており、茶の間のソファに腰掛けながら何やら本を読んでいた。


「ただいま、理梨」


一応声をかけてみる緯度だが、理梨は何も言わず、微かに本から目を上げて視線を向ける程度の反応しかしなかった。


「腹が空いたろう?、すぐに飯にしよう」


近くのスーパーで買ってきたサラダを茶の間のテーブルに並べながら、惣菜を電子レンジで温める。


「理梨?、飯にするぞ?」


温かくなった惣菜を皿に移してテーブルに置きながら緯度は理梨に声をかけたが、やはりなんの返答もない。



まあ、適当に食べるだろうと判断した緯度は、肩をすくめると炊飯器から茶碗に飯をよそいテーブルについた。


「・・・お兄、わたしも・・・」


いつの間に来たのか、理梨も席に着き、総菜を自分の前に置いていた。



「ははっ、よく食べると良い」


茶碗に飯をよそい、緯度が理梨に渡すと、微かに彼の妹はうつむき、何やら呟いてから受け取った。



「さあ、いただこうか」


手慣れた調子で箸をとり、食事を始める兄妹だが、会話はあまりない。



というよりも緯度が何か聞いても、理梨はあまり答えないといったほうが正しいのかもしれない。



「・・・(やはり嫌われているな、どうしたら良いか)」


箸を止めず、緯度は何か仲良くなる方法がないか考えてみたが、まったく思いつかない。



そもそも理梨のほうに仲良くする気がなければなんともならないのではないだろうか?



「・・・(ふむ、難しいな)」



さて、どうしたものか、これでは些かやりにくい展開になるだろう。



「・・・ごちそうさま」


考えている間に件の妹は食事を終えて、食器を片付けてしまった。


「あ、ああ、お粗末さま」


ちらっと理梨は緯度を一瞥したが、すぐに自室へと引っ込んでしまった。



「・・・やれやれ」




やはり完全に嫌われている、どんな結末を迎えるにしても妹に嫌われたままではいけない、そんなことを思いながら緯度は食器を片付け始めた。



困り顔で食器を洗う緯度ではあるが、なぜか対照的に、妹喜はにやにやと笑っていた。






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「・・・緯度、くん?」



明日奈が目を覚ますと、すでにとっくの昔に太陽は沈んで暗くなり、部屋も闇の中に落ちていた。



「あれ?、私、どうしたんだっけ?」


目をこすり思い出そうとするが、どうにも何があったのか、はっきりしない。



「・・・うーん、なんだか夢に緯度くんが出てきたような気がするけど」



最近何かと女の子と縁がある幼馴染のことを思い出し、明日奈はほんのりと頬を染めた。


窓から外を眺めてみると、そんな幼馴染が暮らしている家を見ることが出来る。


ずっと同じ場所で生きてきた、今も同じ場所にいる、それではこれからは?


そこまで考えて、明日奈は背中を冷たいものが滴るのを感じた。



確かにこれまでは同じように生きてきた、だが、今緯度はどういうわけだかたくさんの女子に囲まれ、青春らしい青春を送っている。



もし、そう、例えば慧あたりを緯度が好きになれば、どうなるだろうか?






「・・・っ!」


想像が出来ない、いずれ緯度は明日奈から離れ、他の誰かと一緒に歩んでいく、そんな日がいずれ・・・。



「あら?、随分と思い悩んでいるのね?」


かちゃり、と鍵が開く音がして、明日奈の後ろにあった窓の施錠が外された。



「・・・え?」


反射的に後ろを振り返ろうとする明日奈
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