第六話「黄昏の襲撃者」





学園を出てからもしばらく佐久耶は何も話さなかった。


おずおずと緯度を見つめては、目が合いそうになると視線を逸らすといった塩梅だ。



もう間もなく緯度の家近くになるといった辺りで、ようやく意を決したのか、佐久耶は顔を上げた。


「あの、ありがとうございます」


「・・・別に構わない、私が勝手にやったことだ、それに・・・」



緯度は佐久耶を見つめながらにやりと微笑んで見せた。



「友人を助けるのは当然のこと、人間は助け合いだ」



「・・・助け合い」



ふう、と息を吐くと、緯度は微かに頷くと、太陽が沈みゆく夕焼けの空を見上げた。



「では逢間、また明日会おう」



「あ、あの・・・」


家に入ろうとした緯度を、佐久耶は慌てて止めた。


「・・・どうかしたか?」



「え?、あ、あの、その・・・」


言い出したものの、しばらく佐久耶は逡巡していたが、緯度の優しげな双眸を見て、しっかり頷いた。



「佐久耶、です、私は、佐久耶、です」


「・・・?、それがどうかしたのか?」


いきなり自己紹介されて、緯度はキョトンとしてしまった。



「な、なんでもありません、その、失礼しますっ!」


ぱたぱたと佐久耶が立ち去ってしまい、後にはイマイチ状況が掴めていない緯度がのこった。



「・・・なんだ?、一体」


「お主も、鈍いというか、なんと言うか・・・」


呆れたように妹喜が呟いたが、やはり緯度は状況がわからないままだった。



「・・・まあ良い、緯度明日奈はもう帰ってきておるか?」


妹喜の言葉に、微かに首をかしげる緯度だが、結局何も言わずに隣の家を調べはじめた。



「・・・ん?」


明日奈の家のノブを回そうとして、緯度は鍵がかけられていることに気づいた。



「施錠されている、つまりは家に誰もいない」


ふと、嫌な予感がした、この時間には明日奈は必ず帰ってきているはずだが。


「緯度、何やら嫌な予感がする、大事に至る前に明日奈を見つけねばならぬ」



「わかった、とにかく明日奈を探し出すぞ」








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「・・・へくしゅ」


学園の体育館から出てきた明日奈は、夕暮れ時の空をぼんやりと眺めた。


「遅くなっちゃったな・・・」


実は途中までは帰宅の途についていたのだが、体育館の女子更衣室に忘れ物をしたことに気づいてしまい、それで取りに帰ったのだ。


ちょうどそれは緯度が佐久耶とバタバタしていたころだったため、二人が通学路ですれ違うことはなかった。



早く帰らなければ暗くなってしまう、明日奈は急いで学園を出た。




「・・・夢宮明日奈ですね?」


いきなり後ろから声をかけられ、明日奈は振り向いたが、瞬間頭に凄まじい振動を感じて気を失った。



「緯度、くん・・・」


下手人は明日奈を抱き抱えると、そのままふわりと飛び上がり、近くの民家の屋根に着地した。



「くくく、さて、これでどう料理しようが私の自由、ですね」







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もう空が暗くなる頃、緯度はようやく学園前に戻ってきていた。


「おや?、君は・・・」


学園の校門前には部活が終わったところなのか、射裟御縁がいた。


「たしか夜麻里、だったか、こんな時間にどうかしたか?」



「大した用事ではないのですが、その・・・」



どうするべきだ、洗いざらい話して明日奈探索の協力をしてもらうべきか?


だがそんなことをすればただでさえ変わってしまった物語の流れが余計に変わりそうだ。


「どうした?、困ったことがあるならば相談に乗るぞ?、ただでさえ君には佐久耶絡みで世話をかけているし・・・」



どうする、縁は比較的信頼出来そうだが、やはり話さないほうが良いか?



「・・・む、これはっ!?」


ふと緯度は地面に視線をうつして、とんでもないものが地面に落ちていることに気づいた。


なんとなく見覚えのある可愛らしいハンカチ、間違いない、明日奈のものだ。



「どうした夜麻里?、何やら顔色が悪いぞ?」



「いえ、なんでもありません、失礼します」



そそくさと緯度は縁から逃げるようにその場を後にした。







「怪しいな・・・」




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「まずいことになったな、すでに明日奈が敵の身に落ちていたとは・・・」



このままで
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