ベッドにサキュバスを押し倒したまま、緯度は窓の外に目を向ける。
「仲間はいないようだな?」
ふう、とため息をつくと、緯度はようやくサキュバスを解放し、窓を閉めた。
「・・・この私をここまで追い込むなんて、あなた、ただ者じゃない、わね?」
「さあ、どうかな?」
緯度は学習机の椅子に座ると、軽く肩をすくめて見せた。
「それで、なんの御用かな?」
「あなたにお礼がしたくてここまで来たの、あなたは私の命を救ってくれたのだし」
自然公園で確かに緯度は満身創痍のサキュバスを、怪しい戦闘員から救ったが、そこまで感謝されることをしたつもりはない。
「別に礼など不用だ、私は人間として当たり前のことをしたまでだ」
「あなたはそうで良くても、私はあなたにお礼がしたいの、それに・・・」
じっ、と何やら熱っぽくサキュバスは緯度を見つめた。
「このサキュバスのアルテア、あなたほどの人間、初めて見たの、魔物娘として、あなたとお近づきになりたいものね」
「はあ、左様で、してお礼とは、何をするつもりだ?」
緯度の質問に、サキュバスのアルテアは待ってましたと言わんばかりに、唇を舐めた。
「うふふ、サキュバスとしてあなたに身体でお礼をしたい、と言いたいところだけど、今はそれどころじゃないの」
アルテアはベッドから立ち上がると、窓を開いて桟に足をかけた。
「けれどあなたに楽しいお礼をするつもりだから、楽しみにしていてね?」
そのまま桟を蹴り、アルテアは夜の空に消えていった。
「・・・何をするつもりだ?」
アルテアを助けねば『サキュバス的エロゲ』の物語はそこで終わっていたかもしれないが、まさか選択肢を間違えてしまったか?
とにかくどうするかは明日考えよう、緯度は再びベッドに潜り込んだ。
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朝、緯度はまたしても窓から差し込む朝日に照らされ、目を覚ました。
「・・・ふう、もう、朝か」
ゆっくりと身体を起こすと、妹喜が何やら机の上から、窓の外を眺めていた。
方角的にあちらは幼馴染の夢宮明日奈の家があるのだが、何かあったのだろうか?
「おはよう妹喜、良い朝だな」
びくりと妹喜は九つの尻尾を逆立てながら、素早く後ろを振り向いた。
「お、おお、おはよう緯度、なんじゃ、もう起きておったのか」
ふわりと机から降りて、妹喜は緯度の肩に飛び乗る。
「さ、今日も頑張ろう」
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茶の間はまだ理梨も来ていないようで、誰もいなかった。
軽く肩を竦めると、緯度は部屋の隅にあるテレビのスイッチを入れ、トーストにパンをセットした。
「緯度よ、理梨も帰り、さらにはアルテアがこの世界にいる以上は、物語も本格始動したと考えるべきじゃな」
「『サキュバス的エロゲ』の物語ね、しかし私はこの話しがどんな結末を迎えるのかを知らない」
こんなことならばしっかりと魔物娘に関する情報を集めておくべきであったかもしれないが。
「なに、不安に思うことなぞ一つもありはしない、このクロビネガの常連たる妾、妹喜がおるのじゃからな」
かっかっか、と上機嫌で笑う妹喜、それに対して緯度はどんよりとしている。
「とにかく、『士魂』の一員としてやれることはやるつもりだ」
パタパタと外で足音がして、鍵を開けていた玄関から誰かが入ってきた。
「おっはよう、緯度くん」
「おはよう明日奈、今日も良い朝だな」
にこりと笑いながら明日奈は茶の間に入り、緯度の前に座った。
「ね、ね、昨日理梨ちゃん、帰ってきたんでしょ?」
「ああ、まあ、あまり話しは出来ていないがな」
ふと時計を見ると、もう朝の七時だ、そろそろ起きねば遅刻するのではないだろうか?
「ふむ、理梨の奴を起こしてやるか」
階段を登り、緯度は理梨の私室に行くと、扉をノックした。
「理梨?、朝だぞ?」
返事がないため、今度は先ほどよりもやや強くノックしてみる。
「理梨?、入るぞ?」
がちゃりと扉を開けて中に入ると、ベッドでまだスヤスヤと眠る理梨に目がいった。
「やれやれ、理梨?、ほら朝だぞ?」
「むにゃ、お兄ちゃん・・・」
ゆすろうとすると、突然緯度は右手を掴まれ、そのままベッドに引き込まれてしまった。
「あ、こらっ!、理梨っ!」
「んふふ、お兄ちゃんの匂い・・・」
なんとか抜け出そうとするが、どうや
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