妹喜の誘導に従い、自然公園の片隅にまで走ると、信じられない光景を目の当たりにすることになった。
「魔物娘かっ!」
ゼイゼイと肩で息をするのは、悪魔のような翼にねじくれた角、間違いなく魔物娘のようだ。
だが今魔物娘は周りをあやしげな黒装束の戦闘員に囲まれ、絶対絶命の危機に晒されていた。
「緯度、あの娘を救うのじゃ」
「言われるまでもない、魔物娘に狼藉を働く者を許すわけにはいかない」
瞬間、妹喜の魔力により、緯度の武装が召喚された。
鉾を握ると、緯度は大きく飛び上がり、魔物娘の前に立った。
「っ!、あなたは?」
「私は緯度、義に応じて助太刀する」
無言でナイフを構え、緯度に襲いかかる戦闘員。
だが、『士魂』の一員として厳しい訓練に耐えた緯度の敵ではない。
鉾の一突きで戦闘員の動きを止めると、そのまま地面に叩きつけた。
「っ!、凄いわ」
またしても戦闘員が、今度は二人まとめてくる、しかし緯度は慌てずに『菊水』を引き抜くと右手と左手の武器を交互に振るい、戦闘員二人の攻撃を止める。
「舐めるなよ?」
鉾を返して片方の戦闘員に裏拳をかますと、そのまま『菊水』からウォーターカッターを放ち、二人とも両断した。
またたく間に戦闘員を三人無力化したが、まだまだ戦闘員は多く、ぞろぞろと手にしたナイフを構えながら近づいてくる。
「・・・きりがないな」
「ならば、あれじゃ」
妹喜の言葉に頷くと、『菊水』を腰に納め、鉾を構え直す。
「八咎一閃っ!」
鉾の一閃とともに凄まじい量の蔓があふれ、一瞬にして戦闘員たちを飲み込んでしまった。
「これで、終わりか?」
周りを簡単に見渡す緯度、敵の気配は感じられない。
「うむ、もう大丈夫なはずじゃ」
武装を消して元の制服姿に戻ると、緯度は満身創痍ながら、なんとか立っている魔物娘に視線を移した。
「あやつはサキュバス、魔界を原生地とする上級の魔族、淫魔とも呼ばれる最も一般的な魔物娘じゃ」
あらゆる魔物を統べる魔王がサキュバスになったことで、全ての魔物娘がサキュバスに近い性質を持ったらしい。
つまり雌しかいなくなり、どんな魔物娘も可憐な少女の姿になったというわけだ。
「助けられちゃったみたいね、貴方に・・・」
ふふっ、とサキュバスは微笑むと、軽く瞳を閉じて魔力を集中し、身体の傷を治した。
「私の命を救ってくれたことは忘れないわ、本当にありがとう」
緯度に一礼するとサキュバスはいずこかへと飛び去っていった。
「ふむ、なんとかなったようじゃな」
いつの間にか倒した戦闘員も消滅している、まるで最初から何もなかったかのようだ。
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「『サキュバス的エロゲ』にこのような戦闘員がいたという話しはない、すなわちこの世界の他所から介入があったということじゃ」
バス停でまたバスを待ちながら、妹喜はそう緯度に告げた。
「ふむ、仮にそうだとして、目的はなんだろうか?」
緯度はなんとなくそう呟いてみて、一つ気がついた。
「・・・あのサキュバスがもしこれからこの世界で何かするならば、今消された場合、それが出来なくなる」
妹喜の話しによると、これからこの世界では、異界のサキュバスが様々な人間をサキュバスへと変えていくらしい。
もしあのサキュバスが件のサキュバスであるならば、もし今戦闘員に消された場合は、誰もサキュバスにならなくなる。
結果として定められた結末には繋がらなくなり、この物語は『サキュバス的エロゲ』は物語として成り立たなくなる。
「・・・もしや奴らの目的は、物語を改竄してしまうことか?」
緯度の言葉に妹喜は微かに頷いた。
「十二分にあり得る話しじゃ、誰がそんなことを考えておるかは知らぬが、結末なき物語は物語として成り立たぬ、それを何者かは狙っておるのやもしれぬ」
とするならば、これから先も、それこそ結末が確定するまでは妨害があると見たほうが良いだろう。
「うむ、物語の結末を消滅させての改竄なぞ許されぬ、妾もなんとか力を貸す故に、主人公たるお主が、物語を結末まで導かねばならぬじゃろうな?」
一応緯度は頷いてみせたが、どうすれば良いのか、それはわからないままだった。
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空港に辿り着くと、緯度は理梨が来るらしいゲートの近くで待っていた。
「良いか?、お
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