気づくと緯度はどこかの部屋のベットに横たわっていた。
「ここは?、私は、どうなったのだ?」
外からは朝の日差しが差し込んできており、明らかに霧の中の図書館とは違う場所、違う時間にいる。
そうだ、たしか図書館から出ようとして、扉を開いたら・・・。
緯度は部屋の片隅にあるクローゼットをぼんやり眺めた。
「状況がまったくわからん、ここは、どこだ?」
身体を起こすと、自分は青いジャージを履いて、タンクトップでいたらしいことに気づいた。
学習机の上には卓上カレンダーがあり、何日かは不明だが、現在は四月であることがわかった。
「馬鹿な、今は四月ではない、どうなっている・・・」
あまりのことに頭がおかしくなりそうだったが、直後何者かがドアをノックした。
「おっはよう緯度くん、今日も学校、頑張ろうね」
向こうから聞こえてくる声に、緯度は反射的に声を返していた。
「おはよう明日奈、良い朝だな」
もちろん緯度は声の主が誰かわからない、にもかかわらず、わかってしまった。
「・・・(明日奈、そうだ、彼女は夢宮明日奈、私の幼馴染・・・)」
そして己は西純高校二年生の夜麻里緯度、そんな記憶はなかったはず、にも関わらず頭に記憶が浮かび上がった。
本来ならばじっくり考えているところだが、状況が悪かった、明日奈がどんどん扉を叩くため、それどころではなかったのだ。
「・・・とにかく、着替えるか」
素早く緯度は近くにあった制服に着替えると、扉を開いた。
そこには小柄な体躯に、短い髪、赤い制服の美少女がいた。
「・・・夢宮明日奈」
「うん?、どうかしたの、緯度くん」
思わず本名を読んでしまい、怪訝そうな顔をされてしまった。
「なんでもない、飯にするか?」
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「今日だね?、理梨ちゃんが帰ってくるの」
居間のテーブルでトーストを齧っていると、向かいに座って紅茶を飲んでいた明日奈が、そんなことを言っていた。
「理梨、ああ、私の妹か・・・」
「・・・緯度くん?、ひょっとして寝ぼけてる?」
寝ぼけてるはずがない、現在緯度はこれ以上ないくらいに気を張り、さらにはどんな状況なのかを把握しようとしていた。
「いや、まあ、そうかもしれんな、マイシスターのことを忘れているとは・・・」
「もう、しっかりしてよ?」
困ったように笑う明日奈、とにかく状況はさっぱりわからないが、行けるところまで行くしかあるまい。
「さ、そろそろ時間だよ?」
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学園への道も把握出来てはいなかったが、記憶の中には残っているようだ。
一体我が身に何が起こっているのかは依然としてわからないままであったが、どうやら生活に困ることはなさそうだ。
「・・・くん?、緯度くん?、聞いてる?」
考えごとをしていたためか、明日奈の言葉にまったく気づかなかった。
現在彼女は後ろ向きに歩きながら、こちらを覗きこんでいる。
「え?、あ、ああ、少し考えごとをな」
誤魔化すように手を振るうと、後ろからパタパタと足音が近づいてきた。
「おっはよー、緯度」
いきなり後ろからがばっ、と抱きつかれ、危うく緯度は前のめりに倒れるところだった。
「っと、危ないな慧」
ショートヘアに小柄ながら鍛え抜かれたしなやかな四肢、同じクラスで陸上部のエース戌井慧だ。
「私でなければ転んでいたぞ?」
「緯度以外にはやらないから大丈夫だって」
ぴょんっと緯度の背中から降りると、慧は手を上げるとまた学園に向かって走り出していった。
「あ、あははは、相変わらず元気な娘だね?」
「元気が有り余っているな、さすがは陸上部のエースといったところか?」
それにしてもああして走る様はカモシカか何かというよりも、小柄な、そう例えるならば・・・。
「子犬だな」
ふふっ、と一瞬だけ笑うと、緯度は明日奈とともに、ゆっくりと学園へと向かっていった。
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割と退屈な授業が終わり、ようやく休み時間、物珍しさも手伝って緯度は一人学園内をぶらぶらと歩いていた。
「・・・(ふむふむ、随分と懐かしい気分にさせてくれるな)」
そのうち適当に歩いていると、いつの間にか図書室
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