神の戦車メルカバー、ゴルゴスが建造した完成型のプルガトリウムとも呼ぶべき巨大な移動要塞。
その主砲は四天王による結界すらも破壊して京都ボルテクスを地上へと呼び戻した。
遮那たちはこの超兵器を沈黙させるべくカテドラル屋上の戦艦プルガトリウムに集結、策を練るのだった。
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カテドラル屋上プルガトリウムの艦橋、スクリーンにはミカドの都国の上空に浮かぶ巨大な移動要塞が写っている。
神の戦車メルカバー、その姿だ。
「神の戦車メルカバー、現在のところ動きはないけれど、いつまた動き出すかはわからないわ」
ミカエルの説明に、遮那は頷く。
「あれを破壊しない限りこちらに勝機はない、どうすれば良い?」
メルカバーの主砲による一撃は容易く四天王の結界を破壊し、挙句京都ボルテクスを解除してしまうほどの威力。
直撃でもしてしまえば、国家の一つや二つは確実に蒸発するだろう。
「メルカバーは主砲を打つ間正面のシールドは解除される、主砲を照射している間にシールド発生装置を破壊出来れば攻撃出来るようになるわ、問題は・・・」
メルカバーの主砲は強力である、まず当たれば無事では済まず、囮になる者は確実に助からないだろう。
「とにかく可能な限り長時間主砲を照射させ、続けざまにシールド発生装置と主砲を破壊する必要があるわ」
しばらく一同黙り込んでいたが、しばらくして遮那は閉ざしていた瞳を開いた。
「私の防御障壁を最大にまで展開すれば十秒ほどならば耐えられるはずだ」
「遮那さまっ!?」
明らかに危険な任務に志願しようとしている遮那、真由は悲鳴じみた叫びを上げたが、今更止まる遮那ではない。
「サナト、貴方死ぬつもり?、仮にある程度は耐えられても、メルカバーの主砲は強力、場合によっては消し飛ぶわよ?」
ミカエルの追求に、遮那は軽く手を振る。
「話しは最後まで聞け、プルガトリウムにもメルカバー同様に無限動力炉ヤマトが搭載されている、ここからエネルギーを供給すれば障壁はメルカバーの主砲並みには強化出来るはずだ」
前にミカエルがやって見せたように、無限動力炉ヤマトからエネルギーを取り込めば一時的に力が上がる。
これを障壁に転用すればメルカバーの主砲に耐えられるはずだ。
「メルカバーの足止めはそれでなんとかなる、その間にみんなで力を合わせてなんとか神の戦車を撃墜してくれ」
もしメルカバーの撃墜が間に合わず、プルガトリウムの無限動力炉ヤマトが限界を迎えればどうなるか、それが想像できない遮那ではない。
だが、遮那はここまできた仲間を、かつての敵を信じていた。
信じているからこそ、自らもっとも危険な任務に志願することが出来たのだ。
「うむむ・・・」
遮那の説明にガヴリエルは少しだけ考え込む。
「しかし、メルカバーの主砲とプルガトリウムのエネルギーを計算に入れてもサナトが耐えられる時間は僅かしかない、下手をすれば副砲や艦載機による攻撃を受ける可能性も」
防御を全て正面に回している以上それ以外の場所には脆弱にならざるを得ない、真上や真下から攻撃されればひとたまりもない。
「それは私たちグリゴリがなんとかするよ」
ルシファーはにこやかに頷いたが、その視線は鋭く、遮那に向けられている。
「サナトお兄ちゃんはメルカバーの主砲を捌くことだけ考えてれば良いよ?」
「・・・助かる」
短く呟く遮那だが、その表情には微かに笑みが浮かんでいた。
天使、魔物娘、人間、共通の脅威に対して共に戦えることが嬉しいのだ。
「・・・意見は出尽くしたみたいね」
ミカエルはそう告げると、ふう、と軽く息を吐いた。
「そうなればプルガトリウムを制御し、遮那さまを手助けする助手が必要です」
真由の言葉に、遮那は目つきを厳しくした。
「・・・必要ない、私一人でなんとかなる」
「いえ必ず必要になります、そしてそんな危険な役目はアンデットである私以外にはあり得ません」
しばらく遮那と真由は見つめ合っていたが、やがて遮那は瞳を閉じた。
「何を言っても無駄だな?」
「当たり前です、どれくらい遮那さまは私と一緒にいるのですか?」
「では、好きにしろ」
遮那が破顔した直後、艦橋内部に警報が鳴り響いた。
「・・・メルカバーが動き出したみたいね」
ミカエルの言葉に遮那らは歯をくいしばる。
「作戦を開始するわ、各員に主神さまのご加護があらんことを」
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