『サナト、サナト・・・』
眠りの中、遮那は光溢れる空間で、メタトロンの声を聞いた。
「遮那さま?」
よく見るとすぐ隣に真由もいる、眠りの中またしてもメタトロンが意識をつなげたのか。
『サナト、マユ、良くやってくれた、これでこの世界の均衡は保たれる。
神の統治による千年王国、確かに法や規律は必要だけれど、縛られてばかりいてははばたけない。
魔王の支配する世界は魅惑と享楽に満ちているけれど、絶えず定まらず、留まることはない。
どちらが優ってもならない、何よりも調和が大切だったの。
人間の未来は神や魔物娘、どちらにも傾き過ぎず、自分たちの手で見つけていかなければならない』
そうか、中庸の道、秩序の体現であるミカエル、混沌の代表ルシファー、双方ともに倒した今、ようやくその道が開かれたのだ。
『見えるかしら?、感じるかしら?、あなたたちは『大地(ガイア)』の一部であり全てでもある、秩序も混沌も全て、そこに含まれるの』
感じる、素粒子の流れも、宇宙のコトワリも、真由の胸の鼓動も、みな・・・。
『荒れ果てた世界にはまだまだ方向を見失ったひとがたくさんいる、この世界を、頼んだわよ?』
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夢から目覚めると、遮那はカテドラルの医務室にいた。
すぐ隣の椅子には真由が腰かけながらベッドに突っ伏す形で眠っており、時折「にゅふふ・・・」と笑みを浮かべている。
「・・・ふう」
軽く息を吐くと、遮那はベッドから立ち上がり、すやすやと眠る真由の頭を撫でた。
「・・・(いつもありがとう、真由)」
「にゅふふ・・・、遮那さま、もう食べられませんよ」
なんの夢を見ているのかは不明だが幸せそうだ、遮那は起こさないようにそっと彼女の隣を横切り、医務室から出た。
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カテドラルのバルコニー、一人遮那はぼんやりと奈落の塔を眺めていた。
ミカドの都国、グリゴリ、秩序と混沌の戦いもなんとか終わり、後は京都ボルテクスを解除して元の世界に戻すのみ。
「・・・(しかし、何だろうか?、何やら嫌な予感がする)」
今や京都ボルテクスに急進的な勢力は存在しない、にも関わらず、何故か嫌な予感がするのだ。
そう遠くない未来、京都ボルテクスは解除されて元の世界に戻る、もう何も恐れるものはないはずだが・・・。
ふと、遮那は気配を感じて後ろを振り向いた。
「ルシファー、か」
そこには瑠衣の姿をとりながらも、背後から黒い翼を生やしたルシファーがいた。
「はろー、サナトお兄ちゃん、元気?」
つい先刻カテドラルの屋上で死闘を演じたばかりだが、どうやらルシファーにとっては大した問題ではないらしい。
「本当にお兄ちゃんは強いよね、お兄ちゃんのコトワリは、もう極められているのかもしれないね」
「ルシファー、一つ聞きたいことがある、私の力のことだ」
ミカエルとの戦いで力を求めた結果、ルシファーは様々なコトワリを勾玉の形にして遮那に与え、修羅人へと変容させた。
彼女ならば、人間に戻る方法も知っているのではないだろうか?
「戻ること自体は出来るかもだけど、どうして戻りたいの?」
常人をはるかに上回る身体能力に優れた魔道の実力、にも関わらずそれを放棄して普通の人間に戻ろうというのだ。
「ルシファー、人間による道が開かれた以上私もこの世界に生きる以上、人間に戻り生きていく」
修羅人は人間でもなければ魔物でも神族でもない別種族、この世界で生きていくべきではない。
だからこそこの世界で生きる以上遮那は人間に戻り、真由とともに生きていきたいのだ。
「コトワリを放棄して力を解き放てば戻れるはずだよ、そうすれば世界も修復出来るかもだけど、タイミングを選ばないと」
「タイミング?」
「そ、人間に戻るのはいつでも良いけど、脅威があるなら、タイミングは考えないとね?」
脅威?、ミカドの都国とグリゴリ、二つの勢力が協力する結果になった以上もう敵対する者はいないはずだが。
「何が起こるかわからないし、少なくとも京都ボルテクスが解放されるまではそのままの方が良いんじゃないかな?」
「・・・戻れる、というのがわかっただけ良い」
魔物娘は人間に戻ることは不可能だが、どうやら遮那はまだ戻れるらしい、少しだけホッと胸を撫で下ろす遮那。
「
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