「やっぱりここにいたか」
城壁通路の縁に腰をおろして酒を飲みながら、ゲンドーシ川の先にある地平線に沈む夕日と主戦場である荒野を眺めていると、後ろから声をかけられた。
知ってる声だからとくになんとも思わない、後ろを振り向かず、右手を軽く振った。
すると、声の主―トウギは隣に腰をおろし、俺の隣に置いてある徳利の酒をそのまま飲む。
直後、思いっきり咽た、人の飲んでる酒を取るからだ、ざまぁみろ、あと何か器に入れろ
「体の調子はどうだ?」
「…珍しいね、セルセが心配するなんて」
ごほごほとせき込みながらも御覧の通りですよ、と腕を広げて見せた。
服はいつもの騎士団服だが、裾や胸元から包帯が巻かれているのが分かる、やはり軽傷ではすまなかったか、なんだか俺一人だけが回復するこの能力がなんだか今は申し訳ない気がする。
前の戦いでトウギは傷を負った、衛生兵の話だと全身がボロボロらしい
だが、寝るのが最善の治療という『強化装甲』の異端者は特殊な体質でもあるため、昼間も夜間も殆ど寝てばかりいる
…………そういえばまともに話すのは、砦を取り返してから初めてか
「ふぅ、やっぱりジパングの酒はうめぇな」
椀に酒を注ぎ、飲みながら、やっぱりうまいというのが感想だ。
なんでも芋焼酎というらしいが、トウギの口には合わなかったらしい
トウギは口直しに懐から煙草を取り出すと、軽く術を行使し火をつけ、うまそうに吸っている。こいつは酒はだめだが煙草は好きだからな、煙草の方が子供に嫌われるのに…
なんとなく、あまりにもトウギがうまそうに煙草を吸うから俺もほしくなった、一本トウギから煙草をもらい吸ってみたが、やはりだめだ、思いっきりむせた。
俺がむせるのを見てしかえし成功、とばかりに笑った。
たく、口直しにもう一杯酒をあおる、やっぱりうまいな
「なにかあったの?」
そんな俺の様子を見て、いつも違うということにトウギは気が付いた、普段であれば何でもないで済ますのだが、今日は少しばかり応えた
「………………捕虜の整理やったんだがな、疲れたな」
「…………あれやったの?」
頷く、精神も何もかもあちら側に行けたらいいのにな
捕虜の整理、<薄氷協定>では捕虜について大きな規定がない、例外として一部士官などは交渉で捕虜交換などを行える、そのためある程度、士官などについては権利なども認められている
これは人間側にとって重要だ、仮に苦労して捕虜となっている王族や指揮官などを交渉で取り返しても、その王族や指揮官が魔物化し、逆に人間側に反旗を翻してしまってでは意味がない、一部士官などに権利を認めることによって魔物どもが手を出すことを防ぎ、それによって魔物化を防ぐのだ。
しかし、それ以外の一般兵などには規定はない、交渉にでも使えればいいのだが、連中はどういうわけか一般兵の捕虜交換などについては応じないから、捕虜交換交渉の道具にもならない。
つまり、一般兵の捕虜については煮るも焼くも好きにしていいということだ
魔王軍だったら人間を捕虜にした際、繁殖の道具にする、だが、人間の場合そんなことしたら新たな魔物作り出すだけだ、そして、捕虜を全員養えるほど食料もないし、労働力として使うも、連中は逃げるか、さぼる。痛めつけることを一部喜ぶ魔物もいるから、体罰もそれほど効果もない、つまり魔物にただ飯を食わせることになる。
ここから合理的な答えを導き出すなら、捕虜の整理、つまり、捕虜を殺すのだ
これは<薄氷協定>違反でも何でもない、最前線では日常的な行為だが新兵どもに少しでも慣らすためにやらせることがある
逃がしてしまえばいいのでは?という意見もあり、<薄氷協定>締結後、それが幾つかの領地で行われたこともあったらしい、だが、それが連中の罠だった
魔物どもは狡猾で卑怯な策ばかりとる、まぁ、そういう連中を策士とも呼ぶが、何があったのか?
なんでも逃がした魔物どもは砦や城の近くの町の住民をたぶらかし、そこに住んでしまった、そして魔物どもが陰でこっそりと増殖していき、気がついた時には、反魔派から親魔派に変えるように反乱などの扇動を行っていたらしい、だからといって奴らを魔界に送り返す義務はない
だが、交渉の道具にもならない連中を生かしておく必要はない、つまり殺すのが一番の方法なのだ。
今日もそれがあった
「…今さらじゃない、セルセ。そんなことで悩んでどうするの?」
そうだ、それだけでは問題ない、俺も何度もやったからな
今さら魔物ども殺してもとくに思うことは無い
「…トウギ、おととい、新しい部隊合流しただろ、て、お前は寝てたか」
魔王軍から砦を取り返してからすでに五日が経
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