眼の前に風の壁ができている。
俺の前に立つ異形の鎧―基調は白だが、所々つなぎの部分が灰色の鎧だ。
だが、ただの鎧じゃない。鎧のつなぎ目によく目を凝らすと、つなぎ目が発光し、淡い白色に輝いているが、少しでも離れると灰色にしか見えない。
シルエット的には全身が何も凹凸のない、曲線的なデザインの鎧、特徴といえば肩が異様にでかい、あそこまででかいと邪魔じゃないかと思う。
顔にはフェイスマスクをかぶっている、いや、どちらかといえばマスクと言うよりも顔面用の鎧だ。
本来、フェイスマスクは人の顔を摸しているが、それは人の顔を摸してなどいない。こいつが摸しているのは、蜻蛉だ。
眼がある場所には、昆虫のような赤く輝く巨大な複眼(蜻蛉みたいだ)がついているし、口もあのなんとも言えない牙のような歯が生えている蜻蛉の口そのものだ。
騎士団の鎧はジパングの兜のような鍬形のような飾りに似た角のようなものがあるが、こいつにはそれが無い、基調が白ということもあり、髑髏のようにも見える。
だが、何よりも異色なのは、奴のベルトだ。
ベルトには体の正面に巨大な宝石のように白色に輝いている石が埋め込まれ、鎧のつなぎ目の光と連動して光っているようだ。それと、体の側面左右に、正面に埋め込まれた石よりも小さいが石が埋め込まれているが、こちらは光ってはいない。
こいつの名前は、トウギ(75の意味)
同じローグスロー騎士団の一員で、同じ異端者
俺と同じ時期に騎士団に入った数少ない同期、甘ったるフェイスの持ち主で、ラヴェ・カイエンなどに行っても俺と違って人気者だ。
人気者の理由は二つ、前述の通り優男の顔を持っているので女性に人気、そして、もう一つが奴の能力のお陰だ。
今奴が来ている鎧は、騎士団から配給されるものではない、自前か、といえば厳密には違う、いや、鎧を纏ってすらいない。なんたって、今纏っている鎧が能力そのものだからだ。
能力名は『強化装甲』
その名の通り、個人によって異なるポーズを取ることによって、召喚した鎧を身にまとい戦う戦士だ、しかし、この能力の最大の特徴は鎧ではない、いや、むしろ、鎧も相当な防御力があるが、それには遠く及ばない。
最大の特徴、それは身体強化と彼らしか使用できない特殊術式を利用した一撃必殺技
本来魔物と戦うのは武器などを用いるが、身体強化は素手で魔物とやり合える力を彼らに与え、これで雑魚なら一掃できる。
そして、特殊術式を利用した一撃必殺、これはかなり強力だ。
なんでも個人によってその術式の発動形態は違う、蹴りや殴って発動させる者や召喚した銃や剣などで切り裂いて発動する者、個人によって違う、だが、 共通しているのはなんでも魔物の中にある魔力を暴走させ、爆発のエネルギーに変化させるというもの、つまり、魔物が食らえば食らった魔物を爆殺させる一撃必殺。たとえ、リリムだろうがバフォメットだろうが殺す、最大術式
だが、弱点も多い。
魔物が弱っていない状態でないと効果が出ず、その為、身体強化の肉弾戦である程度まで弱らせて倒すのが彼らの戦術だ。
この技術を応用すれば、人間と魔物が互角に戦えるかもしれないが、彼らの特殊術式は不思議なものらしい、何度も術者などが彼らの特殊術式を解明する努力をしたが、なんでも彼らに共通する同じデザイン、形などはないが、皆でかいベルトを変身すると装着する、その装着したベルトから力を得て発動するため、通常の人間は不可能らしい。
だが、町などの子供にはこの鎧やベルトのデザイン、鎧を召喚し着用する際のポーズは人気だ。
前に町の祭りで露天商がきて店をやっていたが、その際にこいつのフェイスマスクを摸した仮面まで売ってた…いつ商品化したんだ……
稀に『強化装甲』の異端者は、大都市まで行って握手会や子供に見せる舞台などをやってる…最近では収入財源の一端にもなってるから修練場の一画に練習用の舞台部屋まであった。
つまり、子供心をがっちりと掴んでしまったために人気があるのだ。
まったく、俺の力は化け物だって石投げつけられるのに…正直うらやましい
とにかく、こいつの登場はイレギュラーだ。
あまりの出来事に、一瞬我を忘れていた。
風の壁が弱まり、魔物どもが見えてくる。
そして魔物どもはトウギの後ろで何か言っている、あ、そういやまだ戦いの最中だった。
トウギは安心しろといった風に何本か背中に刺さっていた矢を抜く、っつ、もうちょい優しくしてくれ………
そのあと、トウギは立ち上がると、まるで、自ら軍勢を、魔王軍と同じかそれ以上の軍勢を率いている指揮官のように、堂々と対峙した。
魔王軍はいきなり表れたトウギに困惑しているようだ。
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