「逆襲」

 魔王軍<陸軍>オルフェルド方面隊は多大な損害をだした為、現在は僅か二個大隊(約1200名)程の魔物がローグスロー騎士団の砦となった城を占領し、本来魔王軍は魔物の種類ごとに大隊は編成されるが、それができないほど先の戦いで損傷してしまったために、混成大隊を一時的に編成、それによって戦線を維持している。しかも、頭数には戦闘を行える負傷兵も混じっているため、実際は戦力としては大分低いことは予想できる。

 城壁の内側、外庭の一画にある天幕の中では生き残った将校たちや編成部隊の大きな割合を占める種族の部隊長、それと3人の魔術兵が簡易机を囲んでいた。
 しかし、将校と言っても、七人しかいない。それも将校といっても殆どが兵学校を出たばかりの士官たちと、本来ならば攻城戦、平野戦には向かないオークなどの所属による部隊などの部隊長など、はっきりいって、彼らには向いていない仕事だ。

 しかし、現在部隊を指揮、運営できるのは彼らしかいない。なぜなら、先ほどの戦いでは多くの将校が戦死または負傷、戦線を離脱してしまい、新米の士官たちは戦場の後方で援護を行っていた。

 だが、何度か敵が少数で背後から奇襲攻撃を行ったため、その時、部隊に被害も出たが、前線で指揮を執っていた将校よりも戦死・負傷した将校の数は少なかった。
 そのため、前線で戦っていた部隊よりもかなり損傷率も低く、再編も可能である隊もある、兵と将校が生き残っただけでも御の字である。


 無事な将校で最も階級が高く、現在、二個大隊を指揮しているデュラハンのカミンティ・ノッグレス少佐であった。
 少佐は目の前に机に広げた紙に城の見取り図を見ていた。

 本来ならば、城の焼け残った天守か主塔の一室でも使いたかったが、城に入ってから城中に仕掛けられた罠があちこちで作動し、天守や主塔も例外ではなく、すでに天守の中だけで16人が死んでいる。そして、また爆発がどこかで起こり、その振動が天幕の中に伝わった。

 しかし、部隊を指揮しているカミンティ少佐は多少の振動に気がつかないほど、疲れ果てていた。
 頬がやつれ、眼の下には大きな隈ができ、本来の髪は艶と張りがある銀髪であるが、ぼさぼさで、土煙りにまみれ、外見からも疲れている様子が分かる。

 カミンティ少佐はまだ31歳ほどの若い魔物であったが、すでに魔界にある東部の一画を治める貴族の当主であり、その貴族としての血には僅かながらに先代の魔王の血が混じっていた。そのおかげで、出世できたことを彼女自身自覚していたし、部下からも無能な指揮官、という評価を受けていることも分かっていた。だが、今まで思ったように戦果が出せなかったことも事実であり、焦りがあった。

 撤退した方面軍指揮官、軍団長グレンテァ中将の命令は、援軍が到着するか撤退命令がくるまで城を掌握し戦線の維持であったが、城中は罠だらけで、しかも、迷宮のように複雑(わざと迷宮のようにデザインされて作られたのではなく、城の増築、改修箇所が至る所に見れるため増築を重ねたために迷宮のようになってしまったのだろう)、現在、この城の中を部隊が通路などを調べ、見取り図をつくっている。(なぜ、見取り図を製作しなければいけないかは後述する)

 しかし、任務の城の掌握どころか、城に駐留しているだけで罠によって兵力減衰による戦線が構築不能になり撤退、というわけのわからない状況に陥る可能性すらあった。
 
 もしも、そんな状況になれば指揮しているカミンティ少佐は左遷で済めば良いが、貴族階級としての剥奪、お家お取りつぶしという知らせが届くかもしれない。

 もしも彼女が民衆出身ならば、そんなこともないのであろうが、魔界の大領主でもあるため、軍内部での権力闘争が激しく、少しでも彼女を蹴落とす機会を狙っている者たちにとって、彼女の失敗は格好の餌でしかない。
 それだけは何としても避けなければならない、焦りながらも城の見取り図をつくって城を掌握する必要があったのだ。

 ちなみに、城の見取り図の作成にあたっては、今も城を索敵している部隊の前世紀のような伝令の報告がメインだ。魔界であったなら、通信用の魔術などを使って交信を行い、逐一情報が更新できるのだが、先の戦いで魔術兵の多くは前線に配置されたため、戦死。
 大隊にも生き残った魔術兵はいるものの、先ほどの戦いで魔力を損耗し、戦いが終わってから天幕の中で横になって寝ていたが、完全に回復するまであと10日程かかるため、よほどのことがないと使うことができない。
 
 いや、そもそも、魔術兵の人数も4人、それに魔界と違って、人間界には空気中に魔力があふれているわけではないから使える魔法も限られてしまい、魔力の消費量も段違いである為、どの道使えない。
 それに一人は外庭に陣を張る際、無理をして罠
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