「希望」

 9キロ程離れた場所からでも城の被害状況は確認することはできた。
 半分ほど城は焼け崩れ、修練場などや、天守も兼ねた宿舎なども殆ど無事なこところはない、石造りで高さ10間(約18メートル程)の城壁がしっかりと残っているが、途中途中土台部分まで崩れている、一応砦として機能することは可能だが、殆ど廃墟に近い

 いや、何も手を施さなければ、あと半年もすれば本当の廃墟になるだろうな…

 無論生存者などは絶望的だ、堀にはまだ魔王軍も回収できなかった魔物の死体も何十体も浮かんでいるはず
 あと数日もすれば腐乱が始まり、腹にガスがたまってしばらくは浮かんでいる、だが、そのあとは沈み、死体は回収しない限り浮かんでこないのだ。

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 昨夜の戦闘でリザードマンの首を取った後、朝になるのを待って、普段ならば親魔派の領地に行く行商人などが通っているダイレガ街道にでた。


 よく、親魔派の領地と反魔派の領地は他国のように思われているが、領地政策が異なるだけで同じ国家領土であり、国全体の税率や国として発布する法などは基本的に同じだ。反魔派と親魔派だからといって道が断絶しているわけでない

 しかし、何度も俺たちが魔王軍と戦っているのは有名だから、わざわざそんなルートを通る行商人はなかなかいない。

 途中途中でローグスロー騎士団に所属している騎士の武器を見つけると、ル・ガンツテァの文字が書かれた柄や石突きなどを剥がして回収した。

 ローグスロー騎士団の団員が使う武器には、使い手が魔物に精神が近くなればなるほど、刀や剣であれば刀身が赤く染まり、弓や銃などであれば放った矢や弾などが赤く染まる。
 赤くなればなるだけ、武器の威力が上がるが、魔物化してしまうことを防ぐため、魔物化すれば持ち主を殺す術式が強制発動するような仕組みがある、それと、もう一つ武器に仕掛けられている術式がある。

 それは、俺が回収した武器を見ればわかる。
 
 どの武器もボロボロに錆びており、何十年も屋外に放置されたかのようであるが、柄や石突きなどのル・ガンツテァが施された装飾品の部分は朽ちてはおらず、新品同様である。
 
 これは、敵に回収され、敵が使用することを防ぐためであり、また、このル・ガンツテァの名を刻んだその武器の使い手の生死を確認するためである。
 つまり、武器の持ち主が死ねば、真の名が刻まれている部分を除き、錆ついて朽ち果ててしまう術式が施されている。

 この武器を見つけたら、その真の名が刻まれた装備品を回収する。そして、その装備品を城の近くにある見晴らしがよい丘の共同墓地に埋めるのが習わしだ。

 ちなみに、共同墓地と名であるがその場所には人間の遺体は埋葬されていない。
 埋まっているのはこの装備品だ。

 本来ならば、教団の教えに従っての葬儀ならば土葬であるが、領内地で土葬は禁止、一般人でも火葬して、遺骨を墓に埋葬するのだ。
 なぜなら、アンデッド型やゾンビなどの魔物は死体から生まれてしまうために死後の人間の魔物化を防ぐことが狙いだ。理由はそれだけではないのだが。

 魔王が魔物を生み出す、としているが、一部の魔物にそれは当てはまらない。
 たとえば、上記のように発生するアンデッド型の魔物に関して問題があるのは教団だ。

 アンデット型の魔物などは人間の死体が魔力を吸収して誕生する、しかし、遺体を残さない火葬にすればある程度は防げるのだ。(人骨からスケルトンが生まれると反論できるかもしれないが、その類の魔物は魔王の魔力などでしか発生せず、反魔派の領地ではとても珍しく、殆どないといってよい)
 なのに、教団が説く葬儀法は土葬、死体と骨では反魔派であろうと魔物になる確率が全く違う。

 というか、教団は魔物を敵視しているのにその教えの一部は魔物の発生を助長している。全く理にかなっていない。
 魔物を敵とするならするで多少教えを捻じ曲げてもいいだろうし、どうとでもすることができるはずなのに教団の連中はそれをしないのだ。
 …まぁ、最も降りかかる火の粉は全力で消す、といのが俺の信条なわけで、教団は魔物ごときには本気にはならない、という余裕か、それとも強がりなのだろう。生娘が思い描くような、全く非現実的なことだ。
 俺は教団を敵視しているからかも知れないが、教団の連中の考えていることは分からない。

 ま、俺が教団の評価に厳しいのは、この領地が教団の影響力が少ないことが影響にはあるだろう。


 かつて、教団は人間界の頂点に君臨していた。国政権も事実上、教団のものであった。
 各国の王の権威すらも教団よりも地位は低かった。

 なぜなら、教団の教えは絶対、教団は神の代弁者にして執行者、自らを救済し
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