「目覚め」

 頬に当たる雨の冷たさに、気がついた。

 瞼を開けると曇天の空で、頬にあたった雨の雫は最初の一滴だったらしく、頬を滑り落ちると同時に激しい雨が降り始めた。

 激しい雨で、聞こえてくるもの音は雨が降り注ぐ音しか普通の者には聞こえないだろう

しかし、長い間培ってきた経験と鍛錬のお陰で遠くの何かが燃えていた物が雨で消えていく音が聞こえ、しばらくして、風に乗ってか燃えていた物の炎が消え、ただの炭となっていく独特のにおいが鼻孔をくすぐる
 
立ち上がりながら周囲を見渡す。
 

よく知っている場所、腰のあたりまで草が伸びている鬱蒼とした草原でこの辺りには岡がいくつもある丘陵地帯で、ここからでは見えないがここから少し行くと城がある。
 

俺はその城に拠点を置く騎士団(ここでは戦闘を行える者を領主自らが集め、結成、組織化、運用している集団をさす)の団員で、先ほどまで横になっていたが別に昼寝をしていたわけじゃない。

そもそも、こんなおい茂る草叢で昼寝なんかしたら虫に刺されるし、草にかぶれる。事実いま体中のあちこちが痒い。
 
寝ていたわけではなく、気を失っていた。意識を失う前に何があったか、俺もよくはわからないが、頭に岩かなにかあたったのだろう、何か頭に衝撃を受けたことは覚えている。
 

その前のことを思い出そうとすると少し頭が痛む。確か魔王軍の斥候部隊と思われる一団と戦っていたはずだ。
 

こんなとき町医者にいろいろと教わった。
なんでも俺の体は通常と違うから何か起きた時には自分でどうにかしなくてはいけないからだ。
 
とりあえず、軽く記憶の問診
 Q1.お前の名は?
A. 正式名称 ブラフォード あだ名 セルセ(意味は67)
Q2.お前の所属番号は―
―やめよう、なんだが馬鹿馬鹿しいを通り越して虚しくなってきた。


とにかく頭をやってしまったのである。
 訓練中の負傷ではない、実戦中に負傷したのだ。
 

これが人間同士の戦なら気を失っている間に首をもぎ取られているだろう、草の根分け出ても誰でも手柄がほしいものであるし、俺の所属している騎士団では自分で打ち取った者の首しか手柄にできない。

が、もしも首の数だけ報酬が増えるなら気絶している者の首は魅力的だ。

しかし、今世界で行われている戦は人間同士ではない
いや、元々人間同士ということでもなかったが、今でも人間同士の戦は一応あることにはあるがだいぶ小規模だ

なぜなら、世界の戦の主流は魔物と人間の戦であるからだ


魔物―俺の所属している騎士団が最も憎む存在の一つ。

なんでも教会の奴ら魔物は神が作ったものではない、とか説いていたが個人的にはどうでもいい、成り立ちという過去よりも大事なことは魔物の現状である。

とにかく一つだけ確かなこと、魔物は人間とは別種である。

元々魔物の願いは人間の世界を征服することである。

まぁ、人間を食料にしてもいいし、奴隷にしてもいい、そっちの方が魔物同士よりも罪悪感(奴らに罪悪感という感情があるかわからないが)が少なくて済むだろう
実際敵と分かっていても人間を斬るより魔物を斬った方がずっと罪悪感が少ないと経験してるし、同種と別種では命の重さが違う。

奴らの行動は理に計らっていると思う。

人間は魔物の支配が嫌だから対抗する。まぁ、あとは魔物側の資料が少なくてわからないが、人間側には神の教えとか、世界情勢、国内世論の高まり、新技術開発、人口増加による新たなる国土の必要性など複雑怪奇、風が吹けば桶屋が儲かる的な要因もあるのだが、一応わかりやすい図式だ。しかし、それは先代の魔王までの話である。
 



魔王―魔を支配する主にして魔界に君臨する絶対君主

人間の王はあくまでも権力的な力が必要な要因だが、魔王に必要とされるものは絶対的な、暴力という力

魔王一体で魔物何千、否何万という数の軍勢に匹敵するほどの暴力、対峙した者に与える絶対的な死の直感、その力は絶対無比

何度もいうが、もし『暴力』という言葉に魂を与えることができるなら、その与えられ具現化したものが魔王という存在

―なんとも力が正義という山賊的なものであるが、それが魔物の法だから仕方ない。

あと、教会の僧どもがいうに魔物は魔王が作り出した存在であるから魔物は魔王に逆らうことができない、らしい。


 そんな魔王も代が変わることもあるらしく、何世紀か前に新しい魔王が誕生した。

今の魔王のクーデターであったのか、

それとも先代が寿命で死んだのか、

はたまた今の魔王が先代の実子で実権を譲ったのか、
人間側に所属している限りでは資料があまりに少なく、また推測の域を出ないものばかりであるため誰も知らないが、とにかく魔王は新しく誕生したのである。


 しかし、その魔王が曲者であ
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