「起きてください、一之助さん」
その声で眼を覚ました。
眼を開けると、御舟さんの割烹着を着た千鳥さんが覗き込むように見ていた。髪は縛って結びんでいた
一瞬状況が分からなかったが、すぐに昨日のことを思い出す。
「朝ごはんつくったんですけど、冷めちゃいますから食べません?」
もちろん、頷く
じっと、千鳥さんの割烹着姿を眺めていると、なんです?と怪訝そうに聞かれた。
「いや、その、なんというか、こう、いいな、と思いまして」
上半身を起こした。
千鳥さんの顔が真っ赤に染まる
よほど、恥ずかしかったのか無言でそそくさと部屋を出ていく
いや、僕の格好をみて、恥ずかしかったのだろう、今の僕は何も身につけていない、全裸だった。
本当に恥ずかしがり屋だな、と思いながら、着替える
いつもは寝巻のまま生活しているが、今日は違う、本の山を崩さないように歩いて、部屋の隅っこにある、箪笥の引出しから、いつもの寝巻とは違う服をだす。
三年前まで帝都にいた時きていた和服だ、本当は洋服を着たかったのだが、あれは本家にあるからだめか、袖を通しながら、この服を着るのも4カ月ぶりだと思いだした。
大部屋にいくと、千鳥さんがまっていてくれた
「どうです?」
この服のことを聞くと、千鳥さんは頷く、似合っているということだろう
座卓の上には料理が並んでいるが、すこし多すぎないかな?
おかずだけで6品目あるよ
だけど、にこにこと笑う千鳥さんを見ていると、何も言えないし、なぜか体の調子がいい、とにかく飯が食べたかった
なぜ体の調子がいいのか、それを考えるのはあとにする
今は朝食が先、そう思って千鳥さんと卓を挟んで正面に座る
「いただきます」
二人でそう言うと、朝食を食べることにした。おいしかった。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
「じゃあ、千鳥さんのおかげなんですか?」
そう言うと、千鳥さんは恥ずかしそうに笑う
朝食が終わり、食休みでお茶を一杯飲んでいた時、ふと体調がいいことを思い出し、千鳥さんに言うと、答えを教えてくれた
なんでも、昨日僕に千鳥さんがしてくれた回復用の神通力でとても特殊な術、すこしやそこらでこの術が崩せることはない、しかし、呪いを解くほどの力はなく、やはり応急処置にすぎない、とのこと
やはり、根本的な解決にはならないか
「千鳥さん、この術で大体どのくらい持ちこたえることができますかね?」
そう聞くと、すこし迷って、一日は、と答えてくれた
「だけど、保存はできます」
保存?
これ、と言って、千鳥さんは僕の手に紙の束、いや、紙にはミミズがうねったような文字で何か書かれてている、だが、その文字は普通の物ではない、文字そのものから特殊な魔力を感じる
だが、とても知っている、これは千鳥さんの魔力だ
「一枚、胸に張ってみてください」
そう言われて、胸に張ると、胸のあたりが温かくなった、いや、この感じは昨日のあの神通力の感覚に似ている、いや、そのモノだ
「この紙には私の魔力がこめられています。その文字に昨日の神通力を封じ込めていて、能力は幾分落ちますが、私がいない時でもその、同じような回復は可能です」
「…千鳥さん、僕の気配分かるんじゃないのですか?その、確認したことはなかったですけど、昨日もその前も、僕の気配で駆けつけてくれたじゃないですか?失礼ですけど、その、札はいらないのでは?」
「…それが、昨日までは、一之助さんの気配というか精で、体の具合が分かったんですけど、その、なんというか、抱いてもらってから、私自身が一之助さんの精で満たされてる感覚で、分からなくなってしまって、次に倒れられたら、駆けつけられないでしょうから」
恥ずかしそうに言う、こちらまで恥ずかしくなってきた。ふと、その時、千鳥さんから渡してもらった紙を見て、気がつく
「…これ居間にあった紙ですか?」
千鳥さんが心配そうにいう
「もしかして、重要な紙でした?」
首を横に振った、大変なことを思い出したから、汗が出てきた
「いや、紙自体は大したことないのですが、その、御舟さんに弟あての手紙を持たせて屋敷までお使いに行ってもらったんですけど、どうしましょう、今ごろ、僕の葬式の準備してます」
御舟さんに持たせた手紙は、僕の遺書だった。
この間倒れた時、もう長くないと思っていたので、現に昨日あのまま倒れていたら死んでいただろう
だから、葬式などの準備などを頼んだのだ
「…それは、まずいですね」
一通り説明すると、千鳥さんも事情が分かったらしい
「手紙を書いてくれますか?地図
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