掘るんじゃないよ!テンタクルちゃん!

何故か妙に肩が重い。

いつからだろう、確か魔王がいるという城に行こうとして、近道だからってマイケルが触手の森を通ろうと言ってから……?

騎馬隊の中で最後尾であった俺は、ようやく触手の森を抜けたけど、結局俺一人だ。

マイケルも隊長もみんな、潜んでいた(と言うかたぶん触手に襲われて魔物化した)魔物達に襲われて、森の奥へ引きずられていった。



「プレッシャーのせいかな」



そう、呟いた時だった。



「私が付いてるから大丈夫大丈夫」



と、背後から声が聞こえた。

俺は思わず後ろを振り向くと、そこには緑色の肌をした、魔物の顔があった。

驚いて馬から落ちそうになったけど、何とか耐えて上半身を振る。



「離れろぉおおおおおおおおお!! んぁああああああああ!!」

「離れないぃいいいいいいいい!! うぉおおおおおおおお!!」



ブォンブォンと空の切れる音がしても、魔物はなかなか離れない……!

というか、寧ろ腰辺りがきつくなってる、すごく痛くてたまらないから、いったん止まった。



「ね、ね、無駄でしょ? 私の触手、きついでしょ?」

「ぐぬぬぬ……」



ついには身体の関節や首が触手で巻かれたので、俺は抵抗をやめる。



「わーい♪ じゃあ森に戻ろ!」

「ベブッ!!」

「……あれ? おーい大丈夫……あれ? え、白目剥いて……きゃぁあああああ!!」



……そんな叫び声を最後に、触手で色々な個所を曲げられた俺は意識を失ったのだった……。



***



両の頬に生暖かい何かが当てられた。

目をゆっくり開けると、何故か真っ暗、おかしいなと思って目をこすろうとしたら、何か柔らかい物に阻まれた。

そして……頭から頬にドロドロした液体が流れてきた!!



「ぬぼぉおおおおおおお!!」

「あ、起きたぁ」

「ぶはぁ!! 何したんだ!?」



どうやら木に寄りかかって気絶してたっぽいけど、魔物はまだいた、しかも今度は木からぶら下がって、俺の真上に。



「頭に矢が飛んできたら危ないかなーって思って、兜の代わりに、私の触手で守ってあげたんだけど」

「その兜に今殺されそうになったわ!!」



アレ多分、消化液だろ、やばい髪の毛大丈夫か……二十歳になったばかりで丸坊主は嫌だ!



「そんなに警戒しないでよ、寂しいなあ」

「魔物相手に警戒しない奴の方がおかしいだろ……」

「私、そんなに怖くないもん。この間はスライムちゃんに負けたもん」

「スライムイコール雑魚って訳じゃないだろ?」



意外に強いし、話聞かないから盗賊より遥かにタチ悪いんだけど。



「でもでもー、私」

「俺、急ぐからじゃあな」

「え! 逃がさないよ!」

「グボッ!」



飛び出してきた触手に思いっきり殴られた。

やっこいと思ったけど意外に痛い!!

いいパンチ持ってるよ、この魔物!!



「き、気絶させてでも森に連れてってやるー!!」

「ふざけんなチクショー!!」



俺は剣を取り出して、何故か半泣きの魔物の触手を切ろうとする、が。

ヌルンとなって、全然刃が通らない。



「何じゃこりゃああああ!?」

「逃がさないよー」



じりじり近づいてくる魔物。

よく見れば両手も両足も触手になっていて、顔は可愛い分、そのグロさがパネぇことになってるせいか、無茶苦茶怖い。

……顔はって、魔物に興味もっちゃダメだろ俺ェ!!



「ちょいやー!!」

「うおっ!?」



いつの間にか足を触手でとらわれて、引かれたせいで思いっきりすっ転んだ。

そして次には思いっきり引き寄せられて、身体中を触手で巻かれる。



「離せ離せッ!! HA★NA★SEッ!!」

「やーだ! む、むうう、恥ずかしいけどここで犯しちゃう!」

「やらぁあああああ!! やめてぇえええ!!」



そして鎧や服が溶かされ、全裸になった俺に、触手がまとわりつく。

触手に舐められたり、くすぐられるうちに段々と考えることが面倒になってきたけど、下半身の「違和感」で、少し目を覚ます。



「ええとぉ……。初めてだからわかんないや……ここに入れれば気もちいいのかな……」

「え」

「いくよー!」

「ちょっと待ってそこ違うそこ俺のケツのあnアーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーッ!!!」



***



……俺はその日、犯されてしまった。

男性を見たことがなく、女性しか犯してこなかったテンタクルのコスモス(命名者:俺)に、ケツを。

その後?

うん、いつもは普通にしてくれるけど、未だに寝ぼけた時とかにケツ掘られる。

けどそんなことよりコスモスって可愛いよな、どんな時も一緒にいてくれるもん。

俺、もう魔王倒すのやめよ。
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