空き家のせいか、静かな所だけど、天井に付いた窓から見える月が綺麗だ。
と、そこに、扉を開ける音と共に、僕の隣に巨大な猪が落とされた。
「今日の晩飯だ、他に何か食いたいなら自分で買ってきてくれ」
「うーん、お腹空いてるけど別にないよ、ありがとう」
僕の前にいる女の子。
日焼け後は何処にもない生まれついての褐色肌に、必要最低限の衣服なんだかわからないけど、一応布できつく縛って隠してはいるけどノーブラノーパン。
胸は微乳になるのかなあ、Bカップくらいだけど、全体的にスレンダーで僕よりも背が高いし、目付きも凛々しいけど、顔の雀斑でどこか可愛らしい。
この人は、
「いや、もっと栄養を付けねばだめだ、買ってこい」
「あ、あ、うん。ごめん」
「ん? 何故謝る……?」
アマゾネスの、シャララさん。
最近、魔界化という現象が世界中で進行しつつあるなかで、前に勤めていた会社(かなりブラック)が嫌になって、樹海で自殺しようとした所を、偶然にも通りかかってくれたシャララさんに押し倒されて、見事そのまま強制的に恋人になった。
恥ずかしいっていう感情がないからかわからないけど、街に出てもこの布だけ巻いた服装だから、痴女とそれを連れる変態と思われるのが最初は嫌だったけど、段々と慣れてきたし、何より何の取り柄もない僕にこうして山の兎や猪を獲ってきてくれて、ストレートに好きだって言ってくれるシャララさんは本当に優しいと思う。
「……そういえばそれ、なに?」
「知らん、毒を噴出すし怖かったが何とか捕まえた」
「草鞋飲み込んだ蛇みたいだね」
「草鞋……?」
首を傾げたまま草鞋蛇(勝手命名)をスーパーで拝借したダンボールへと押し込めるシャララさん。
「とりあえず行ってくるね。シャララさん、何かいる物ってある?」
「新しい山刀が欲しい、それと鋸」
「ちょ、高いって! 今、僕の家はお金ないんだから!!」
「む……すまん、欲張りすぎたな……」
シャララさんは魔界から来たのはいいけど、自分の集落へと続いていたって言う魔界へのゲートが見つからない上に、こうやって僕も一緒に空き家に忍び込んで原始的な生活をしている。
生活保護でも受ければいい、と、思ったけど。
手続きをする為にはシャララさんについても説明しないといけないし、何より僕の住んでいたアパートは会社の上司が僕や他の同僚を監視するために住んでいる。
シャララさんに万が一の事があってはいけないし、何より今の生活は何気に気に入っている。
「竹で作れないかなあ」
「タケ?」
「あ、竹って言うのは……」
時給七百五十円だけど、素性を聞かれずに済んだ滅茶苦茶暇な居酒屋の仕事を夕方から夜にかけてしながら、夜から朝はシャララさんと過ごす。
僕としては前よりもいいし、何より一人じゃない。
「このあたりで採れるものだから、明日貰って来よう」
「ああ、そうしよう」
とりあえず猪は腐らないように外に干しておいて、僕は冷たい床の上にビニールシートと寝袋を敷こうとしたけど、シャララさんに突然ビンタされる。
「あっふぉぅうう!! ど、どうしたんだ!!」
「寒いんだ……。妻を暖めようと思わんか」
「え……」
「えぇい、鈍い奴だ! さっさと一緒に毛布に入るぞ!」
「いやぁーん!!」
「女々しい!」
僕は拾ってきた毛布の山に投げると、腰布を解いて、胸布も取る。
「さあ、するぞ」
「え、ええと……窓、割れてるけど」
「何を……寧ろそれがいいんんじゃないか。お前を私の物だと……証明できるし……」
「照明なんかしなくても元からシャララさんのだから大丈夫! シャララさん可愛いし!」
と、言った瞬間、僕の意識は、僕の腹に正拳突きをする真っ赤な顔のシャララさんを最後に、飛んだのだった。
***
僕は結局、目覚めてから数時間、休む間もなく朝までシャララさんに搾られた。
これからもずっとこんな生活が続くんだろうか、それとも何か起こるんだろうか。
まあ、とりあえずというか、
「よろしくお願いします、シャララさん」
「ん? ああ、よろしく」
僕の胸に顔を載せたシャララさんは、何かわからずにただ返事する。
今はとりあえず、シャララさんと明日を迎えられればそれでいいか。
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