【魔物高校生と秋休み】
「秋休み何か予定あるか」
真奈美が鑢で爪とぎをしながら、口を開いた。
「秋休みなんだし、何かしたいんだが」
「あー、ごめん。アタシ予定あるわ」
「悠は?」
「オレも」
「巴は?」
「あっしも予定がありやす」
真奈美はむう、と頬を膨らましながらパズ〇ラのアプリを起動させるのだった。
<そして秋休み>
(恵梨香の奴も彼氏とデートときやがった、仕方ない……)
真奈美が入ったのは漫画喫茶だ。
暇になるとドリンクバーでコーラやお茶を混ぜる事が楽しみのついでにここへ来て、時間を潰すのだが。
「あっ……」
「……………」
そこに、コートを着込んだ曜がいた。
「あっ!」
そして角に漫画が刺さった悠もやって来る。
「もしや……」
真奈美がタブレットの電話アプリを起動し、〔巴〕の電話番号を呼び出す。
\イーケナイタイヨゥー、ナーナーナーナナ……/
向かいのボックスからそんな音が聞こえてきた。
真奈美はただ悲しそうな顔をして、レシートを店員に返すと、漫画喫茶を去っていったのだった。
【魔物高校生と友情】
「おはよう」
「うっす!」
「……」プイッ
「ごめん真奈美! あの事(漫画喫茶)のこと気にしてんなら許して!」
「悪かったって!」
悠と曜が必死に謝るが、真奈美は無視をして自転車に乗って走り出す。
「真奈美ー!」
「ヤバい、アレマジで怒ってるぞ!!」
途中で歩いていたゲイザーの美代子を悠が撥ね、転んでしまったが、気にせず二人は走る。
「真奈美ー! 止まってー!」
「腹が空いてきた……」
「あっ、そこのナイトメアー! 真奈美を止めてー!」
「……ん」ザッ
「ワン!?」
急に飛び出してきたナイトメアのなーさんを避け、思い切りゴミ捨て場へと突っ込む真奈美。
「真奈美!」
「……お前ら」
「ごめん! ほんとうにごめん!」
「オレと曜、見栄張っちまったんだ!!」
「……その前に言うことがあるだろ」
「え?」
「え、ええと……ごめん」
「私じゃない」
「はえ?」
「美代子にだ」
真奈美が爪を指した方を見る二人。
「……」ブルブル
そこに、鼻血を出して泣いている美代子がいた。
「あ、あの、美代子……」
「うるせー! 死んじまえ!!」ダダダッ!!
<真奈美とは仲直りできたが美代子は一週間口をきいてくれなかった>
【魔物高校生とサボタージュ】
「おはよー!」
「おはよう」
「はぁ……」ショボン
「どーしたんだよ、曜。元気ねーじゃんか」
「いや、学校行くのが何故か今日はすごくかったるい」
曜がそう言うと、真奈美が頷く。
「……そうか」
「今日なんか気分のらないのよ」
「だったらサボるか」
「え!? 今日学校行かないの!?」
「ああ、恵梨香も誘ってアキバにでも繰り出そう」
「でもよ〜……サボるってヤバくねーか?」
「そうか?」
「だって、オレ前サボったらすーちゃんと兄ちゃんと義姉ちゃんにメッチャ叱られたぞ」
「むう」
曜が尻尾を振りながら腕を組む。
「そんな、学校行かなくちゃならないの?」
「なんてことだワン……」
「あ、でも休まないといけねー理由話しゃーよかねーか?」
「理由……ねえ」
「私達がサボんないといけない、しかも三人同時にサボんないといけない理由……」
「曜が大怪我したというのは?」
「それ、アタシがホントに大怪我しないとダメでしょ?」
「じゃあ曜が急にケサランパサランが乗っかって大笑いしながら街を走り出したというのは?」
「アタシを社会的に殺す気なの?」
「うーん……曜が……」ムニュ
「まずアタシから離れろ」
曜に肉球で頬を挟まれる真奈美。
「じゃー、産気づいたエキドナ助けたってのは?」
「すっげえ嘘っぽいわね……」
「もう少しリアリティーが欲しいな」
「エキドナがまずいか……ならその辺ヤベーとかで曖昧にしよーぜ」
「その人物に付いて追及されたらどうする?」
「あ、そしたらアタシ達追い出されて聞けなかったことにすればいいのよ」
「でもよ〜……普通救急車呼ばねえか?」
『……………』
沈黙の中、真奈美はスッとタブレットを取り出し、電話アプリを起動した。
「電話する、アドリブのが不自然ではないだろう」
「お願いよ」
「…………あ! もしもしすーちゃん!? 今ワン、そこで産気づいてて! 魔物がです! 悠と曜で救急車をワン!! はい、すいませんワン!! はい、わかったワン
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