【魔物高校生と曜の姉】
ゴシャアアアアン!!
そんな音が響いて、石のブロックが割れると、三人は何とか避けた。
「今本気で殺しにかかったぞ……!」
「アガァアアアアアア!!」
「あがぁ! とか言ってんじゃねーか!」
「そもそも真奈美があんなこと言わなきゃ、姉ちゃんキレてないわよ!!」
〔数十分前〕
「お姉さん、いつもバレンタインデーって一人でチョコ食べてるんですか」
〔現在〕
「本当にすまん……!」
「うわぁ! 猛スピードで来たぞ!!」
「だらぁ!」
「ウジャっ」
「曜ー!! え」
曜がラリアットで吹き飛ばされたと思うと、続いて悠が尻尾で顔を殴られ、河原へ転がり落ちていく。
「悠ーっ! クソォ!!」ダダダダダダ
そして真奈美を追いかけ、曜の姉はそれを黙って追っていたのだが、途中で止まってしまう。
夜の街、バレンタインデーとあって、たくさんのカップルがいたのだ。
(は、恥ずかしいーっ!)
曜の姉はその場に座り込んでしまった。
と、そこへ肩を叩かれる曜の姉。
「こ、これなら、友達で来てるかと……思われるワン」
真奈美がマフラーを曜の姉にそっとかけた。
「……真奈美ちゃん」
「……ふ」
「キモいわぁああああああ!!」ドゴヌス!!
「ギャウンッ!!」
翌日、路上で気絶していた為か、仲良く40度の熱を出した三人であった。
【魔物高校生と真奈美の友達】
真奈美は河原でタブレットを起動して、エロ小説を読みながら、「う〜いお茶」を飲んでいた。
と、そこに聖ミネルヴァ学園の制服を着た学生たちがやってきて、真奈美は去ろうとしたが。
「真奈美!」
「あ、恵梨香」
そこに顔色が悪いものの、バランスが取れた身体つきをしたワイト、真奈美の友人である恵梨香が手を振ってやって来た。
「何してるの?」
「小説をな」
「相変わらずねー。今からスーパー行くけど一緒に行く?」
「今日はセールか? でもまだ午後四時だぞ、二時間ある」
「え!? ……あ、本当だ」
「時計くらい持ってろ……」
「うーん、じゃあそれまで時間潰さないとなあ」
「なんか話すか」
「そうね」
そして二人は隣り合って座る。
「そう言えばこの前、変なナイトメアに絡まれた」
「……ああ、多分なーさんだ」
「知り合いか」
「結構人気なんだけど引っ込み思案で未だに彼氏ゼロ、レズのうわさもあるし」
「小説見たか、そのなーさんとやらの」
「うん」
そしてしばらくの沈黙。
「今日は……シルフが騒がしいワン……」
「でも少し……この風……泣いてます」
立ち上がり、互いに背を向ける二人。
「行くぞ恵梨香、シルフがよくない風を吹き込ませたみたいだワン」
「急ごう、風が止む前に」
「……プッ」
「ふふ……」
「今日は! シルフが! 騒がしいワン! あっはっはっは!!」バンバン!
「でも少し! この風! 泣いてます! あっはっはっは!!」
腹を抱えて笑い出す恵梨香と、地面をバンバンと叩いて爆笑する真奈美。
「……」ゴゴゴゴゴゴ……
この後、ナイトメア(通称なーさん)に追いかけられたのは言うまでもない。
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