魔物高校生と思い出、他一話

【魔物高校生と思い出】



(私こと、アヌビスの真奈美は小学校の頃、夏休みに不思議な体験をした)





〔真奈美:小学校四年生〕



「ねえー! 私もお姉ちゃんたちとお祭り行きたいー!」

「ダメダメ、危ない人たちがいるから」

「そうだヨ」

「お土産は買ってきますから」



親が仕事でいなかったので頼み込んだが、姉のナタータとお供二人に置いてかれ、私は家で泣きぐずりながらゲームをしていた。

今思えば、確かに夏祭りは危険だ、ロリコンや変質者も中に混じっているし――けれど、その時はどうしても夏祭りに行きたかった。



「よいしょ……」



私は去年買ってもらった浴衣を着て、私は裏口からこっそりと出て、夕方の道を歩いた。

私ぐらいの子供が集団で歩いていたけれど、その中に友人はいなかったので、仕方なく財布を握りしめて、夏祭りを開催してる神社に向かった。



「わぁあ……」



去年同様、豪華な夏祭りだった。

とりあえず姉に見つからないよう、人ごみに紛れながら移動していると、私はいつの間にか神社の本殿に出てしまった。

暗いし、喘ぎ声が聞こえたので不安になってしまったよ。

でもな、そこから立ち去ろうとした時、泣き声が聞こえたんだ。



「誰?」



そこにいたのは、恐らく魔物だったな、下半身が緑で長かった。

でも泣き続けてて、名前はわからないし、なんで泣いているかもわからない。

とりあえず勝手だとは思うが、片手を取って、引っ張って歩き出した。



「何で泣いてるの?」



そう聞いても以前として泣き続けたまま。

暗い中を歩いて、歩いて、そして祭り会場まで出ても、手を繋いだ奴はまだスンスン泣いていた。

とりあえず財布を出して、残金を確認すると1500円、500円玉3枚であったから、焼きそばを買ってそいつに持たせて、食わせた。

ようやく泣き止んで、私も買ったたこ焼きを食べて、騒がしい祭り会場を見まわしたよ、そして思ったんだ、こいつは迷子かと。



「食べたら行くぞ」



そう言うと、奴は黙って手を握って着いてきた。

とりあえず片っ端から、ラミアやメドゥーサに片っ端から声をかけたが、奴の親は見つからなかった。

もう祭りも終わりかけて、再び奴は泣き始めた。

……それで、つられて、私も泣いてしまった。

でもその時だった、突然誰かの声が響いたんだ。



「ごめんね、ありがとう」



優しい、母のような声だった。

そして気づけばいつの間にか泣いてた奴はいなくなっていて、代わりに手にあったのは500円玉。

……まあ、この後、すぐに姉に見つかってこっぴどく叱られて、奴が何だったのかは結局忘れてしまったよ。

でもな、あの祭りで奴と手を繋いで、確かに歩いたことは覚えているんだ。





〔真奈美:現在〕





「……いつか、また会えるといいな」





机に閉まってある、汚れきった500円玉を見る度に、私はそう思うのだった。

いつか、今度は、お互いに泣かず、しっかり計画を立てて、夏祭りを楽しみたい。

ああ、勿論、自己紹介もするつもりだ。



「真奈美ー! 悠ちゃんと曜ちゃん来てるー!」

「今行く!」



私の、友人も一緒に。





【魔物高校生とラブレター】



〔下駄箱〕

「でさー……ん?」





〔教室〕

「ラブレター?」

「うん、なんか下駄箱に入ってたんだけど」

「え〜? レズから〜?」

「だろうな、ここにはデキあがってる男性教師しか赴任してこないし」



曜がラブレターを貰ったと聞いて、全員がロングホームルームの時間を使って話し合っていた。



「クッソ、アタシをナメてるのかしら!?」

「あっしもそう思う」

「放課後、全員でとっちめてやろうじゃないか!」

「オレ、媚薬水鉄砲借りてくる」

「あっしは仲間集めてきやす」

「怪我とかしないよーにねー」



鈴子はただ手を振って、水鉄砲や辞典を用意する生徒たちに手を振っていたのだった。





〔放課後・裏庭〕

「なー、真奈美、くんのかよ」

「恐らくはな」

「シッ! 来たわ!」



曜の前、そこに来たのは、



「あれっ……曜? 何で?」



ゲイザーの美代子だった。



「犯人は美代子だー!」



その瞬間、水鉄砲やかんしゃく玉で完全武装した生徒の一団が様々な場所から飛び出してくる。



「純粋な乙女心ブレイクした美代子をとっちめてやれ!」

「た、ただ誰かに非通知で呼ばれたってだけなのに! チクショー!!」

(すまねえ美代子ちゃん……!!)



巴が液晶に『美代子ちゃん』と表示されている携帯電話を隠しながら、戦闘に参加したのだった。
13/10/04 16:57更新 / 二酸化O2
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