「……って逃がすかぁあああああ!!」
アタシから逃げるのは教団の騎士だ、しかも結構タイプなイケメンで、しかも堕とし甲斐のありそうな奴。
昔から、
ラミア「えーwww単眼キモ〜wwwないわ〜www」
ケンタウロス「単眼と言うより多眼……フフッwww」
サハギン「…………」プルプル
とか、なんかさんざん言われてきて、一時期サイクロプスと「単眼だってくぁいいんだゾ☆」とか言って頑張ってたら、そのサイクロプスは山に籠りだして武器作りに熱中しだして寂し……くなんかねーし!!
ちょーど男見つけたから良かったもんね、アタシの顔から出るしょっぱい水は今日食べた豚の丸焼きのタレだもんね!
泣いてなんかねーし!
「あの、君、泣いてるの?」
「タレだし! 昼飯の豚に漬けてたタレが出てるだけだし!」
「魔物怖ぁあああああ!? 目からタレ出るのかよ!」
鎧を着ている上に整備されてない獣道なのに、浮かんでいるアタシと一向に距離を縮めさせないアタシの男。
別に泣いてるから前が見えないせいで追いつけないとかじゃねーし、触手の目玉も泣いててうるんでるとかじゃねーし、あの騎士が砂あげるから目に染みてタレ出てるだけだし。
「誰か助けてぇえええ! 全裸の上に目から肉のタレ出す……ええと」
「ゲイザーのオンリだぁあああ!」
「ぜ、全裸の上に目から肉のタレ出すゲイザーのオンリさんが来てるんですぅうう!!」
「やめろぉ! アタシをどんな魔物にしたいんだぁ!」
それに全裸じゃねえよ!
あのー、ほら、魔力の塊で一応乳首とかマンコは隠してるし!
リッチとかいう魔物みてえにローブだけ羽織って下は全裸とかじゃねえし!!
「目からタレは嘘だ!」
「じゃあ何!?」
「……ダイヤ?」
「え、マジ?」
「うおぉい! 急に止まるなぁああああ!? ブペっ!」
何とか男を避けたものの、アタシは顔面から地面に滑る。
擦ったんだろうか、瞼が痛くなってなみ……タレが目から出てきた。
「ご、ごめん! 大丈夫!?」
「死に晒せ! あっ痛っ……」
「うおう……ゲイザーって触手の目玉がバッテンになるんだ……」
多分砂も入って、触手の方の目玉も全部見えなくなっていた。
くそー、男がこんなに近くにいんのに邪眼も使えないって……。
「ダイヤなんか出る訳ねーだろ、何簡単に騙されてんだテメー!」
「い、いや、けどダイヤなんて言われたら止まっちゃうだろ?」
「うっせー!」
「えぇ〜……」
「クッソ、全然見えねえじゃんか……」
目を擦ってはみるけど、全く視力は回復しない。
潰れてたらどーすんだよ、コレ……。
「ね、ねえ、オンリさん」
「なんだよ!?」
「砂まみれの手じゃ逆効果だと思うんですけど……」
「……知ってるし! 見えねーから動けねーんだよ、わかんねーのか!」
「じゃ、じゃあ近くに泉あるからそこまで行こう?」
「はぁ? お前、そう言って仲間のとこまで連れてって殺す気じゃねーのか?」
「僕の部隊、魔王城一歩手前で魔物の騎士団に襲われて、隊長以下三十八名、今は近くの街の宿屋だよ……」
「ショボっ」
「命からがら逃げてきたら、今度は全裸の上に目から肉のタレ出すゲイザーのオンリさんが現れるし」
「次にその前置き言ったらケツに触手ぶち込むぞ」
「ごめんなさい!! と、とりあえず」
と、急にアタシの手が握られた。
「…………ん?」
「見えないんだったら、エスコートします。僕が結局悪いわけだし!」
――手を、繋がれていた。
「ばばばばばばばば馬鹿じゃねえのか!? お、お前のエスコートなんざいらねーっての! 泉だって知ってるかんな! 見えなくてもわかるっつーの!」
「あ、そっちじゃないですよ」
「……わーってるわ!」
とりあえず手を振りほどいたはいいが、好意を無駄にしてやるのもアレだ……道がわかんねーとかそういうわけじゃねーけど、男の肩に乗っかって、アタシは泉へ向かったのだった。
***
「ぶっはぁ!」
「触手って泉に突っ込むと井戸のポンプみたい」
アタシは手を洗ってから、触手を泉に突っ込んで洗う。
つまんない言葉は無視して、アタシは泉に映った顔を見る。
「……ちっ」
相変わらずギラギラした紅い単眼に、鋸みたいに鋭い歯が並んで、いかにも「魔物」って感じの顔だった。
これじゃあ確かにモテる訳ねーよな、サイクロプスのがまだちょっと可愛げがある。
「さーてと、おい、男」
「僕は男じゃなくてシギーです」
「シギー、テメーは犯される準備できたか?」
「え……できてないです
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