翌日、朝。
昨日は早速ちゆりにRAIN友達に登録されてることを確認して、トークしようとしたが、仕事で疲れてるであろうと思い、天香はその日はいつもより早い……午後九時に布団へもぐり、ちゆりが起きているであろう午前六時半に起きた。
「早く起きすぎた……」
いつもは遅刻寸前の時間に起きて、叔母に呆れられながらの朝食抜きの車登校だが。
やることもないので、とりあえずは食事をする居間へ入る天香。
「おっはー」
「珍しいな天香、こんな時間に起きるなんて」
「早く寝すぎた。朝ごはん何ー?」
「お前が起きるとは思ってなかったから作ってない。自分で何か作れ」
「へーい」
恐らくは夜勤明けなのだろう、目に隈を作った風香が面倒そうにインスタントの味噌汁袋と卵、茶碗を二つ渡すと、欠伸をしながら居間から出ていく。
天香は茶碗に「わかめ」と書かれたかやく、チューブに入った味噌を適当に入れる。
「あ、RAIN……」
未だに起動していない携帯電話を思い出し、天香は薬缶に水を入れ、火にかけてから自室へ戻っていく。
充電器に差さっていた、今は廃れかける折り畳み携帯電話を取り出し、電源を付ける。
完全に起動すると慣れた手つきでボタンを押し、数秒でRAINのサイトを開く。
「お?」
早速というのか。
「ちゆりん・ヨッシー」と表示されたグループに更新情報があり、天香は素早くそれを開く。
【これを見たらでいいので、朝、生徒会長室に来て下さい】
「……ふほぉおお!?」
思わず声を出してしまい、ベッドへ思い切り身を投げる天香。
その後は携帯電話を持ったまま狭いベッドを転がり、次には体操選手も驚きのスピンをしてベッドから飛んで降りた。
「や、やべえ……! 俺の心臓メッチャ震えてるよ……!」
子供の頃からひしぎとシュンとしか遊ばず、外出しても叔母とコインゲームをするしかなかったので、女子からの告白どころか、女友達はシュンを除けば誰もいなかったのだ。
妄想だらけである天香の頭はすでに沸騰寸前であり、頭にはRAINに書いてあった文字だけがめぐっている。
「今行きます、ちゆりさぁああああああん!!」
素早く着替えてから、天香はやかんの火を消して、家を飛び出していった。
祖母に「ご飯勿体ない!」と叫ばれたが、「俺の青春はここからだぁあ!!」と叫ぶ天香は聞く耳がなかった。
***
高等部会長室。
生徒会室の隣にある、木製の扉が嵌められた生徒会長のみが自由に使用できる部屋だ。
歴代の生徒会長の写真、資料があるので防犯の為でもあるが、会長が恋人と密かに交わる為に作られた部屋でもある。
「栄養ドリンク買った方がよかったかな〜」
「僕に聞かないでくれるか……? この毒針、会長がいきなり襲うとは考えられない……」
「蔵人はわかってねーなー」
天香は今、風紀委員長の毒針、公安委員長のオーガであり、一応毒針の恋人――六甲山 美代(ろっこうさん みよ)と共に会長室を目指している。
会長室にはできるかぎり、部外者は近づけたくなく、毒針の部下による情報だと最近になって隣町の県立魔園学園の不良たちが動いているのだと聞いて、警戒しているらしい。
かと言って、天香にはなぜ二人が釘バットとメリケンサックを持っているのかがわからない。
「あ?」
「風紀委員長にはわかんねーよ、女心ってのーがさぁ」
「ふ、君に女心があったことに僕は驚きだね」
「あんだと、あぁ!?」
「やんのかゴラァッ!」
毒針は背中に背負っていた釘バット、六甲山はメリケンサックを拳に嵌め、その場が学園祭から戦場へと変化しかけた、その時。
「おーい、お前ら何してんだ?」
「「こいつが! あっ」」
「……成程。浮田、会長室に行ってろ」
「あ、は、はい……」
相変わらず生パスタを齧っていて、真面目な雰囲気が取れなかったイヅク。
だが今はこめかみに血管が浮き出ており、笑みを必死に作っているのだろうか、口の端がひきつっている。
「お前らさぁ……。去年から全く反省してない系? 俺と会長との約束忘れた?」
「違います……」
「ごめんなさい……」
しょぼくれた二人の委員長と、後ろから鬼神のようなオーラを出すイヅクを背に、天香は会長室の前に移動する。
木製戸を三回ノックしてから、服装を整えていると、「どうぞ」と声がかかる。
「何か用でしょうか、ちゆりさん!」
「天香君……来てくれたんだ」
「……え?」
いつもならば白い肌の頬がほんのりと紅いちゆりの顔だったが、今は何故か目
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