良い子に聞かせてもいいかわからない落語『がいこつひろい』

ええ、むかしむかしあるところに、それはそれはりっぱなおさむらいがおりました。

かれはきっすいのまじめなもので、けっしてたんれんをおこたらず、まいにちまいにちすぶりをしていました。

ですがそんなおさむらいにも、ひとつなやみがありまして。



「ああ、つまがほしいなあ」



そうです、おさむらいにはおよめさんがいなかったのです。

うまれてからというものの、ちちおやにけんじゅつばかりおしえられてきたおさむらい。

とうぜんのことながら、おんなあそびもこのとしになるまでしらなかったし、いまでもしもしなかった。

いくらようかいのおおい「じぱんぐ」といえど、このようにうんのわるいおとこもいるのです。



「ためしにやまにのぼってみようか、だがひまがないなぁ」



おさむらいはおとのさまにつかえており、めったなことがなければくにのそとへでることはゆるされませぬ。

とまあ、おさむらいはあれこれかんがえましたが、いいあんはおもいつかぬ。



「なにもおもいつかん、さんぽでもしよう」



と、もうすでに「おうまがどき」になったというのに、かたなももたずにおさむらいはさんぽにでかけた。

ああ、このおさむらいはなやんでなにもでなければ、こうやってさんぽをするのがくせなのですよ。



さて、ときはすこしたった、おつきさまがみえるころ。



きんじょのかわらにくると、おさむらいはかわにうつるつきをみて、ためいきをつきまして。

さんぽしてみえるのは、なかがよさそうなふうう、そしておやこ。

ひとりみのおさむらいへのあてつけのような、そのようにうけっとてしまったおさむらいはこのような場所まできてしまったのです。



「ああ、はらがたつ。ばくはつしてしまえばいいのに」



はァ、いったいなんのつみがあって、ばくはつせねばならないかはわかりませぬ。

そんななかで、おさむらいはいしをけって、みなもにうかんだつきをゆらします。



「そういえば……」



おさむらいはいぜん、したまちでいやなうわさをみみにしたのです。

ここでいぜん、にんげんのふうふが、つまらないことでくちげんかをしてしまい、なんとおとこがつまをきってしまった。

まァ、そりゃあとうぜんといいますか、きられたおんなはとうぜん、しんでしまいましてねェ。

そのしょりにこまったおとこは、つまのしたいをかわにほうりなげ、じぶんはくにのそとへにげてしまったとか。

それからよなよな、おんなのすすりなきがかわのそこからきこえるとか、うんたらかんたら。



「おお、いやだいやだ。はやくかえって、めしでもたべよう」



と、さっさとかわらから、いえにかえろうとした、そのとき。



「もし、そこのおさむらいさま……」



ひゅうぅうう〜、と、なまあたたかいかぜとともに、さみしそうなおんなのこえがささやくように、ですがはっきりとおさむらいのみみにとどきました。

せすじをぴぃいんとのばし、あせがあふれるおさむらい。



「どうかわたしをかわのそこから、ひっぱりあげてはくれませんか、おれいはいたします」



そのあとにひびくのは、すすりなき。

やや、このこえがおそらくおんなのれいか、と、さむらいはおもって、



「おれいといって、わたしをれいかいにつれていくきであろう」



と、おそるおそるたずねまして。



「いいえ、わたしはそのようなことはいたしません、だからどうか、おねがいします」



と、こえはこたえまして。
おさむらいはしばらくかんがえましたが、だまされたらだまされたで、きれもしないゆうれいをきればいいとおもい、



「わかった、だがへんなまねをすれば、すぐにたたっきるぞ」



おさむらいはかたをわすれているというのに、そういいながら、いしでつくられたていぼうをしんちょうにおります。

そしてゆうれいのこえにしたがいながら、かわにてをいれ、「それです」といわれたものをひろいあげると……それはなんと、にんげんのずがいこつでした。



「うぎゃあああああ」



ひめいをあげるさむらいをよそに、ずがいこつはうごきだし、おさむらいがこしをぬかしてないているあいだに、なんとほねがあつまって、たっているではないですか。



「ありがとうございます、おさむらいさま。おれいなのですが、どうかわたしをつまにしてはくださいませんか」



とうとつにほねがいいましたが、



「し、しかし、あなたはほねではないですか」



と、そう、おさむらいがいうと、ほねはぽん、とてをおいてじぶんのすがたをみて、



「たしかにこれでは、いけませんね。ではこれならどうですか」



うなずいたほねはそのばでひとまわりすると、なんということか、はだはまっしろですが、この
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