「ランランラ〜ン、ランランラ〜ン、ルッアランランランランラ〜ン……」
「お、おーい、浮田さん?」
「ランランラ〜ン、ランランラ〜ン、ルッアランランランランラ〜ン……ん?」
「いや、ん? じゃないでしょ!? クッソ暑いし忙しのに、私たち呼び出しといてハ○ジスキップしてんじゃないわよ!」
そこにいたのはロングスカートのセーラー服を着たアヌビス、その隣で二丁のモデルガンを腰に下げてガスマスクを付けた学ランの人物、今は懐かしきゲーム○ーイア○バンスでポケ○ンをプレイするセーラー服のスフィンクスという、奇妙な三人組だった。
アヌビスは病持 ナタータ(やみもち なたーた)、ガスマスクは鬼沼 十三郎(おにぬま じゅうさぶろう)、スフィンクスは塗木 バセッタ(ぬりぎ ばせった)という。
この三人は隣町にある「私立ピラミッデウム高校」の生徒であり、三人が三人とも今は全滅しかかる「ヤンキー」である。
数か月前に町の境界にあるラブホテルの取り合いで、見事負けた天香だが、気は合うのでちょくちょく公園で会っているのだが。
「この真夏日にウチら呼びたしといて何の用なノ?」
「実はお前らにあのラブホテルと、あのゲーセン譲るわ」
「はぁ!? ……ちょっと、二人とも」
そのリーダー格であるナタータが二人を寄せ、静かに呟くように喋り出す。
(あの『敗北知らず』浮田が急にどうした訳?)
(さ、さあ? 浮田さん、暑さで頭溶けたんじゃないですか?)
(でもゲームセンター取れたら、マミー達も喜ぶヨ)
(馬鹿! 何か企んでるに違いないわよ!)
(とりあえず俺が聞いてみます)
(お願いだヨ)
頭を上げた十三郎がガスマスクを付けたまま咳込んで、天香を見据える。
「何かあったんですか?」
「俺に春が来たんだ!」
(やっぱり溶けてるんじゃ……)
(もう少し聞いて!)
(はい……)
「春が来たとは?」
「んん〜? 俺もリア充の仲間入りっていうのかな〜」
十三郎がレンズの下から目でナタータに助けを求めると、黙って頷いて前に出る。
「つまり女ができたってこと?」
「うんうん、千住院ちゆりさ〜ん」
「……ん? 千住院?」
「どうしたの、ジューサン?」
「あ、いや……。どっかで聞いたことが……」
「思い出せないなら無理しないでネ」
「まあ、そうかなあ」
十三郎がため息を吐くと、ナタータとバセッタに肩を叩かれる。
「きっと、告白して玉砕した一人だかラ」
「うんうん。でも今は私がいるからね、ジューサン」
「……え? 覚えもないこと言わないで下さいよ、バセッタもナタータも……ね?」
「じゃあ、そういうことで〜、また今度トリプルデートしようぜ」
「じゃあネー」
正直言えば気持ち悪い天香のハ○ジスキップを見送って、ヤンキー三人組は公園にポツンと取り残される。
だがしばらくするとナタータが二人の方を向き、時計を見てから口を開く。
「この後、どこで昼飯食べる?」
「ドリンクバーのあるファミレスがいイ〜」
「同じく」
「じゃあ久しぶりにバーミ○ン行きましょ」
「あいっす」
「わーイ!」
***
「アルプス一万ジャック、小鑓のう〜え〜で……フゥッ!!」
翌日、登校日である月曜の昼休み。
あまりのハイテンションで、アルプス一万尺を歌い始めた天香は昼食も摂らずに、屋上へと向かっていた。
「待っててちゆりさ〜ん! 今からあなたの黒馬の王子、浮田天香が参ります〜!!」
「春海! あいつは俺の兄弟か!?」
「んな訳ないだろ! とっとと仕事手伝え! ……私に乗るな!」
途中、バイコーンと男子のカップルのうち、バイコーンの方に引かれながらも天香は屋上にたどり着いた。
「あ、天香君」
「ちゆりさん! あ、今日も可愛いですね!」
「え、ええ? そ、そうかなあ……」
出会い頭に褒められて悪い気もしない様子を見せるちゆり。
天香は後ろを向いて「っしゃー……! 好印象!」と、呟きながら小さくガッツポーズを取る。
そして怪しまれないうちに振り返り、満面の笑みをする。
「あの顔、どっかのニーサンみたい……」
「シッ!」
不安なので、一応先に来てもらっていたひしぎとシュンが給水塔の周辺で話しているのにも気づいておらず、ちゆりに気味が悪い顔のまま笑いかけている天香。
「あ、呼び出しちゃってごめんね! お昼まだだよね!」
「大丈夫です!」
「きちんと食べなきゃ……。あ、一緒に食べる?」
「いいですとも! ゼロ○スが来ようが、Wメ○オ撃とうがいいですとも!」
ちゆりは「私、ドラ○エしか知らないけど……」と呟
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