むかしむかし、あるところに大層仲のいいお爺さんと、超グラマラスな魔物が住んでおった。
ある日のこと、お爺さんは山へ炭焼きに行った。
「おお、今日は随分喉が渇く。どこかに、うまい水でもあればなあ……」
一仕事終えたお爺さんが、山道を降りていると、岩の陰に
こぽ こぽ こぽ こぽ……
と、涼しげな音を立てて、小さな泉が湧いておった。
「やれ、ありがたい」
手の平にすくって、一口飲めば何とも言えないいい気持ち。
「うめえ! 水うめえ! 水うめえ!」
と、続けて飲むと、なんとまあ……不思議なことに。
身体中に力が湧き、曲がった腰がしゃっきり伸びて――。
お爺さんはすっかり若返って、元気で若かりし頃のイケメンな青年になっておった。
「なんじゃこりゃあ!? そうだ、家に帰ったらさぞ婆様も驚くぞ!!」
若返ったお爺さんはクラウチングスタートで山道を走り出し、飛ぶように帰っていった。
「おーい婆様、今帰ったぞー」
「お帰りなさいお爺さん、今日は早かったです……ね?」
迎えに出たお婆さんは、お爺さんの姿を見てびっくり。
「おおう、お爺さん、どうしてそんなに急に若返ったのです?」
「なあに、山で変な水を飲んだらなあ……」
お爺さんはわけを話して、聞かせた。
「あれ、そうだったのですか。私もいって、飲んできましょう。お爺さん、その水のある場所を早く教えて下さいよ」
次の日の朝早く、お婆さんは出かけていった。
「きっと! もっと可愛い女の子になって戻ってきますからね! ほかの魔物にホイホイついていかないで待っててくださいね、お爺さん!」
お爺さんに教わった道を訪ねていくと、岩の陰に綺麗な泉があった。
「これだ、これだ。さ、いただきましょう」
お婆さんは夢中で水を飲む。
「若くなりたいでござるっ! 絶対に若くなりたいでござるっ!!」
と、たくさん飲んだ。
「若くなりたい……可愛くなりたい……もう少し、もう少し若くて可愛くなりたい……」
夕方になった。
けれどもお婆さんは帰ってこず、一日中精力剤の用意やベッドメイキングをしていたお爺さんは、心配で堪らなくなった。
「――道にでも迷ったのだろうか……。はっ!! もしやあまりの可愛さに盗賊に攫われたのか!?」
お爺さんはお婆さんを探しに行った。
「おぉーーーーーーーーーーーーーーーーい!! おぉーーーーーーーーーーーーーーーーい!! お婆さんやぁあああああああああああああい!!」
「おぉーーーーーーーーーーーーーーーーい!! おぉーーーーーーーーーーーーーーーーい!! どこだぁあああああああああああ!!」
呼んでも、呼んでも、返ってくるのは山彦ばかり。
「おぉーーーーーーーーーーーーーーーーい!!」
――おぉーーーーーーーーーーーーーーーーい!!
「お婆さんやぁあああああああああああああい!!」
――お婆さんやぁあああああああああああああい!!
お爺さんはあの不思議な泉の近くまでやってきた。
すると、水の音に混じって、
「ふえっ……えぐっ……」
と、幼い女の子の声が聞こえた。
「はて? こんな山奥に女の子がなぜ……」
岩の陰を覗いたお爺さんは、あっと驚いた。
そこには、八歳ぐらいの魔物の女の子が、全裸で見覚えのあるビキニを両手に持って、しきりに泣いていたのだ。
その女の子はお婆さんだった。
お婆さんはつい、欲が出て、水を飲みすぎたために、とうとうこんな姿になってしまったのだ。
そして、それから――。
幼くなったお婆さんは必死になってその泉の水を研究し、「幼化の魔法」を発明した。
グラマラスだった頃の姿にに戻ることは諦め、お爺さんを「お兄ちゃん」と呼ぶことで新たな属性を開発することに成功したのであった。
それが広まって、ある組織のリーダーになる魔物としてお婆さんの種族は有名になったとさ。
幼返りの水はこれにておしまい。
めでたし、めでたし。
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