守は、潮の引いた海を歩いていた。本土からまほら島の間はだいたい400mほどで、上陸にはそんなに苦労しなさそうだ。島は意外と大きく、木々が生い茂っていた。
「本当に何か出そうだな。」
そう呟きながらも、守は島へ向かっていた。落ちている海藻の切れ端、空き缶、文字がかすれて読めない木の板等、目に映るもの全てが不気味に思えた。
数分後、守は島の入口らしきところに到着した。見たところ、入口の先に社らしきものが見えた。周りには多数の鳥居があったが、奇妙なことに、どれも風化しておらず、美しい赤色のままだった。
「…何かホントに気味悪い場所だな。」
守は早々に帰りたくなった。しかし、あの神主の頼みごと、掲示板にまほら島に行くと書き込んだ事を思い出すと、引くに引けなかった。
「行くしかないか。」
そう言いながら社へ行こうとした時、守は何かに気が着いた。
「ん?これは、足跡?しかも新しいぞ。」
どうやら先客がいるようである。まさか今朝、駅前で話しかけられた不審者ではないよな。そう思いながら進んでいった。ここから社まで500mほどだろうか。社までの道には、何かよくわからない石像が多数あり、かなり不気味だった。その石像もよく見たところ、新道、仏教、キリスト教…どの宗教にも当てはまらない謎の石像だった。
「おい、こんな石像、日本にあったのか?てか何の像だこれ?」
その石像は女性の姿をしており、色は灰色。頭から角、背中からは羽を生やしており、守の知る限り、日本にこんな姿の石像やご神体は存在していない。そして台座の部分は、まるで男性の裸体のような姿をしていた。これだけでもおぞましいのだが、その石像のポーズもまたおかしいのである。まるで、台座となっている男性を、その石像が犯しているように見えるのである。しかも台座、石像の両方とも、蕩けた表情をしているのである。そして、海風にさらされて本来なら風化されるはずなのに、その様子が全く見られないのである。
「この石像を創ったやつは、相当趣味が悪いか、頭がパーなんだな。」
そういながら社へ進んでいくと、どこからか声が聞こえた気がした。
誰か頭パーだ!言ってみろ!
守は、背筋が凍りつき、そのまま社に向かって猛ダッシュした。
「ハァハァ…ちょっとちびっちゃったかも。」
守は、社の前で息を切らしていた。あの後、全力で走ったのだ。石像のある場所が、入口から100m先、そこから約400mを猛ダッシュで来たのだ。息を切らすのも無理はない。社に着いてから3分後、ようやく守の息は整ったようだ。
「えっと…この社は一体何だ?」
そう言いながら社を調べ始めた。社の入口には、小さな賽銭箱が置いてあり、それも鳥居や石像と同様、全く風化しておらず、新品同然だった。
「…実はこの島、誰かが手入れしているんじゃ…」
そう言いながら、賽銭箱をのぞいてみると、そんな考えは吹き飛んだ。賽銭箱の中には、新旧様々な貨幣があった。見慣れた10円玉から、昔の100円札、さらには金の小判、そして驚くことに、富本銭らしき物すら入っていたのである。
「フェイクじゃないってことはわかったが…社の中はどうなっている?」
そう言いながら守は、社の戸を開けた。罰があたりそうだったが、心霊スポット調査の為なら止むなし。そう自分に言い聞かせながら、社の中へと入って行った。社の中は意外に狭く、畳6畳ほどの広さだった。中は何にもなく、ただがらんとしていた。
「…本当に何もないな。」
守は、がっかりそうに言うと、社の中を隅々まで調べ始めた。数分後、守は隠し扉らしきものを見つけた。
「お、これは…もしかして隠し扉か?」
守は、そこの部分をけっ飛ばした。すると、いとも簡単に隠し扉は開いた。
「おお、この先に通路が。…って薄暗いな。」
通路は長さはだいたい200mほどで、上り階段となっている。通路の出口らしきところからは、夕日が見えていた。
通路の中は、かなり湿っぽい。歩くたびにびちゃびちゃと水の音がした。
「さて、この先に一体何があるか?」
まるで探検家のようになった気分で、守は進んでいった。
そして通路を出て、その先にあった道を少し進んで行った先には、守の想像をはるかに超えた物が待っていた。
「な…何だこれ!?」
そう、大穴が開いていたのだ。まるでまほら島の口と言わさんばかりの大穴が。
「こ、こんな島にこんなでっかい穴があったのか?」
守は驚愕した。それは当然のことである。こんな小さな島にこんな大穴があったのだから。
「まさか…ここがあの世の入口とか…ははっ、何て。」
驚愕する守。すると、守はいきなり後ろから声をかけられた。
「あ、あなたは今朝の…」
「ゲッ、あんた…あの時の…」
そう、あの駅前で
[3]
次へ
[7]
TOP [9]
目次[0]
投票 [*]
感想[#]
メール登録