前門

M県にあの世とこの世を結ぶ島があるらしい。

 そんな噂を聞いたのは、夏の暑い日が続くつい一週間前。もうお盆の時期に入る頃合いだった。そんな中、この物語の主人公である須田守は、趣味である心霊スポット巡りの為に掲示板で情報集めとしている最中、この話を聞いた。

「あの世とこの世を結ぶ島か…こんなのガセだろw」

守は、半信半疑でその情報を見ていた。彼は以前に何回も心霊スポットに出かけている。A県にあるIトンネル、T都にあるH城跡、エトセトラエトセトラ…しかし、生きて帰れないと言われた心霊スポットに行っても彼は、何の変わった様子もなく、生きて帰ってきている。その為、大学内でついたあだ名が「不死身の守」で、本人もそのあだ名は気にっていた。そうしたことから、この島についても、大したことは無いと思っているのだ。

「どれどれ、名前は?」

そう言いながら、パソコンのスクロールバーを下げていくと、その島の名前が載っていた。

まほら島

その昔、このあたりで信仰されていた教えに従い、多くの人が自殺していったと伝えられる島である。しかし、なぜ島の名前に天国、素晴らしいを意味する「まほら」が付いているのか。守は興味を持った。

「…ふーん。面白そうだな。」

さらに調べてみると、身の毛も立つような恐ろしい情報がわかった。何とも、ここの周辺に住んでいた人々は鬼を信仰しており、ある時、鬼を怒らせてしまった為、鬼が人々を地獄へ連れ去り、男は阿鼻地獄に送り込み、女永遠に死ぬことのない呪いをかけ、奴隷にさせたとされている。そして、そのうめき声が毎年お盆、冬至の季節になると島から発せられると言う。また、島に上陸した者は、鬼に連れ去られ、未来永劫、地獄の日々が続くと噂されていた。そして、今まで何人かがまほら島に上陸したが、誰一人帰って来ていないとのことである。

「…だいぶヤバいところだなおい。」

まほら島の写真を見ると守は、第六感、否、本能が行くなと伝えているかの様に思えた。一見すると、干潮時には対岸から歩いて行けるほどの島で、そんなに大きくなかった。しかしその島から、よくわからない何かおぞましい雰囲気が漂っていた。正直、言ったらもう二度と生きて帰れないと思ってしまった。それぐらい、まほら島の写真はおぞましい物であった。

「だけど、ここで行かなくちゃ不死身の守の名前が廃れるよな。それにこんな話、どんだけ盛ってるんだよって話w」

そう思うと守は、さっそくどうやって行くか計画を立てた。この島には、干潮時になれば歩いて行けそうだから、舟はいらないな。しかし万が一、潮が満ちてしまったらどうしようか。その時の為に守は、小さいテントと、ガスボンベ、食糧など、野外で最低でも一泊は出来る用意を持っていくことにした。上陸してすぐ、引き返すだけでは面白くない。どうせなら、まほら島でキャンプして自慢してやろうという魂胆であった。他にも懐中電灯、充電器、実況用のカメラ、通信機器…色々持っていくことにした。

「さらに今の時期はお盆と来たものだ。これってラッキーってヤツ?」

そんなのんきなことを言いながら、守は支度をしていた。

「これで生き残ったら、俺は本当に不死身だな。ヒャッホイ!」

否、これから彼に降りかかる災難のことを考えると、あまりにものんきすぎなのかもしれない。

その夜、守は奇妙な夢を見た。女性の夢である。だがその女性は、人間でなかった。肌の色は緑色、頭に角が2本生え、下半身は蜘蛛を思わせるような姿であった。守はそんな怪物に追いかけられる夢を見た。あたりは木々が生い茂り、薄暗く、不気味な雰囲気を醸し出していた。

「ハァハァ、畜生、何なんだよこれ!?」

そう呟きながら、守は全身全力で逃げる。しかし、その怪物との差はどんどん縮まっていく。

「おいおい、そんなんじゃ俺の相手は務まらないぜ。」

そんなことを言いながら、怪物は猛スピードで追いかけてくる。

「ハァハァ…何なんだよ…ってわっ!」

そう言うと守は、木の根っこに躓き、転んでしまった。そしてとうとう、その怪物に追いつかれてしまった。

「へへっ、大丈夫だ。ちゃんとおいしく頂いてやるからよ。」

そう言うと、怪物はニヤリと笑った。守は転んだまま立てず、逃げようにも逃げられなかった。

「く、来るなぁ、化け物ぉ…」

守は怯えた表情でその怪物を見て叫んだ。しかしその怪物は、薄ら笑いを浮かべながらさらに近づいてくる。まるで、怯えている子猫をいじめているかのような目だった。

「そんなビビるなって。…じゃあ、いただきまぁーす。」

そう言いながら、怪物は口を開け、こちらに顔を近づけた。

「ば、化け物、離せ…ぎゃああぁぁぁぁあああ!!!!」

守は絶叫しながら目を覚ました。時刻は午前5時を回ったところであ
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