その夜、ドレは自分の居城の寝室で悩んでいた。ここは、サラニアから東に少し離れた場所にある、ドレの居城のイェルッポ城。この城には明日、ジルが出陣するという事で、5000の兵が駐屯していた。
「本当に、兄上を止められないものか…」
ドレはベットの上で、頭を抱えていた。このまま戦いを仕掛けても、負けるのは必須。しかし、ジルを止めることはできない。そんな自分に、ドレは無力感を抱いていた。そんな感情を抱いているドレの目の前に、いきなり黒い影が落ちて来た。
「何者!」
枕元に置いてあった短剣を持ち、構える。すると、その影は立ち上がり、ドレの方に向かってきた。シェルエットを見る限り、どうやら女性らしい。
「…あなたが、ルイの次男のドレね?」
その女性は、手に短い刀を持ってドレに話しかける。容姿から察するに、クノイチと呼ばれる暗殺を主にこなす魔物であった。
「…そうだが、ここに何の用だ?そして何者だ?」
「質問は、1個ずつして頂戴。私の名は文。セルナ国の王女、マリア様からの命でこちらに参った。」
ドレは驚いた。ガルリアと手を組み、父を倒したセルナから、このような刺客が来るとは思ってもいなかったのである。
「…して目的は?」
「私達と協力させる為に来た…と言えばいいかしら。」
「それはどういう意味だ?」
ドレは、文の言葉にいまいちピンとこなかった。この国を制圧するなら、武闘派のジルを襲えばいいはずである。
「意味はこれから教えてあげる…」
そう言うと、文はドレをベットの上に押し倒した。
「なっ、何をする!?」
困惑するドレ。それをよそに、文はドレの上着をどんどん脱がしていく。
「…今から私が気持ち良くさせてあげる
#9829;」
そう言うと、文はドレの息子を撫で始めた。…そしてしばらくすると、二人のいるベットから、ビチャビチャと言う液体の音がし始めた。
同じ頃、イェルッポ城から離れたバレル城では、ヒサヒデとセルナの首都ピューノープルから来たマリアが会談を行っていた。
「ヒサヒデ殿、先ほどルイの次男にクノイチを送ったそうですが、これはどういう事なの?」
マリアが、マリアに質問する。マリアは、ヒサヒデの考えがどうも理解できていない様である。
「おいおい、お前さんの様なリリムが、俺の考えを読め無いのか?まだボケるのには早いぜ。」
ヒサヒデが、マリアをからかうように話す。マリアは少しムッとした表情を見せた。
「だってフランシャーナを落とすのなら、次男ではなく長男を引き込むべきでしょう。」
「チッチッチ…フランシャーナの事情を知らない様だな。実はあの国、長男と次男同士で派閥に分かれていてな…兄弟同士で争わせて、その隙に国を奪い取ろうって魂胆だ。」
「それは私でもわかるわ。」
「だけどあそこの長男は、主神の教えに入り浸っている他、野心が強い。こちらに降伏しても裏切り、国内に教団の軍隊を入れてくるに違いないだろう。」
「あ…」
ヒサヒデの話に、マリアはあっけにとられていた。
「その一方で、次男には野心が全く無い。あいつは、民の為なら国はどうだっていいという男だ。それに、次男の方は若くして教団軍の一部隊を指揮している。それも、屈強な騎士で構成されている部隊だ。これを機に次男を手なずけておけば、その部隊は機能しなくなるってわけだ。つまり、フランシャーナを手に入れるのと同時に、教団軍の一部隊をいただく…一石二鳥と言うやつだ。」
ヒサヒデが、どんなもんだと言わんばかりに話す。それを、マリアが感心して聞いていた。
「なるほどね。で、その教団軍はどうやってこちら側に取り組むのかしら?」
「それはな…あいつら、主神がどうのこうのと言うより、次男を慕っているから問題は無い。」
「主神の教えって、安いものね。」
「ああ、本当だな。」
そう言うと、二人は爆笑した。普通なら、主神の教えを持って忠義を尽くすのが教団軍であるのに、そうではなく、一人の人間で左右されるのだから、全く持って面白おかしい。二人は、そう思っていた。
同じ頃、バレル城の中庭ではナオシゲと、切り込み隊長のナオトラが酒を飲み交わしていた。セルナ軍本隊と、ガルリア軍と合流した際、二人は意気投合。そして、現在に至るという訳である。
「ふーっ、こうして人間達と酒を飲み交わすってのはいいなぁ。」
ナオトラが、リラックスした表情でナオシゲに話しかける。ナオシゲも、心が和らいだのか、いつもの神経質な表情ではなく、にこやかな表情で酒を飲んでいた。
「そうですな。私も、今まで魔物と言うと抵抗があったのですが、今日の戦いで彼らに親しみがわきました。」
「そうか?そりゃ良かった。…そう言えばナオシゲ。お前さんって、確かジパング出身だったよな。
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