ここは、ナガソ川の川岸にある大石橋があった場所。ついさっき、ナオシゲ達が制圧し、大石橋は跡形もなく破壊された。そして川岸には、大筒がズラリと並んでいる。数は30台ほどだろうか。大筒の周りには、せっせと弾を作るケプリ達の姿があった。ケプリ達の後ろには、弾となる魔力の球が山になっていた。

「よく、これだけの数が配備出来たものだ。」

ナオシゲが、感心して山になった魔力の球を見上げる。ナオシゲは好奇心が湧いたのか、弾の一つを触ろうとした。すると、傍にいたサイハにピシャリと手を叩かれ、止められた。

「ツッ!」

「あら、扱いには気を付けることね。これは普通の人間が触っただけで、簡単に魔力に侵され、インキュバスになってしまうわ。」

サイハがナオシゲを怖がらせるように注意する。その話し方は、さっきタダトモと話していた人物とは別人かの様だった。ナオシゲは何とも言えない恐怖を感じ、素直に触るのをやめた。

「そうか…申し訳なかった。」

ナオシゲが申し訳なさそうに謝る。

「あら、そんなに畏まらなくてもいいのよ。」

サイハが優しく話す。なるほど、ダークエルフとは、こうやって飴と鞭を使ってタダトモ殿を調教していくのだな。ナオシゲは内心でそう思うと、他のケプリ達の様子を見に行った。そこに、ナオシゲの元に偵察隊が帰って来た。

「報告します。対岸にいるフランシャーナ軍、間もなくこちらに向かってくるとのことです。」

「してその数は?」

「はっ、約2万ほどです。また、その敗残兵をセルナ軍が追跡しているとのことです。」

ナオシゲは、まるで勝ちが決まったかのようににやり笑った。そしてナオシゲは、部隊に命令し始めた。

「良いか皆の者、こちらに敗走してくるフランシャーナ軍に今から砲撃を始める。砲撃しても奴らは死なないが、インキュバスとなり、戦闘不能になる。まず、部隊にいるケプリは二人一組になり、それぞれ大筒の弾込め、弾の運搬に分かれよ。余ったケプリ達は、弾作りを続けよ。それ以外の部隊は、鉄砲、石弓でこちらに向かってくる敵を迎撃せよ。それでは各自、持ち場に着け!」

そう言うと、魔物、ガルリア兵達は戦の準備をし始めた。その手際の良さは、さすがヒサヒデの家臣とも言うべきか。皆が無駄なく動いていく。

「これが、ヒサヒデの家臣達…なるほど、彼が凄い理由がわかったわ。」

その様子を、サイハが感心して見ていた。

 しばらくすると、対岸から敗走してきたフランシャーナの軍がやって来た。こちらから見る限り、大石橋が落とされ、退路を断たれた事により混乱しているようだ。ナオシゲは、対岸にある程度のフランシャーナ軍が集まったところで、砲撃の合図をした。

「よし、頃合いだ、撃て!!」

そう言うと、大筒から次々とケプリ達が作った魔力の球が放たれた。弾は、新月の闇夜の中を放射状に飛んで行き、フランシャーナ軍がいる対岸に着弾すると破裂し、魔力が飛び散った。

「ひいぃぃぃい…ま、魔力だ。魔力の塊が落ちて来たぞ―!!」

「うわぁぁあ、俺の隊長がインキュバスになったぁー!!」

「こ、こうなりゃ川を泳ぐしかねぇ!」

「やめろ、川には魔物どもが…ぐわぁああ!!」

対岸にいたフランシャーナ軍は混乱した。味方であるガルリアに裏切られたという事より、ただ砲撃に恐怖に混乱している様だった。さらに、主神の教えを徹底的に叩き込まれた彼らにとって、インキュバス化するという恐ろしいことが重なった為、恐怖は増幅される事になった。そこに、後方から追撃してきていたセルナ軍が追い付き、砲撃によりインキュバスと化した兵士をさらい始めた。

「後ろから魔物どもが来たぞー!」

「川へ逃げ込め―!」

そう言うと兵士達は、川へと逃げ込んだ。しかし、川の中にもサハギン等の魔物が待ち構えており、川の中へ逃げ込んだ兵士も魔物達に捕まってしまった。進むも地獄、引くも地獄。フランシャーナ軍は、完全に追い詰められてしまっていた。結局、残っていた部隊も降伏し、戦いが始まって僅か1時間で決着が付いてしまった。

「我々の勝利だ!」

ナオシゲが、大きな声で勝利を宣言する。

「「「「「エイ、エイ、オー!!」」」」

戦った兵士達が勝鬨を上げる。そこには人間だけでなく、ケプリ、ゴブリン、オーガ等様々な魔物の姿もあった。こうして、ガルリアとセルナによるフランシャーナ北部制圧作戦は、ガルリア、セルナ連合軍の大勝利で幕閉じたのである。




 翌朝。ここは、フランシャーナ国南部にある首都サラニア。そこの城内は、朝から慌ただしい雰囲気が漂っていた。そして、城内の一室で長机に座る若い青年が左右に二人。そして、大臣、家臣約20名ほどが部屋の中にいた。

「さて、集まってもらったのはこの国の一大事が起きたからだ。…ゴッドア
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