ネオ砦の戦いが終わってから約3時間後、ヒサヒデ達はバレル城に行った伝令の帰りを待っていた。時刻は午後9時を過ぎたところ。今日は新月で、松明の周り以外は漆黒の闇に覆われていた。

「まだかにゃー、伝令。」

ヒサヒデが退屈そうにして、刀をいじくっている。そしてヒサヒデの右隣りには、黙って正面を向いているナオシゲ、左隣にはサイハに絡まれ、げっそりした表情を見せるタダトモがいた。そんな中、暇そうにしていたヒサヒデが、何か目ぼしい物を見つけたようだ。

「おいサイハ。あの魔物だが、俺は初めて見る。ありゃなんだ?」

身長はちょっと小さめ。褐色の肌。手足は虫の脚になっており、羽も付いている。だが、デビルバグとは違い、金色をしてる。

「あれですか?あれはケプリと言う魔物です。魔力を球状化出来る能力を持ってます。」

サイハが、タダトモに後ろから抱きつきながら答える。

「球状って、大きさ自由?」

「うーん、多分自由ですわ。」

「耐久性はどんなもん?」

「まぁ、そんなすぐに壊れはしないわ。」

「そうか…ニシシ、いい事思いついちゃったけど…今回はいいや。」

不気味な笑いを見せるヒサヒデ。ヒサヒデの笑いは、周りが暗いという事もあってか、かなり不気味に映っていた。それを、サイハが不審そうな眼をしてみてる。そうしている内に、暗闇から馬に乗った兵士がこっちに来た。どうやら、あの伝令のようだ。

「申し上げます。バレル城に先ほどの戦いの結果を報告いたしました。また、あの例の物も渡し、現在宴を行っているようです。」

「よしわかった。…この戦、勝ったぞ!!」

ヒサヒデが兵士たちに向かって、大声で叫ぶ。

「良いか皆の者。この戦いは、速さを重きに戦え。まず俺とモリチカの部隊は、バレル城に奇襲をしかける。そしてナオシゲ、タダトモの部隊はナガソ川にかかる大石橋を制圧し、橋を破壊せよ。ブックネスト城は、イビガラ川とナガソ川に挟まれた場所にある。そこを抑えれば、4万5千の軍勢は身動きが取れない。そしてサダミツはサイハと共に、一旦ガルリア城に戻り、ありったけの大筒を大石橋に運び込め。それとサイハ、今部隊にはケプリは何人いる!?」

「え!?だ、だいたい100人ぐらいだけど…」

サイハは、困惑した表情を見せている。

「上出来だ。そのケプリ達に伝えてくれ。大石橋に着いたら、ありったけの魔力を球状にせよ。但し、丸める大きさはこの足元に転がっている大筒の弾程度でいいとな。」

そう言うと、ヒサヒデは地面に転がっていた大筒の弾を蹴飛ばした。大きさは、今で言う砲丸投げの球より少し大きいぐらいだろうか。

「な、何に…あっ、もしかして大筒でケプリ達が丸めた魔力の球を…」

「そゆこと。そうすれば、敵を傷つけずに捕虜に出来るという訳。しかも、速攻でインキュバスになるから、あんさん達仲間の婿になるのにも抵抗がないって訳。」

「…あんたって、馬鹿なの?天才なの?どっちなの?」

サイハが、呆れた表情でヒサヒデに話す。しかし、その声には若干の尊敬の念が込められていた。
 
「両方!」

その質問に対し、ヒサヒデは力強く答える。今まで、馬鹿な態度を取って来たヒサヒデはそこにいない。いるのは、一国の長として、一軍隊の長として、堂々と指揮するヒサヒデの姿だけであった。

「よし、では全員、出陣じゃ!!」

そう言うと全員、ヒサヒデをはじめとした将の指示に従い、移動し始めた。ヒサヒデの賽が今、投げられた。



 ここは、ガルリアとバレル城を結ぶ道路。ヒサヒデ達は、バレル城まであと数十qのところまで来ていた。そこでヒサヒデとモリチカは、全力で馬を走らせていた。

「しかし殿、なぜあの積み荷をルイに渡したのです?このまま奇襲すればよいものを…」

モリチカが、不思議な顔をしてヒサヒデに問う。するとヒサヒデは、待ってましたと言わんばかりに質問に答え始めた。

「あの積み荷を送ったのには、意味があってな。奴の親衛隊を潰す為に送ったんだ。」

「えっ、それはどういう事で…」

「よく考えてみろ。ルイの親衛隊は、全員穢れの無い童貞の男子から構成されているんだ。つまり、下の方はかなり溜まっているという訳だ。そこに、タケリダケや虜の果実を食わせたら…後はわかるな。姦通地獄の完成だ。奴ら親衛隊は、ロクに戦う事は出来ない。」

「何と・・殿はそんなことまで…背筋が凍りそうでござる!」

そう言うとモリチカは黙りこみ、ただバレル城に早く着くことだけを考えた。



 ここは、バレル城。フランシャーナ国王ルイが陣取る城だ。城は小さく、防衛としての機能はそんなに無いという感じだ。

「へへへ、お前さん、可愛いじゃねーか。」

「いやあぁぁああ、やめてぇー!!」

ルイの親衛隊が、侍女たちを強姦して
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