ここは、カルリアから北に約200qほど離れた場所にあるセルナ国の首都、ピューノープル。そこの城では、セルナ国女王マリアとその部下たちが、真剣な顔付きで会議をしていた。
「さて、私が送り込んだ暗殺部隊が、こんな手紙を持ち帰った。」
マリアがその手紙を取り出す。そう、ヒサヒデがあのクノイチに渡した手紙だ。
「内容は、こうだ。『貴殿らが、カルリアの貿易港を狙って、このヒサヒデを暗殺する計画は、すでに露呈している。しかし、この件についてはお咎めなしと言う事にする。ただ、両国の利益の事も考えると、我々二カ国が手を結ぶのは必定である。そこで、頼みがある。貴国の軍隊を、フランシャーナ国の国境である、イビガラ川に駐屯させてほしい。数は多ければ多いほど良い。そうすれば、我々カルリアがフランシャーナの北半分を制圧する事が出来る。そしてその暁には、貴国と同盟を結び、貿易の自由、フランシャーナ北部の半分をカルリア、セルナで分けたいと考える。この話は、悪い話ではないはずである。そしてこの話を、3日以内にまとめ、その返答をもらいたい。ではよろしくお願いします。 ヒサヒデ』…との事だ。…皆の者、これをどう思う?」
マリアが手紙を読み上げると、辺りは騒然とした。
「あのガルリアが?馬鹿な。」
「あの国にそんな事が出来るのかしら?」
「どうせこけ落としだろう。」
会議室が騒然とする。すると、あるデュラハンが声を上げた。彼女は、この国の軍の総司令官であるアメトである。
「王女様、私はこの話に賛成です。」
「なぜだ、アメト?」
「はい。もし、ヒサヒデの言う通りにフランシャーナの北半分を手に入れたら、我が国の資源はさらに豊かになります。特にフランシャーナ北部には、良質な鉄鉱石が採掘出来る為、かなり有利にになると思われます。また、もし失敗したとしても、ガルリアの貿易港、及びガルリア全体は確保出来る為、どちらに転んでも有利になると思われます。」
「そうか。なるほど…」
マリアが、顎に手をやり考え込む。すると、アメトと反対側に座っていたダークエルフが反論してきた。彼女は、軍の特殊部隊長であるサイハだ。
「王女様、私は反対ですわ。もしここでフランシャーナと戦争をしたら、隣からローサンが攻め込んでくるのは必須ですわ。なのでここは、ガルリアの出方を見ましょう。」
「サイハ、ローサンの事を心配する必要はないぜ。」
アメトの隣に座っているアカオニが答えた。彼女は前線部隊を率いる、切り込み隊長のナオトラであった。
「ローサンは今、国内で勃発している一揆に手を焼いてる。だから、ローサンが攻め込むってのはまずないと思うぜ。だから、俺はヒサヒデの話に乗ってもいいと思うぜ。」
「でも、あのヒサヒデと言う男、私は信用なりませんわ。」
サイハが反論する。
「だが、そろそろ領土を広げないと、この国の人口がすぐにギュウギュウになるぜ。」
「…そうね、ナオトラ。サイハの意見もわかるけど、私たちの国は領土と資源が不足してるの。だから、ここはヒサヒデの話に乗るとしましょう。」
マリアが、落ち着いた口調で答える。
「でも王女様、相手はあのヒサヒデです。サイハよりお腹真っ黒な事で有名な方です。くれぐれも、ご用心ください。」
マリアの隣に座っていたヴァンパイアが、マリアに忠告する。彼女は、この国で最も力のある貴族のクレアである。
「大丈夫。わかってる。…それより、サイハがお前を鬼の様な目で見てるわよ。」
そこには、ウシオニも裸で逃げだすような形相をしたサイハの姿が…
「あら、クレア殿、言ってくれましたわね?今夜、あなたの屋敷にダンピールをけしかけますわよ?それでも良くて?」
「…ごめんなさい。」
こうして、ピューノープルの夜は更けて行く。
翌日、ガルリアの城ではヒサヒデが、フランシャーナ国の王、ルイを招き、城のバルコニーで茶会を開いていた。
「いやはや、ヒサヒデ殿は立派な城と、立派な家臣をお持ちだ。これも、主神のお導きですな。」
「いやぁ、全く、その通りですな。」
ヒサヒデが、ルイの話に誠実そうに答える。
「…いつもの殿の話し方とは思えないな。」
「…そうだな。」
後ろで、ヒサヒデの家臣二人がひそひそ声で話している。時刻は、12時を過ぎたころ。天気は快晴で、バルコニーからは海が見える。その光景は、風光明媚と呼ぶにふさわしかった。
「時にルイ殿。最近、フランシャーナはどうですか?」
「ああ、ヒサヒデ殿。実は、近頃イビガラ川の北にある教団の元聖地、ゴッドアを奪還しようと考えておりましてな。あの場所は、わしの祖父の代にセルナに奪われてな。これ以上、魔物どもに調子付かせない為、祖父の為、そして、教団の為にも、是非とも奪還したい場所なのじゃ
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