「ひ、ひぃ。た、助けてくれぇ…」
燃え盛る城をバックに、その肥満体の男は命を乞うていた。この男は、反魔物領の強国として名を馳せている、ローサン帝国の属州である、カルリアを管轄してる人物だ。彼は、カルリアを治めてはいるものの、暴君として名高い人物であった。それが今、目の前に立っているジパングから来た家臣によって、追い詰められていた。
「え?助ける?誰が誰を?」
男の目線には刀を持ち、薄笑いを浮かべた男ががいた。男は痩せ型だが、筋肉質で、30代前半ぐらいだろうか。彼こそが、この謀反の張本人であった。
「わ、わしに決まっているではないかヒサヒデ。な?ダメか?」
「だ、あ、め。」
そう言うと、ヒサヒデと呼ばれる男は、肥満体の男の胸を刀で刺した。肥満体の男は、断末魔を上げ、しばらくは体をヒクヒクさせていたが、しばらくすると動かなくなった。
「…まぁ、安心して死ねや。これから、お前の支配していたちんけな属州は、俺のもんになる。だがな、こんな属州よりもっとでかい国を創ってやるわ。このヒサヒデ・アマゴがなぁ!ハハハハハ!!」
ヒサヒデは、大いに笑った。これから頭の中にある彼の計画、それが実行できると思うと、ヒサヒデは笑いが止まらなかった。
五年後…
「…夢か。あの建国した時の夢をまだ見るか。」
玉座に座り、転寝をしていたヒサヒデが呟いた。あの後、ヒサヒデはカルリア拠点に独立ていた。カルリアは、元々貿易の拠点として栄えていた為、物資には困らなかった。しかし西にはローサン帝国が、カルリアを奪還せんと虎視眈々と睨みを利かせていた。そこで、敵国であるローサン帝国と対抗するため、ローサン帝国を敵視する、反魔物国家であるフランシャーナ国と同盟を結び、何とか体制を保っていた。しかし、頭の痛い事に北からは、破竹の勢いで進撃してくる魔物国家、セルナ国が迫っていた。つまりヒサヒデの周りには、西のローサン、東のフランシャーナ、北のセルナと言う3つの大国に囲まれているという状況に置かれていた。しかし、そんな中でもヒサヒデは「大丈夫だ、問題ない。」と、余裕綽々の表情を見せていた。そんな中、一人の兵士が慌ただしく、玉座の間に入ってきた。
「申し上げます。ただいま、ローサン、フランシャーナ、セルナの三国を偵察していました者たちが帰ってきました。」
「おーす、御苦労!!骨折り!!では、いつものとこへ来るように伝えてくれ。」
「はっ。」
そう言うと、兵士は下がっていった。そしてヒサヒデは、いそいそとある場所へと向かっていった。
ここは、城の地下室。そこには、ただランプの光だけが周りを照らしていた。そして、ヒサヒデの周りには、同じくジパングから来た家臣2人、3カ国を偵察してきた部下が6人が、そこにいた。
「…皆の者、御苦労。…それで、どうだった?まず、ローサンはどうだ?」
「はっ、現在ローサンは、国の西部で発生している農民一揆に悩まされています。その為、東部にはそう多くの部隊は配備されていない模様です。」
「で、その数は?」
「はい、西側に約5万5千の兵が配備されているのに対し、東は約2万の兵しかいないようです。」
「了解、わかった。…そいで、フランシャーナははどうだ?」
「はっ、相変わらず、平和ボケしています。セルナが目と鼻の先に迫っているのにもかかわらず、あそこの王は、主神の加護があるから必ず勝てると、ほざいています。」
「はいはい。…最後、セルナはどうだ?」
「はっ、セルナはどうやら、近くここを自国の領土に組み込もうとするという情報が入りました。情報では、ヒサヒデ様を消すべく、暗殺部隊を送り込んだという情報もあります。」
「…暗殺部隊が、どんな者かは見当ついた。よし。オ―ケ―。」
そう言うとヒサヒデは、にこやかな笑顔で部下に笑いかけた。そしてその後、ヒサヒデは腕を組み、ニヤけた表情でしゃべり始めた。
「さて、今日ここに来てもらったのは他でもない。…近日中、フランシャーナを潰す。」
そこにいた家臣一同が驚いた。無理もない。こんな弱小国家が、強国であるフランシャーナを潰すと言っているのである。
「殿、それはどういった意味で?」
ヒサヒデの右側に座っていた男が問いかける。彼の名前は、ナオシゲ・タケナカ。ヒサヒデが謀反を起こした時からの家臣である。
「まんまよ。フランシャーナを、俺達の国に取り込むと言ってるんだ。」
「殿、それはあまりにも無茶な話ではないですか。」
「ナオシゲ、俺は血迷っても正面から戦争ふっかけるつもりはないて。ただちょっと、セルナに動いてもらうだけだ。」
「なっ、セルナに…ですか!?」
ナオシゲは驚いた様子でヒサヒデを見ている。
「まぁな。ただ今は、ちょっと手の内を明かせん
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